約 1,861,610 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1705.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある上琴の未来物語 告白編 あの告白のあったクリスマスから1ヶ月が経った。 正月は上条が「補習だぁ~」と言い一緒に過ごせなかった。 それ以外にもバタバタしていたのでなかなか一緒に過ごすことが出来なかった。 そして今日はやっと暇が出来たので2人でデートへ出掛けることにした。 今はある学区の遊園地に来ている。 「はぁ~不幸だわ。なんでなのよ・・・。入場待ち1時間ってなんなのよ。」 「仕方ないだろう。今日は日曜日なんだから。もうちょっとで順番回ってくるから。」 この時の時間は10時。 すでに2人は1時間も並んで待っていた。 その待ってる間もずっと御坂は、上条の腕を放すことは無かった。 「もうすぐね、当麻。」 「ああ、そうだな。」 「こんな風に待っているのもよかったわよ。だって当麻と一緒に居られるんだもん。」 「なんだよ急にコロっと態度変えあがって。まあ俺も楽しかったぞ。美琴。」 「ふ、ふにゃ~」 「おい、漏電はやめてくれよ。」 「だって~。」 と舌を出して笑っている。 「今日はいっぱい楽しもうね。当麻。」 「ああ。初デートだもんな、美琴。」 「ねぇ、キスしてよん。」 「ちょっ、お前こんなとこな人目があるところで、もし知ってる人でも居たらどうすんだよ。」 「いいじゃない、1回ぐらい。そんなに私とキスするのが嫌なの?」 「そんなわけないだろう。でも、ほら・・・人いっぱいいるしさ。」 「いいじゃん、私達の愛を見せ付けてやりましょうよ。」 なんなんだこのバカップルと周りの痛い視線も気にせず公然とイチャツク2人。 いつしか2人の周辺から人が居なくなっていた。 「ようやく入場出来たわね。」 「はぁ、結構疲れた。」 「なに言ってるの、今日は1日中遊ぶわよ。ねぇ当麻、最初は何に乗りたい?」 「あぁ、何でもいいぞ。美琴一緒に居れば何でも楽しよ。」 「本当に、本気で思ってるの?」 「勿論ですとも。この上条さんが好きな女の子の前で嘘はつかないですことよ。」 「ふにゃ~」 「おい、こんなところでふにゃ~ってなんなよ。」 「なっ、何でもいいじゃない。」 「はいはい、可愛いよ美琴たん。」 「たん言うな。」 「じゃあ最初にメリーゴーランドにでも乗りますか?」 「当麻って意外とメルヘンなのね・・・。違うわよ、最初はジェットコースターに決まってるでしょ。はいはい行くわよ。」 「俺の意見は無視ですか、そして俺ジェットコースター苦手・・・」 上条が不吉な予感ほさせながら御坂がグイグイ引っ張っていく。 ・・・ ジェットコースターの入り口に着いた2人。 このコースターは、超高速が出ると有名だった。 「うぇ、まじで。これ乗ったら絶対に上条さん死んじゃう・・・。」 「当麻意外とこういうのダメなのね。大丈夫よ『男は度胸』でしょ。さぁ乗った乗った。」 ☆ ジェットコースターを乗り終えた2人はベンチに腰を下ろしていた。 「確かにちょっと怖かったけど面白かった~。」 「・・・・・・」ウップ 「久しぶりに乗ったけど絶叫してスッキリした。」 「・・・・・・」ウップ 「お~い、当麻どうした・・・ってちょっと当麻!」 ジェットコースターが苦手な上条は真っ青な顔をしていた。 「ふ、不幸だ、だから上条さんは先に言ったじゃないですか。」ウップ 「本当に大丈夫?」 「だ、大丈夫じゃ・・・ちょ、ちょっとトイレに。」ピューン (えぇ、当麻あんなにジェットコースター苦手だったの・・・) (数分後) 「いや~、まったくご心配お掛けしました。」 「本当よ、ビックリしたんだから。」 「ごめんごめん。でももうお願いだからジェットコースターは勘弁を、御坂さん。」 「わかったわよ。まさかこんなに苦手だとは思わなかったから。もう少し休憩する?」 「いいや大丈夫だ。よし、次は何処行くか?」 「そうね・・・、いっぱいあって迷うわね。」 「じゃあさ、お化け屋敷行かない?」 と上条は不気味な笑みを浮かべる。 「い、いいじゃないの。当麻ビックリしすぎて失神したりするんじゃないわよ。」 と手を取りグイグイ引っ張って行く。 しかし・・・ (どうしよう・・・、私一番お化け屋敷苦手なのよね・・・。) ―――――――――――――――――――――――――――――――― お化け屋敷の前に着いた2人。しかし2人は唖然としていた。 「ここのお化け屋敷、広すぎないか・・・。」 「『所要時間最高120分』ですって、『最高』ってなによ。」 そう、このお化け屋敷は世界一広いお化け屋敷だった。 屋敷内ではさまざまなルートがあり扉の選択によって大きくルートが変わる構造になっていた。 一番最短ルートを選べば30分で出て来れるが、最長ルートを選んでしまうと2時間掛かってしまうと言う何とも鬼畜な構造だ。 「俺もちょっと怖くなってきた。不幸体質な上条さんは『120分ルート』にはまるのが見え見えじゃないですか。」 「ななな何言ってるの、さぁ行くわよ。」 「美琴大丈夫か?、声震えてるぞ。」 「だ、大丈夫よ。」 と2人は意を決して中へ入っていった。 「本当の廃屋に入ったみたいな感じがするな・・・。」 「・・・・・・。」 「大丈夫か美琴?」 「・・・・・・。」 「お~い。」 「手・・・握っててよ。当麻。」 「ああ、手を握るぐらいならお安い御用ですのことよ。」 と上条は手を差し出す。 握った手はとても震えていた。 ☆ 「結局120分ルートだった。流石にこれはきつすぎるだろう。」 「・・・怖かった、怖かったよ。」 御坂は泣きながら上条の胸へ飛び込んできた。 「大丈夫、ていうかここお化け屋敷だぞ。本当のお化けなんて出てこないと思うぞ。」 「それども怖かった。不安だった。」 と上条は泣いている御坂の頭をそっと撫でてやる。 「ハハハ、美琴はいつもは気でかいけどこういう時はめちゃ泣き虫だよな。」 「うるさいわね。120分もあの中いればこうなるわよ。」 「はいはい。俺が居るから大丈夫ですよ。」 とさらに上条は美琴のことを強く抱きしめた。 その時御坂のお腹が鳴った。 御坂は頬を赤らめた。 「そりゃあんだけギャーギャやりゃお腹減るよな。よしお昼にしようか。」 「そ、そうね。さっきよさげなレストランあったから行きましょう。」 しかしそのレストランで散々弄られる羽目になるとはこの時は知る由もなかった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 2人は窓際の席に案内された。 「流石に日曜日だから混んでるわね。」 「でもすぐに座れたからよかったんじゃないか?」 「そうね。本当にお腹すいた。」 2人はメニューを指しながら喋っていた。 「私は、このハンバーグセットチリトマトソース添えで。」 「俺は、シーフードドリアセットで。」 「当麻、女子みたいね。」 「いいじゃないの。上条さんだってたまにはこういうの食べてみたいですことよ。」 暫くすると料理が運ばれてきた。 「うわ~、おいしそ。」 「超久しぶりだわドリアなんて。」 と料理の感想を言い合っている。 「おいしい、ちょっと辛いけど。」 「熱っつ、俺猫舌だからな。」 「当麻、やっぱ女子っぽい。」 「そうでせうか。」 「ねぇ当麻、そのドリアちょっと頂戴。」 「ああ、いいぞ。」 と上条は皿を差し出す。しかし 「そうじゃないでしょ、ほら。」 と御坂は顔を前に出す。 「はあ、なんだ急に?」 「本当に当麻ってだめね。こうしたら『あ~ん』に決まってるでしょ。言わせんじゃないわよ。」 と御坂は顔を真っ赤にさせる。 「ああ悪かったよ。はい、あ~ん。」 「あ~ん・・・、おいしいわね、ていうか全然熱くないじゃない。」 「そうか、上条さん的には結構熱いぞ。」 「じゃあ私も当麻に。はい、あ~ん。」 「あ~ん、って辛!!結構辛くないですか?」 「えぇ~、こんなんで辛いとか、当麻はだらしないわね。」 とこのバカップル2人は他人の目も気にせずやっている。 すると不意に 「あれ御坂さんじゃないですか?」 「ふぇ、ああ初春さんに、佐天さんに、く黒子ぉ!?。」 「お姉さまビックリしすぎですの・・・ってあ~~~~~」 「「どうしたんですか」」 と初春と佐天が同時に驚く。 「おおおおおお姉さまなぜその殿方とご一緒で・・・」 「ああ、だってデート中だもん。当たり前でしょ。」 と御坂は平然とした顔で言い放つ。 「「「で、デ~ト」」」 「そうよ、あたし達付き合ってるんだから。ねぇ当麻ぁ。」 「そ、そうですね。」 と色気付きながら上条の名前をよんだもんだからちょっとドキマギしながら上条は答えた。 「ふぇ~、御坂さん大人ですね。」 「いつの間に彼氏作ってたんですか、御坂さん?」 「お姉さまが・・・私のお姉さまが。」 と3人はそれぞれの感想を言いながら自分達が座っていた席に腰を下ろす。 「ちょっ、なんであなた達ここに座るのよ?」 「勿論御坂さんから色々聞くためですよ。あ~私初春飾利と言います。」 「私は佐天涙子です。あ、こら初春、メモ用意するな。」 「わたくしは白井黒子。お姉さまのルームメートですの。私も意を決して聞くですの。」 「俺は上条当麻です。」 と上条はちょっと困ったような顔をして頭を掻いている。 (はぁ、折角の当麻とのデートだったのに・・・。) 「でも話を聞く前に注文していいですか?」 「へ?、ああいいわよ。」 「私はこの『宇治抹茶パフェ』で。初春はまたいっぱい頼むの?」 「そうですね。じゃ、『ビッグサンダージャンボマウンテンパフェ』で。」 「私は、ドリンクバーだけでいいですの。やけ飲みしてやるですの。」 と注文を終えまた話は御坂と上条の関係についての話題に戻る。 「それで、2人はいつから付き合ってるんですか?」 「1ヵ月前からよ。」 「もしかしてクリスマス?」 と佐天は身を乗り出して聞いてくる。 「そ、そうよ。当麻から告白してきたの。」 「そうえばイブの日やけにお姉さまが変でしたの。まさか告白があっただんて・・・。」 「上条さんはなんで御坂さんのことが好きになったんですか?」 「お俺?・・・そうだな美琴はそのへんの女の子より、より女の子らしいと思うんだよ。心やさしいしな。」 と上条は御坂の頭を撫でる。 「お~流石。御坂さんにベタ惚れなんですね。」 と佐天が身を乗り出して聞いてくる。 それに上条は頬を赤くしながら、 「そうだな。気づいた時には好きだったかな。」 「ふぇ~」 「御坂さんは上条さんの何処が好きですか。」 「わ、私?そうね、当麻はとにかくかっこよくて、頼りになって、心やさしいところね。」 御坂も頬を真っ赤にして答える。 「とにかく2人ともラブラブなんですね。」 「ゴン、ゴン、ゴン」 「白井さん顔ドラムやめてください。」 「ひぇ~~、私のお姉さまはもうすっかり身も心もその類人猿の虜ですのね。」 「え~!、御坂さん身もですか?」 「え、ないない。まだあるわけないじゃない。」 「そうですよね、まだですよね。」 「それでいつの予定なんですか?」 「こら初春、変な事聞くな。でも私もちょっと興味が・・・。」 「あ~、私のお姉さまが・・・・・・。」 「し、白井さん・・・。あ~あ倒れちゃったよ。」 「大丈夫よ。そのうち勝手に起き上がるわよ。黒子なら。」 「お、おい。美琴本当に大丈夫か?」 「平気平気。ほっといて。」 「それでそれで・・・―――」 ―――1時間後・・・ 「御坂さん、今日はどうもありがとうございました。」 「いえいえ、気をつけて帰ってね。ほら黒子も早く帰りなさい。」 「わかりましたですの。とにかく学生なので節度を持ったお付き合いをお願いしますの。」 「大丈夫よ。中学生が高校生と一線を越えちゃったなんてこと起きないから。」 「本当ですの、とにかくお願いしますわよ。」 「わかった、わかった。じゃあね、初春さん、佐天さん。」 「「「さよなら~(ですの)」」」 2人はレストランから出て園内を歩いていた。 しかし根堀葉堀聞かれた2人はげっそりしていた。 「当麻、大丈夫だった。」 「ああ、大丈夫だ。しかしあの3人はなんであんなに聞きたがるんだ?・・・」 「わからないわ。なんかごめん・・・。」 「気にするな、俺は特に何も思ってないから。それより次何乗る?」 「そうね・・・――――」 このあと2人は様々なアトラクションに乗った。 ――午後5時 「じゃあ最後にあれ乗らない?」 「ああ、観覧車か・・・、いいぞ。」 と2人は観覧車へ向かって歩いていく。 もちろん2人の手は恋人繋ぎのままで。 観覧車にいざ乗ってみると2人はかなり緊張した。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 沈黙が続く。 すると不意に、 「俺まだ夢みたいだ、美琴とこんなに近くにいれるなんて・・・。」 と上条は明後日の方を見ながら話す。 「なによ急に。私も夢見たいよ。」 「もう少し早く気持ちに気づくべきだったよな。」 「私ももう少し早く素直になりたかった。」 2人は真っ赤になりながらだんだん顔が近づいて来る。 「ねえ当麻、キスして。ここなら誰も見てないし。」 「いいのか?」 「いいにきまってるでしょ。ほら早くしなさいよ。もちろん唇にしなさいね。」 「じゃ行くぞ・・・」 夕日が映えるとある観覧車のゴンドラの中で2人の陰は重なった。 観覧車を降り、遊園地を後にした2人は家路についていた。 「今日は楽しかったよ。また2人で来ようね。」 「そうだな。美琴が平気なら上条さんはなにも言いませんよ。」 「ねえ、当麻の家に行ってもいい?」 「へっ、だめだだめだ。じぇったいだめだ。」 「なに噛んでるのよ。いいじゃない彼女なんだから。」 「とにかく今日はだめだ。」 「わかったわよ。そんな剣幕で言わなくても・・・」 「すまない。」 「いいわよ、じゃあ私こっちだから。」 「ああ、またメールしてくれ。」 「わかった。じゃあ気をつけて帰ってね。」 寮に向かいながら上条は焦っていた。 (美琴を家に招きたいが・・・、インデックスがいるしな・・・。) (インデックス俺達が付き合ってるとかいったらどうなるかな・・・。) 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある上琴の未来物語
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/3214.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/こぼれ話 御坂と御坂の周りの世界を守るこぼれ話 中編 ミ妹「はい、休憩終わりですよ、とミサカはパンパン手を叩きながらこの場は仕切らせていただきます」 打止「はー、ってミサカはミサカはちょっとしょんぼりして返事をしてみたり」 番外「でも、一〇〇三二号は上位個体を除けば妹達の中だと一番年長だし、こういう役割は似合うね」 一方「…………サラっと、俺に精神攻撃仕掛けるたア、さすがだな…………」 上条「ちょっと待った! 俺、まだ立てないんですけど!?」 ミ妹「…………だから、休憩を打ち切ったことに気付いてください、とミサカはジト目を向けます」 打止「ふふっ。今、お姉様が目を覚ましたらどうなるか見てみたいなー、 ってミサカはミサカはまだ気絶したままのお姉様の顔を覗き込んでほくそ笑んでみる」 一方「言っとくが、それはずっと休憩が終わらない、ってのと同意語だ」 番外「だよねー、なんたって愛しのヒーローさんのキンタ○ク――――」 上条「いやいや! 膝枕って言おうぜ!? 曲がりなりにもお前も女の子なんだからさ! しかもお前と打ち止めが強引に進めたんじゃねえか!!」 番外「タマがねえ…!! チ」 上条「言わせねぇよ!? あと、思いっきりあるし!!」 ミ妹「下品な女だ……!、とミサカは番外個体に対してエリートな王子っぽく感想を述べます」 一方「テメェら打ち止めの前で下ネタとかすンじゃねェよ!!!」 美琴「ん……」 打止「あ、お姉様、目が覚めたみたい、ってミサカはミサカは頬杖ついて寝転がってお姉様と視線を合わせてみたり」 美琴「アレ……? 私、どうしたんだっけ……? 記憶が曖昧で…………」 ミ妹「大丈夫ですかお姉様、とミサカは素早くお姉さまに駆け寄り肩をお貸しして立ち上がらせます。 おそらくお姉さまは何か恐ろしい目に合ったので、脳がその記憶が精神に支障を来たすと判断して封じ込めたのだと思います、 とミサカはお姉さまを気遣います。人はとてつもなく怖いことがあると無意識にその記憶を封じ込める機能が脳に備わっています、 とミサカは人体の神秘をお伝えします」 美琴「あ、そう言えば聞いたことあるわね……うん。ありがと……ん? 何か、後ろで盛大な物音がしたような、って、アンタ何やってんの? でんぐり返りを失敗したような格好して。首痛めるわよ」 上条「……………」 一方「なるほど。その手があったか」 番外(ちぇっ、一〇〇三二号って結構えげつない真似するんだ) 打止(ぶー。強制コードで一〇〇三二号の行動を止めておくんだった、ってミサカはミサカは心の中で頬を膨らませてみたり) ミ妹「二人とも、何か言いました? とミサカは至極冷静で涼やかに問いかけます」 打止&番外 「「!!!!!!?! な、何でもないよ何でも!?」ってミサカはミサカはぶんぶか首を横に振ってみたり!!」 一方「とりあえず、これで続きを始められそうだな」 美琴「ほら、アンタもいつまでもそんなところで愉快な格好してないでさっさと立ちなさいよ」 上条「……………まあいいけど……どうせ不幸な目に合うのはいつものことだし…………」 白井黒子の乗る学バスは―――― 一方「略して、『黒子のバス』…かァ……」 全員「「「「「………」」」」」 一方「………」 全員「「「「「……………」」」」」 一方「……ンだよ!! たまにゃァ俺がボケたっていいだろォが!!!」 上条「あ、いや…それは別にいいんだけどさ……」 美琴「始まって一発目のネタがダジャレかよって言うか……」 ミ妹「しかもいきなりアクセル全開だったもので、とミサカは引きながら答えます」 番外「急にキャラにない事すんなよハゲ」 一方「じゃァもォいいよ!!! もう二度とボケねェ!!! つかハゲてねェし!!!!!」 打止「ミ、ミサカはいいと思うの!ってミサカはミサカは精一杯ハゲましてみる!」 彼女の名前は初春飾利。白井と同い年だが、低い背と丸っこい肩のラインのせいか年下にも見える。セーラーの夏服すら似合わない中学生というのもかなり珍しい気がする。黒の髪は短めで、薔薇やハイビスカスなど、花を模した飾りをたくさんつけていた。遠目に見ると派手な花瓶を頭に載っけているみたいだ。 美琴「え!? あの初春さんの頭飾りって単なる造花だったの!?」 上条「いや、ふつー造花だろ。つか、単なるって何だ?」 美琴「あーうん。佐天さんから聞いてたんだけど、初春さんの頭のやつって実は地球外からの侵略者だとかで、しかも、その花は周囲の人間にも次々寄生して仲間を増やしていくって都市伝説があったのよ」 一方「いや、マジで語られてもな。つーか、そんな眉つば信じるンじゃねェ」 ミ妹「そう言えば、お姉様。お姉様の髪留をいつからそれに変えました? とミサカは素朴な疑問を投げかけます」 美琴「ん? そう言えばいつからだったかな? 気付いたらいつの間にか付けてたというか」 上条「…………それ、花の形してるよな?」 打止「…………えっと、なんだか立ち入ってはいけないような気がしてきたんだけど……ってミサカはミサカはちょっと恐れ慄き始めてみたり」 美琴「え? でも私だけじゃないわよ。さっき、名前を出した佐天さんの髪飾りも花の形してるし」 上条「…………お前と佐天さんもこの子の友達だったよな?」 美琴「夏休み最後の日こぼれ話の時にそう言ったじゃない」 上条「…………」 一方「…………」 ミ妹「…………」 打止「…………」 番外「……わっ!!」 上条&一方&ミ妹&打止 「「「「!!□☆#$%&!!¥?!!!!×@@@@!?!」」」」 番外「ギャーッハッハッハッハ☆ 第一位そのリアクション最高だよ!! 腹いてー!! ひーっひっひっひっひ!!」 一方「テ、テメエやけにおとなしいと思ったら……このクソ女……!」 「で、何の用ですの? 風紀委員なんて山ほどいるくせに、わざわざこのわたくしを呼ばねばならないとはどういう事ですの?」 「うーん。冷静に考えると絶対に白井さんでなければならないというほどではないような」 「……、わたくしがお姉様とお買い物をしていたのを知っていたくせに、そう思うのならもう少し違った態度を取ってよろしいんではないですの?」 打止「ばんざーいッ!! ってミサカはミサカは諸手を挙げて喜んでみる―― って、いたたたたたたた、ってミサカは突然襲ってきたこめかみの痛みで眉間にしわを寄せてみたり!!」 ミ妹「何で両手を挙げて大感激なんですか? とミサカは無表情で最終信号のこめかみに両の拳を当ててぐりぐりします」 上条「なあ、御坂。何で打ち止めは万歳大喜びで御坂妹は涼やかに激怒してんだ?」 美琴「な、何で私に聞くのよ!?///」 上条「え? だって、一方通行はどことなく御坂妹をギスギスした瞳で睨んでこっちの声が耳に入らなさそうだし、番外個体からまともな答えを得られるとは思わんからだが」 番外「ひっどー。ヒーローさん。そんな言われた方したらミサカのガラスのハートが木っ端微塵なっちゃう」 美琴「防弾ガラスを木っ端微塵にしようとしたら相当な量の爆薬がいるわよ」 上条「悪かった。じゃあ番外個体でもいいや。打ち止めと御坂妹の今の感情の理由を教えてくれ」 美琴「な、何でその子に聞くのよ!?」 上条「え? だって、お前、教えてくれそうにないじゃん」 美琴「そ、それは……その……///」 番外「いや~~~単純に最終信号は誰かさんの、ある意味恋敵を遠ざけてくれたたことを喜んで、 一〇〇三二号は恋敵の誰かさんをなんとか変態の魔手にかけたかっただけだからだよ」 美琴「ちょ、ちょっと!!?!///」 上条「?????????? さっぱり分からんのだが?」 番外「だったら聞くなよ、ってさすがのミサカもおねーたまに同情したくなっちゃった」 彼女達は、共に同じ中学一年生だ。 上条「………」 美琴「どうしたの? 何か考え込んじゃって」 上条「…なぁ、前にここに来てくれた佐天って子も中一だよな?」 美琴「そうだけど…それが?」 上条「で、美琴とキラキラ娘も同じ中二、と」 美琴「……何が言いたい訳…?」 上条「いや…世の中、不公平だな~と思って……」 美琴「何と何を見比べて【そうぞうして】そう思ったこの野郎!!!」 打止「でも確かに不公平かも! ミサカは上位個体なのにミサカだけ体が小さいし!ってミサカはミサカは憤慨してみる!」 番外「でもミサカ達の世界って、妙に大人びた人多くない? 中学生、高校生で何でみんなあんなに落ち着いてんの? 普通もっと馬鹿みたいに騒いでるもんじゃないの?」 ミ妹「おそらく環境のせいではないでしょうか、とミサカは推測します。 治安があまり良くはありませんので、のほほんと生きてはいられないのでしょう、とミサカは結論付けます」 上条「そりゃ暗部寄りの意見だろ? ウチのクラスの連中は割とのほほんと暮らしてるぞ」 番外「いやいや、中身だけの話じゃなくてさ、見た目が大人っぽいって言うか、ぶっちゃけ老けてる人多いっしょ」 美琴「言っちゃったよ! ついに老けてるとか言っちゃったよこの子!!!」 上条「老けてるって……まぁ確かに、14で2m超えの神父とか、18には見えない聖人さんとかいるけども……」 ??「うるっせぇんだよ、ド素人が!!」 一方「逆のパターンもあるけどな。以前、不老長寿の生体サンプルに使われてる女を見た事あンぞ」 上条「そういや、ウチの担任の先生も見た目12~3歳くらいだな。やっぱ世の中不公平だな…(チラッ)」 美琴「だから!!! 何と何を比べとんじゃゴルァァァァァァ!!!!!」 「あれ? 白井さん、予知能力系にも目覚めたんですか?」 上条「まぁ実際は、一人の人間がいくつもの能力を使う事はできない訳だけど」 美琴「『基本的には』、ね」 ミ妹「悪魔の実を2つ以上食べたら体が爆散してしまうのと同じですね、とミサカは納得します」 一方「全然違ェよ」 上条「けど実際に、もう一つ能力が使えるとしたら何がいい?」 ミ妹「ミサカは肉体変化です。お姉様譲りの頼りない胸の装甲を強化し、 普段鈍感なアンチクショウを振り向かせてみせます、とミサカはチラリと目線を送ります」 美琴「頼りなくて悪かったわねっ!!!」 上条「てか、普段鈍感なアンチクショウって誰でせう?」 ミ妹「……………」 打止「ミ、ミサカは一方通行の精神を操って色んな事をしてもらう、ってミサカはミサカは大胆告白してみる……///」 番外「おっ! いいね~。じゃあミサカもそれにする。もっとも、最終信号とは180度使い方が違うけど」 一方「ざけンなテメェら」 上条「御坂は?」 美琴「わ、私!? そうねぇ…正直私は精神操作系能力にあまりいい印象がないから、他の能力がいいわね」 打止「それにお姉様の気になるお相手は精神操作が効かないもんね、ってミサカはミサカはニヤニヤしてみたり!」 美琴「ちょっ!!?///」 上条「精神操作が効かない相手って誰でせう?」 美琴「……………」 「第二三学区……。航空・宇宙開発のために一学区分を飛行場と発射場――――」 番外「二三学区で思い出したんだけどさ、ミサカこの時はまだ生まれてなかったから詳しく知らないけど、 エンデュミオンっていう宇宙エレベーターがあったんでしょ? ミサカも見たかったなー」 上条「あ、あー…うん……エンデュミオン、ね………」 美琴「確かにあったんだけど……う~ん…無かったとも言い切れないような…?」 番外「どういう意味?」 一方「D4Cってやつに近ェ。並行世界だが別世界の話なンだよ」 美琴「そうなのよ。ほら、私がフェブリとジャーニーと布束さんを助け出した世界もあれば、 同じ日だったはずなのに私の体が学園都市の外に行ってた話もあるし」 番外「…………大人の事情って複雑だね」 『――――なんか寮監が抜き打ち部屋チェックする危険性が出てきたって後輩が言ってたから、できればアンタに私物隠しておいて欲しかったんだけど』 「??? お姉様、今学生寮にいらっしゃいませんの?」 『うん。まあそういう訳だから。他の子に頼んじゃうけどアンタの私物もまとめて片付けてもらっちゃってオッケーよね?』 「なっ、なん!? 何ですって……ッ!! おね、お姉様が、わたくし以外の子を、頼りにして……? お待ちくださいですのお姉様! 一刻も早く寮へ向かいますゆえいい子いい子ぎゅーってしてあげましょうねの権利はわたくしにお譲りくださいですわ!!」 上条「常盤台くらい厳格な学校の寮となると大変なんだな。 俺の住んでる学生寮なんてほとんど外の世界のアパートと変わんねえから部屋チェックなんて存在しないぜ」 美琴「そこは羨ましいわ。ちょっとアンタは不快に思うかもしんないけど、 ハイレベルな学校になればなるほど規律って学校内だけじゃなくて学校外でも求められちゃうのよね。 ある意味、自由がないというか」 ミ妹「ミサカたちもある意味、自由がありませんよ。だって、そうそう外に出られませんし、 とミサカはもっと外の世界を堪能したいと少し落ち込みます」 番外「何言ってんだか。校則とか規律なんて破るためにあるんだよ。良い子ちゃんぶって守ってるのが正しいとは限らないんだから」 一方「俺はお前が『正しいことをした』のを見たことがねェけどな」 打止「この変態さんに突っ込まなくていいの? ってミサカはミサカは何行か前のヒーローさんの言葉を真似してみたり」 番外「いや、それも前と同じ回答で今さらツッコミを入れる意味無いし。 ところで、おねーたま。ある意味、この場合、この変態ツインテールですの子に片付け頼んだ方が良くない?」 美琴「何で?」 番外「日記とか詩集とか、もし何かの間違いで見られてしまったら、とか思うと。 ですの子なら即抹消処分してくれても他の子が見るとまずいと思うけど?」 美琴「!!!!!!!!!!!!!!!?! な、ななん、なななな何でアンタが知ってんのよ!?///」 番外「…………マジなの? ミサカ超ビビった」 打止「そう言えば、よみかわも一方通行の部屋を一方通行が居ない時にチェックしてたような……、ってミサカはミサカは思い出してみたり」 一方「別に見られて困るようなものは何もねェぞ」 ミ妹「そのようですね。上位個体が見た映像をMNWでPVしてみましたが何も無かったようです、とミサカは報告します。 ちなみに、入念にチェックしていたのはベッドの下のようなのですが何か意味があるのですか? とミサカはかまととぶりつつ上条さんに問いかけます」 上条「言っておくが俺の部屋にも無いぞ、というものを探しているということだ。それ以上は聞くなよ?」 番外「ぶー。つまんないつまんないつまんないよー、第一位とヒーローさん」 美琴(ふー。打ち止めのおかげで話が逸れて助かったわ) 番外「せっかくおねーたまの日記や詩集の話を逸らしてまで聞いたのにー」 美琴「!!!?」 そこにいるのは一人の少女 白井よりもやや高い背。髪は頭の後ろで二つに束ねて―――― 一方「結標の初登場シーンか」 美琴「ってそうだったわ! ずっと気になってて結局聞きそびれてたんだけど、アンタ結標とどんな関係な訳!? アンタがへべれけになってる時、この女も確か一緒にいたわよね!!」 番外「いやいやおねーたま。新約2巻【そんなさき】の事を今追求しても」 美琴「大事な事なの!!!」 上条「俺が救急車と警備員呼んだんだよ。多分この巻のラストで分かると思うけど、この人フェンスの上で気絶してたからさ。 ……そういや結局の所、最終的に事件を解決したのって誰だったんだろ…?」 一方「………」 美琴「それだけ…?」 上条「そうだけど…何か怒っていらっしゃる…?」 美琴「おっ、怒ってなんかないわよっ!!!」 打止「そういえば、一方通行はどうして結標って人の名前を知ってるの?ってミサカはミサカは素朴な疑問を口に出してみる」 一方「……色々あンだよ」 ミ妹「もしかしてセロリの(小指を立てて)コレですか、とミサカは幼女以外にも興味を示す事に驚きを隠せません」 打止「ガガーン!! そそ、それってミサカ最大のライバルっ!!? ってミサカはミサカは大ショック!!!」 番外「ギャッハハハ☆!!! マジかよ第一位!! 何、もうこの女とはヤった訳!!?」 一方「テメェら好き勝手言ってんじゃねェ!!! ンな訳ねェだろォが!!! だいいち、コイツはショタコンだ!!! 同世代の男に興味ねェ奴なンだよ!!!」 番外「なるほど。類が友を呼んだのですね、とミサカは納得顔で頷きます」 打止「良かった、ってミサカはミサカは一安心」 番外「はぁ~~~ツマンネ……てっきり、第一位と上位個体の修羅場が見れると思ったのにー」 一方「…………」(プルプル怒りに身を震わせている) 上条「(な、なあ御坂、妹達って何であんなに一方通行に対して強気なんだ? 曲がりなりにも学園都市第一位だぞ)」 美琴「(そりゃ、一方通行が妹達にでっかい負い目があるからでしょ。でも大丈夫よ。あの子たちも『からかう』までしかしないから)」 ミ妹「むむ! どうしてお姉様と上条さんがそんなに顔を近づけているのですか!? とミサカは目ざとく見つけたので注意します!」 美琴「へっ! ち、違うわよ! 誤解しないで!! 単に内緒話してただけだから! ふ、深い意味なんてないから!!!///」 番外「というか、ホント、ヒーローさんを『意識していない』ときのおねーたまってヒーローさんに負けないくらい鈍感なのね」 「――――御坂美琴の奴、切羽詰っているとはいえ、――――まぁ、『実験阻止』にしても一人で片をつけた訳でもないし、――――」 上条(!!! 実験って…まさか『あの事』か? だとしたら………) 美琴「………」 一方「………」 ミ妹「………」 打止「………」 上条(うぅ…やっぱ気まずい空気に……このメンツでこの話はどう考えてもタブーだよな……) 番外「ねぇ、何でみんな黙っちゃってんの? 何々、ここはお葬式? ねぇねぇ誰か何か言ってよニヤニヤ」 上条(…一人だけ空気が読めない…って言うより、あえて空気を読まない人がいるけど……完全に分かってて言ってるな……) (あー、桔梗の野郎め。また妙な問題を押し付けてきやがったじゃん) ――――黄泉川は一度だけ面談を許された際、女性研究者から、ある子供たちの面倒を見るようにとだけ頼まれた。 預けられたのは特殊な能力者のコンビらしい。 その子供たちの声が、ドアの向こう――――お風呂場の中から聞こえてくる。 一方「!!!!!!!!!?!」 美琴「あ、警備員の黄泉川さんじゃない」 上条「お前、黄泉川先生を知ってんの? 俺たちの学校の先生なんだけど」 美琴「そうなの? うん。夏にたくさんお世話になっちゃったからね。そっか。アンタの学校の先生なんだ」 上条「おっかないだろ?」 美琴「そんなこと無いわよ。とっても頼りになる人だし、すごく優しいし、私もこういう先生に習いたいな、って思うわ」 番外「だったら、習えばいいんじゃね? 今すぐは無理でも二年後なら可能性あるかもよ?」 美琴「どういうこと?」 番外「そっちのヒーローさんと同じ学校に通えば、って意味。黄泉川センセーの有難い授業とヒーローさんと一緒に登下校。文字通り一石二鳥じゃん☆」 美琴「んな!? な、何を言っとんのかねチミは!?!!」 ミ妹「おや、どこに行くのですか? とミサカはなんだか珍しく気配を断ってドアノブを握る一方通行の背中に問いかけます」 一方「ちょっとトイレ……にな……って、あン?」がちゃがちゃがちゃ 番外「あ、そのドアのカギ、さっき電子ロックにしたから、暗証キーを入力しないと開かないよ。 ちなみに無理に破壊しようとすると迎撃システムが作動して大爆発するから下手に壊さないでね。ミサカたちも巻き込まれちゃうし」 一方「番外個体、貴様というやつはァァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!」 打止「あ、続きが始まった、ってミサカはミサカはみんなに画面を見るよう促してみる」 「ばしゃーん、ってミサカはミサカはお風呂に飛び込んでみる! さらにばしゃばしゃばしゃって開放感のあまり、バタ足してみたり!!」 「つーかよォ……」 番外「おや、アニメ展開。ところで、この後、『愉快にケツ振りやがって、誘ってんのかァ?』って続けて言ったんだよね? 第一位」 一方「言ってねェ!! 絶対にこの場では言ってねェぞ!!」 番外「あれ? おっかしーなぁ。MNWに第一位のこのセリフが記録として残ってんだけど、 この場以外だと使い道が無いはずなのにどこで使ったの? MWN内に映像が残って無いんだよね」 ミ妹(番外個体は実験のことは知っていて妹達の負の感情を抽出することはできても、作られたのが遅かった分、ミサカネットワークがあえて削除した実験の詳細な内容までは共有されていないのですね、とミサカは分析します) 美琴「いや、その前に突っ込みたいところがあるんだけど、アンタ、この子と一緒にお風呂に入ってんの?」 一方「こン時は仕方なくだ、仕方なく!! 黄泉川の野郎がガキは監督が居ねえと溺れて危ねェ、つって俺を無理矢理放り込んだだけだ!!」 上条「まあ、打ち止めくらいの歳ならまだ別にいいんじゃないか? 気にするほどでもないだろ」 美琴「でも、そこの白いのってロリコンでしょ? 危ないんじゃない?」 一方「おいオリジナル、そのガセネタの出所を教えろ。今すぐぶっ潰しに行ってやるから」 ミ妹「なるほど。合理的にこの場を逃げ出すのに最適の手段ですね、とミサカは一方通行の学園都市ナンバー1である頭の回転の早さに感心します」 一方「ぐ……」 美琴「と言ってもねー。教えてもいいけど、たぶん無駄よ。潰すなんて不可能だと思うけど」 上条「何で?」 美琴「だって、インターネットの掲示板で見つけた情報なのよ。 何て言うか、それなりの状況証拠を揃えての考察だったし結構信憑性が高いかなって」 ミ妹「一部ではロリコン四天王の一角として有名な模様です、とミサカは補足します」 番外「ミサカもネットで見た事ある! 確か残りの三人は、幼女限定で保護教育免許状取得した豪傑と、 『小学生は最高だぜ!』って名言を残した英雄と、『12歳以上は年増』って断言した勇者らしいね」 上条「すげぇラインナップだな……」 一方「……てことは何だ? その情報は世界中に拡散されちまってるってことか……?」 美琴「そうなるわね。だから言ったじゃない。潰すのは不可能だって」 一方「…………」(プルプル怒りに身を震わせている) 『――――シャンプーが目に入って涙ぐむ最強の能力者ってどうなの、ってミサカはミサカは呆れてみる』 ミ妹「どうなのですか、とミサカは涙ぐんだ最強の能力者を見ながら鼻で笑います」 番外「ぷぷぷっ! 今どんな気持ち? ねぇねぇ、今どんな気持ち?」 一方「くっそ…! だから嫌だったンだよ。この辺の事をやるのはよォ!」 打止「今度シャンプーハット買ってきてくれるようにヨミカワに頼んでみるね、ってミサカはミサカはあなたの為に提案してみる!」 一方「いらねェェェ!!! つーかこれ以上余計な事すンじゃねェよ!」 上条「いやでも、アレたまにやっちゃうよな」 一方「テメェも、フォローとかいらねェンだよ! 益々惨めになンだろォが!」 上条「いやいやそうじゃなくてさ、俺ってほら不幸体質だろ? 詰め替え用のシャンプー入れてる時に、中身がビュ!って飛んできて実に直撃する事とかよくあるんだよ」 美琴「……それもう、シャンプーが目に入るとか、そういう次元の話じゃないでしょ」 一方「けど、オリジナルよォ、テメエは逆に三下のシャンプーでそうされたいンじゃね?」 美琴「は?」 一方「所謂、がンし――」 上条「言わせねーよ!! つか、テメエ、こぼれ話だとやけに下ネタに走りやがるな!? 今、完全にヤケになってんだろ!?」 ミ妹「お姉様、一方通行は何を言おうとしたのですか? とミサカはちょっと真面目に問いかけます」 美琴「いや、私にも分かんないんだけど……」 番外「ミサカにも分かんないんだよね。これはマジで」 打止「学習装置に無かった知識ってことは布束さんが知らなかったってことなのかな? ってミサカはミサカは推理してみたり」 美琴「分かることと言えば、とりあえず碌でもないことってだけね」 上条&一方 「「……………」」 「じゃ……ナニか? オマエは俺があの日に何を叫ンだか……」 「『確かに俺は一万人もの妹達をぶっ殺した。だからってな、残り一万人を見殺しにして良いはずがねェんだ。ああ綺麗事だってのは分かってる、今さらどの口が言うンだってのは自分でも分かってる! でも違うンだよ! たとえ俺達がどれほどのクズでも、どンな理由を並べても、それでこのガキが殺されても良い理由になンかならねェだろォよ!』……じーん、ってミサカはミサカは思い出し泣きしてみる」 一方「こ、殺す! このガキ、ぶっ殺す……ッ!!」 打止「きゃー! 怖いよー、ってミサカはミサカはヒーローさんの背中に隠れてみたり」 上条「おいおい?」 ミ妹「どうされましたお姉様? とミサカはなんだか立ち尽くしている感のあるお姉様に問いかけます」 美琴「……ん? あー、まあ、ね……ちょっと複雑って言うか……ごめん。少し一人にしてもらえるかな?」 ミ妹「分かりました、とミサカはお姉様の心情を酌んでそっと見守ることにします」 番外(んまあ、ミサカも第一位のこのセリフは知ってるけど、この言葉があったから、ロシアの時に『殺す』まではできなかったんだよね。 憎い相手だったはずなのに憎み切れなかったっていうか。たぶん、おねーたまも同じ気分なんだろうな) 右肩、左脇腹、右太股、右ふくらはぎ。 数ヶ所に突き刺さる鋭利な金属は、衣服の布地を�筋んで、それを強引に傷口の中にねじ込んでいる。 美琴「黒子……」 打止「痛そうで見てられないよ!ってミサカはミサカは耐え切れずにギュッと目を瞑ってみたり!」 ミ妹「ですがミサカが見ている以上その映像はMNWを通じて上位個体の脳に直接伝わります、とミサカはガン見します」 打止「ぎゃああああ!!! ってミサカはミサカは!!!」 番外「面白そうな事考えるね。今度えげつないくらいのホラー映画とか観てあげよっか?」 打止「ぎゃああああ!!! ってミサカはミサカは!!!」 上条「……すげぇシリアスなシーンなんじゃないのか…? ここ……」 美琴「………黒子…」 一方「さっきとはニュアンスの違う『黒子』だったなァ」 (あの殿方は、いつの間にか寮から消えていて……ああ、そうですの。お姉様のベッドの下から、くまのぬいぐるみが引っ張り出されたままで、――――) 美琴「な、何度も確認するようだけど、ホ、ホントに変な物見てないわよねっ!!?///」 上条「見てないって。つーかそこまで言われると、何を隠してあったのか逆に知りたくなってくるんだけど」 美琴「おおお乙女の秘密を教えられる訳ないでしょっ!!!?///」 番外「って事は、『何か』を隠してた事自体は認める訳だ」 美琴「はうっ!!?///」 打止「ミサカも知りたい!ってミサカはミサカは興味津々!!」 美琴「ぁぅ…ぁぅ……///」 ミ妹「…この流れは非常にまずいです。またお姉様が周りの空気に流されて余計な事を言いそうになるかも知れません、 とミサカはメガホンを用意して大声でホンジャカバンバンを言う準備をし―――」 上条「……いや、やっぱり無理に聞き出すのはやめとこうぜ。誰だって人に知られたくない事の一つや二つあるしな」 ミ妹「―――ようとしましたがミサカはそっとそのメガホンを床に置きます」 白井は傷だらけの体を動かして衣服に手をかけた。サマーセーター、半袖のブラウス、スカートのホックを外して―――― ミ妹「野郎共ー! 目を瞑れー! とミサカは男性二人に指示します」 一方「見た所でどォとも思わねェけどな」 番外「さっすがロリコン四天王。見た目がロリ体型でも、中学生には興奮しないって訳だ」 一方「…テメエ、嵐の前の静けさ、って、言葉知ってっか……?」 美琴「アンタもほら!! 目ぇ瞑んなさいよ!!」 上条「瞑ってるよ」 打止「お姉様、そんなに心配ならお姉様の両手でその人の顔を覆ったら、ってミサカはミサカはいい事を思いついてみる」 美琴「あ、うん。それもそうね」 上条「…俺ってそんなに信用ないのでせうか…?」 番外「でもそれだけじゃ指の間から見ちゃうかも知れないから、おねーたま。ヒーローさんの頭に手を回してそのまま引き寄せて。 そうすりゃおねーたまの体全体でガードできるよ」 美琴「あ、うん。それもそうね」 上条「…俺ってそんなに信用ないのでせうか…?」 美琴「……………」 上条「……………」 美琴「って、これ抱き合ってんじゃないのよおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!///」 上条「胸が!!! 御坂さんのお胸がわたくしの顔面に当たっているのですがああああぁぁぁぁぁ!!!?///」 ミ妹「な、ならばミサカは背後から抱きつきます、とミサカはお姉様に対抗心をメラメラと燃やします」 一方「……何やってンの?」 白井黒子は、ほんのわずかに下着姿の自分の体を観察する。 御坂美琴のは悪趣味と言われて(実はかなり深刻に)ヘコんでいる白井だが、―――― 美琴「あ、意外と気にしてたんだ」 番外「そりゃ悪趣味の塊みたいなおねーたまに言われちゃあね」 美琴「わ、私のは悪趣味じゃないってばっ!!!」 ミ妹「ゲコ太柄のパンツを穿いているのに悪趣味じゃないと言い張るのですか、とミサカはそれはないわーと嘆息します」 美琴「えっ!!? な、何で知ってんの!!? 短パン穿いてんのに!!」 ミ妹「適当に言ったのにマジかよ、とミサカはガン引きします」 打止「いいないいな! ミサカもゲコ太のパンツ欲しい! ってミサカはミサカは羨ましがってみたり!」 上条「(……こういう話をしてる時って、男はどうリアクションすればいいんだ…?)」ヒソヒソ 一方「(ひたすら黙っとけ。そンでなるべく目立たず、ただただ空気と化しとけ)」ヒソヒソ 子供っぽいデザインの下着は――――動くといちいち肌を擦って気が散るのだ。 そんなものを選ぶぐらいならスカートの下に何も穿かない方がマシだとさえ思っている白井だが―――― 美琴「そっ! そんなものって何よそんなものって!!!」 番外「えっ!? 『何も穿かない方が』って所よりそっちが先!?」 美琴「だって可愛いじゃない!!」 ミ妹「正直ミサカもゲコ太は嫌いではありません。嫌いではありませんがさすがにパンツはねーよ、とミサカは率直な意見を述べます」 美琴「何かアンタに言われたくない! 縞パンが好みってのは特殊な趣味の男に多いって聞いたことあるわよ!」 ミ妹「何ですと!? とミサカは驚愕の真実に度肝を抜かれます!」 打止「ミ、ミサカは両方とも、とってもいいと思うの! ってミサカはミサカは更に羨ましがってみる!」 上条「(……いつまで空気でいればいいんでせうかね…?)」ヒソヒソ 一方「(嵐が去るまでだ。下手に会話に入れば、確実に大怪我すンぞ)」ヒソヒソ この辺りは美琴とは合わない。ガッカリな白井黒子である。 美琴「絶対私のが普通だと思うけど……」 ミ妹「どっちもどっち。五十歩百歩。どんぐりの背比べ。目くそ鼻くそ、とミサカは結論づけます」 美琴「縞パンもね」 ミ妹「……」 美琴「……」 打止「ああ! なんだかとってもギスギスした雰囲気!? どうすればいいのかな? ってミサカはミサカは途方に暮れてみたり!」 上条「………」 一方「………」 番外「じゃあせっかくなんで男性側の意見も聞いとこうか。せっかくここに二人もいるんだから」 上条&一方 「「最悪なタイミングで話振られたよ!!!」」 「なに、お風呂入ってんの? アンタ帰ってきたなら部屋の灯りぐらい――――」 美琴「この時はもう、黒子が何かを隠してるって分かっちゃってたのよね……」 打止「お姉様…ってミサカはミサカはしょんぼりするお姉様につられてミサカも元気がなくなってみる……」 上条「そっか………それで、俺たちはいつまで目隠ししてなきゃいけないんだ?」 美琴「まだよ」 ミ妹「彼女が着替え終わるまでお待ちください、とミサカは注意します」 番外「じゃあ代わりにおねーたまのどっきどき生着替えでも見せてあげたら?」 美琴「そんな事しても何の解決策にもなんないわよっ!!!///」 打止「あ、お姉様元気が出たみたい、ってミサカはミサカは意外と単純なお姉様にビックリしてみたり」 「お姉様はこれまでどちらに?」 「んー? 買いそびれたアクセサリーを集めにってトコかしら。――――」 ―――― 「雨、降らないと良いですわね。近頃は天気予報も当てになりませんから」 ―――― 「そうね心配してくれてありがとう。――――」 上条「何か…分かり合ってるって感じだな。お互い言葉は濁してるのに、さ」 美琴「そうね…なんだかんだであの子の事は大切なパートナーだと思ってるわ」 ミ妹「ではどうでしょう。このままお姉様は百合の花園に足を踏み入れるというのは、とミサカは提案します」 美琴「…何でそうなるのよ……」 ミ妹「そうすれば強力なライバルが一人減るからです、とミサカは正直に答えます」 美琴「ぶっ! ラ、ライバルって誰の事よ!!? てか、何のライバルだってのよ!!?///」 番外「まったまた~。分かってるくせに~」 打止「あの人の事だよね、ってミサカはミサカはニヤニヤしてみる!」 美琴「ちちち違っ!!!///」 一方「……この一連の流れを見て、三下はどォ思うよ」 美琴「ちょっ!!!?///」 上条「う~ん…言葉濁しまくってて、みんなが誰についての事を言ってんのかさっぱりだ」 一方「…だそォだ、オリジナル」 美琴「…ですよねー……」 番外「全然分かり合えてねーじゃん」 血まみれのバスルームを磨いて―――― 美琴「もう見てもいいわよ」 上条「やっとか……はぁ~、長かった」 美琴「…そんなに黒子の着替えが見たかった訳…?」 上条「いや、そういう訳じゃないけど……何かイラついていらっしゃいますかね…?」 一方「なーんか、これ、フラグのような気がするンだが」 超電磁砲の異名は。その常識を軽々と打ち破る。 ??「その常識は通用しねえ」 上条「? 何か聞こえたか?」 一方「気のせいだ気のせい。ただの幻聴だろォよ」 打止「ここからお姉様が大活躍するんだね、ってミサカはミサカはすっごく楽しみ!」 美琴「私は大した事してないわよ。この巻の主役は、あくまで黒子だし」 番外「謙遜すんなよおねーたま。この後そこのヒーローさんと組んず解れつ、夜の運動会で大活躍するんでしょ?」 美琴「ししししないわよそんな事!!!!!///」 ミ妹「ちょっと待ってください。ミサカもその運動会に参加させてもらいます、とミサカは挙手します」 打止「夜の運動会って何?ってミサカはミサカは首をかしげて聞いてみる」 一方「……墓場でやる運動会の事だ。妖怪の大覇星際みてェなもンだな」 打止「なるほどなるほど、ってミサカはミサカは納得納得」 上条「…話がどんどんずれてるな……」 「私はムカついてる。私は今、頭の血管がブチ切れそうなくらいムカついてるわ。ええ、『樹形図の設計者』の残骸を掘り起こそうとしたり、私欲のためにそれを強奪しようとする馬鹿が現れたり、やっとこさみんなで収めた『実験』を再び蒸し返そうとされたり、確かにそれはムカつく。この件に関わっている機関の中枢を情報戦でまとめてぶち壊したいぐらいには」 打止「な、何か初めてお姉様が怖かったり、ってミサカはミサカは震えながら一方通行の影に隠れてみる!」 一方「まァ、俺にはオリジナルの気持ちが分からンでもないがな……」 番外「……今回ばかりはミサカもおとなしくしてよう、ってマジで思っちゃった」 上条「こういう御坂を見るのは珍しいな。普段のお前の俺に対する『怒り』ってのとは、まったく違う『怒り』だろ、これ」 美琴「まあね。アンタに対して『怒る』のとは訳が違うから」 ミ妹(どう違うのですか? と聞ける雰囲気ではないですね、とミサカは心の内にこの気持ちを秘めます) 「私が一番ムカついているのは――――この件に私の後輩を巻き込んだ事。 その馬鹿が医者にも行かずにテメエで下手な手当てをやった事、 そこまでボロボロにされてまだ諦めがついてない事! あまつさえテメエの身を差し置いて! 私の心配するような台詞を吐きやがった事!! まったくあんな馬鹿な後輩を持った事に腹が立つわ!!」 「ああ私はムカついてるわよ私利私欲で! 完璧すぎて馬鹿馬鹿しい後輩と、 それを傷つけやがった目の前のクズ女と、何よりこの最悪な状況を作り上げた自分自身に!!」 まるで己の胸に刃を突き刺す用に、美琴は叫んだ。 美琴「あはははは。正直言って、アンタたちには見せたくない私ね。実験のときは一方通行に敵わないからって、コソコソ裏で止めようとしたり、結局は何にもできなくてアンタ(上条)に任せたり、一万人以上の妹達を見殺しにしたりしたってのに、相手が一方通行じゃない、ってだけでこんな強気になってんだから…………」 上条「いや、お前は間違っちゃいねえよ。実験のときもこの時も」 美琴「ふふ。ありがと。慰めでも嬉しいかな」 上条「馬鹿野郎。慰めなんかじゃねえ。本気で言ってるに決まってんだろ」 ミ妹(うぅ……お姉様と上条さんが何かとっても良い雰囲気になってるのに割り込めないなんて、とミサカは己の不甲斐なさに落胆します) ――――ある少女はベッドから起き上がった。 番外「いやー、なんとか喋れそうな展開に替わってくれたみたい。正直、息が詰まってたわ」 打止「ホントホント、ってミサカはミサカは同意してみたり」 一方(番外個体は、そのまま死ねば良かったのに) ミ妹「何か不穏なことを考えませんでしたか? とミサカは一方通行の顔を覗き込みます」 一方「テメエは、いつのまに読心能力を身に付けやがったんだコラ」 美琴「重苦しい雰囲気にして何かゴメン」 上条「ま、いいじゃねえか。こっからは元通りだし」 番外「そうそう。で、ところでこのベッドから起き上がった少女って誰? 字面からじゃさっぱり分からんけど」 ミ妹「ああ、これはミサカですね、とミサカは報告します」 上条「ん? ベッド? どういうことだ?」 御坂妹は寝巻に手をかける。 ――――前を留めている紐を外すと、下着も何もない白い肌が露出される。御坂妹は、まるで恋人の前で着ていたバスローブを床へ落とすようにストンと―――― 上条「ぶしゅっ!」(鼻血が噴霧した音) ミ妹「どうされました上条さん? ミサカの麗しき肌に見とれたとでも、とミサカは少しニヤニヤしながら問いかけます」 美琴「アンタ(御坂妹)がそんなツッコミ入れる!? つか、これじゃ元のシーンの面影無いじゃない!? 私と結標の戦闘シーンがほとんどカットされてる所為で完全に本来のストーリーからは逸脱してるわよ!?」 打止「本当はもっとシリアスなシーンで、さらに切羽詰まってるんだけどね、ってミサカはミサカは少し困った笑みを浮かべてみたり」 番外「で、第一位はやっぱり冷静に見てるね」 一方「そりゃあ、一応、俺もこの時、何が起こってたか知ってるからな。そこの三下みてェにゃ気分になれねェよ」 番外「はぁ~~~何その反応? もっと読者を楽しませなきゃいけないよ。ヒーローさんみたいに」 一方「いや、別にアイツは読者を楽しませようとしたリアクション取ったわけじゃなくて素だろ? あと、オマエは絶対に殺ス」 番外「でも一〇〇三二号のヌードってことは、おねーたまのヌードでもあるってわけなんだけど気付いてる? ヒーローさん」 上条「ぶしゅっ!!」(再度、鼻血が噴霧した音) 美琴「なな何考えてんのよアンタは!!/// こ、ここはそういうシーンじゃないって言ったじゃない!!///」 「とうまー 明日のおかずは何かな?」 「どうすっかなー 帰りにスーパー寄って何か特売品…」 「明後日は?」 「…ってお前な……ソレしかないのかよ!」 上条「これは…漫画版のシーンだな。本当にインデックス【アイツ】は、食い物の事しか頭にねーのかよ…」 美琴「いいわねー! 女の子と一緒にお食事ができてー!」 上条「一緒にって…そりゃ一緒に住んでるんだから、飯も一緒に食うだろ」 美琴「そういう意味じゃなくてさ……」 上条「?」 打止「もう! お姉様は、『私も一緒にお食事がしたい』って事が言いたいの!ってミサカはミサカは代弁してみたり!」 上条「えっ? そうなの?」 美琴「あっ…! い、いや…別にそういう訳じゃ……///」 上条「違うってさ」 打止「そんなあっさりと!? ってミサカはミサカはあなたの鈍感さに開いた口が塞がらないよ!」 (させない……!) 御坂美琴は夜の街を駆けていた。 (あの実験だけは……) 胸に去来するのは、かつて妹達を大虐殺した実験。一万人以上の妹達が人としての尊厳すら与えられず、ただただ殺されるためだけの実験。 (絶対に再開させるわけにはいかない!!) 一人の少年によって止めることができたその実験を再開させてはならない。 再開されれば、今度は妹達のみならず、その少年さえもまた巻き込んでしまう事になる。 それだけは絶対に阻止する。 御坂美琴は強く決意し、一人で走る。 上条「こっちはアニメ展開か。つーか、お前、また一人でやるつもりだったんかよ」 美琴「し、仕方ないじゃない! だって、私はこの当時だと、アンタの居住先も連絡先も知らないのよ! どうやって教えろってのよ!!」 上条「あ、そっか。この時はまだペア契約してなかったな」 一方「まァ、この時の俺には、もう実験に加担する気なンざ、まったく無かったわけだが」 打止「でもそうなると、もし残骸が組み直されて、樹形図の設計者が修復されてたら、スペアというか一方通行の代わりって誰になったんだろ? ってミサカはミサカは素朴な疑問を抱いてみたり」 一方「俺が選ばれたのは、あくまでも、通常カリキュラムで『レベル6』に到達できるって判断されたから、組まれた実験だったンで、『代わり』はいねェンじゃね?」 ミ妹「第二位の方は? とミサカは念のためお聞きします」 一方「垣根か。アイツもやりたがってはいたみてェだが、大前提が『通常カリキュラムで到達可能かどうか』なわけだから、 それが無い以上、申請しても却下されてただろうぜ」 ミ妹「という事はもう、実験は再開されない、と見ていいわけですね? とミサカは希望に胸を膨らませます」 番外「ちなみに『第三位』のおねーたまは? 確か、おねーたまは大覇星祭のときに『レベル6』に近づいたって話があったし、 『適性』はあるってことだよね?」 美琴「ま、まあねっ。つか、アレは思い出したくないの。ただ、仮にやれって言われてもやるわけないでしょ。要請が来ても却下よ却下。 あと、仮に四位以下に可能性が出てきたとしても、フルボッコにして実験に加担させないように忠告しとくから」 一方「その点だけは激しく同意してやンぜ。むしろ、この点に限り協力も惜しまねェ」 上条「レベル5の辞書には『穏便』とか『話し合い』って単語は無いのか……?」 打止「てことは実験再開はまずあり得ない、ってことだね! ってミサカはミサカは万歳してみたり!!」 ミ妹「そのようですね、とミサカは心の底から安堵のため息をもらします」 上条「良かったな、お前ら」 番外「安心したところで、ちょっと気になったんだけど良いかな? おねーたま」 美琴「何?」 番外「サラッと流そうとしたみたいだけど、ヒーローさんが言った『ペア契約』って何かな? ミサカ、とっても興味あるんだけど」 美琴「そっちの『安心したところで』って意味か! 本当にアンタって奴はぁぁぁぁぁあああああああああああ!!///」 一方「フッフッフッフッフ……なァ、オリジナル。三次計画のコイツが二万体なら実験に加担したらどうだ? むしろ俺がしてェ」 「探したぞビリビリ」 「…探したって…」「なんで」「…なんであんたがまた……!」 「あー…細かい事情はまた後な」「場所の見当はついてるんだろ?」「行こう ビリビリ」 上条「ここも漫画の展開だな」 番外「へー、おねーたまとヒーローさん会えたんだ」 ミ妹「ミサカが彼に頼みましたから。『ミサカと、ミサカの妹達の命を助けてください』と、とミサカは説明します」 一方「…オリジナルよォ。三下と会っただけで顔が赤くなンのは、さすがにどォなンだァ?」 美琴「あ、あああ、赤くなってないわよ!!!///」 一方「なってンじゃねェかよ、よく見ろ。つーか今もだけどよォ」 美琴「ななななななってないってばっ!!!!!///」 上条「…御坂が赤くなるのは当然だろ?」 全員「「「「「!!!!!?」」」」」 上条「こん時御坂は、白井を探すためにあちこち走り回ってたんだ。だから息が上がって同時に顔も…ってみなさんどうしたのでせうか? みんなこっち見て変な顔してるけど、俺の顔に何かついているのでせうか?」 上条「うお!? まだ続くんかよ、このこぼれ話!?」 ミ妹「ネタが豊富ですからね、とミサカはしみじみ頷きます」 一方「つーかよォ、オリジナルと三下が絡んでるシーンがほとんどねェってのに、何でここまでネタが豊富なンだっつーの」 番外「ですの子ちゃんとミサカのおかげかな? いやん☆」 打止「それは否定できないかも、ってミサカはミサカは二人の存在感に度肝を抜かれてみたり」 美琴「打ち止め、それは存在感って言うんじゃなくて『濃い』っていうのよ」 ミ妹「おや?」 美琴「ん? どったの?」 ミ妹「メールのようです、とミサカは簡潔に報告します」 打止「あれ? ミサカにも来てる、ってミサカはミサカは一方通行に買ってもらった携帯を覗き込んでみる」 番外「? ミサカにも……って、あ。」 上条「どうした?」 ミ妹「いえ、思った以上に時間が経っていたようです、とミサカは驚きのあまり目を丸くします」 打止「えへへへ。一〇〇三二号とミサカはカエル顔のお医者さんトコで、 今日はメンテナンスだったの、ってミサカはミサカは舌をてへっと出してみたり」 一方「オマエは?」 番外「あははははははは。『買い物まだ終わらないじゃん?』だって。ちっとも目が笑っていない笑顔の家主さんが浮かぶわ」 美琴「つまり、アンタたちは寄り道してましたってことね?」 ミ妹「平たく言うとそうなります、とミサカは開き直ります」 打止「本当はもっと早く終わるかと思ってたんだけど、想像以上に長くなっちゃった、ってミサカはミサカは苦笑を浮かべてみる」 番外「まあ、とは言え、催促があったからには、ミサカたちは一旦、退却するね☆ でも最初に言った通り、第一位は最後まで帰れないから」 一方「……人数的に少なくなるし、オリジナルと三下二人だけだと話は続く以前に進まなくなるだろうからな。 ツッコミ役はいなきゃならンよな……」 美琴「ど、どういう意味よそれ!?」 …… …… …… 上条「で、とりあえずあの三人は帰っていったわけだが」 美琴「なんか急に静かになったわね」 一方「そりゃ人数が半分になりゃ騒がしさも半分になンだろ」 美琴「んー確かにそうなんだけど、最近(超電磁目録後編以来)、このこぼれ話って、ずっと四人でやってたから何か感覚が違うというか」 上条「まあ、確かにそれは言えるわな。つっても、今さら、新しいゲストってのも――」 ??「ハッ! ここはどこでございますか!? 確か小さなお姉様を見かけてから意識が飛んでしまったような……」 美琴「うお!? 居たの黒子!? ていうか、いつから!?」 上条「そういやすっかり忘れてた。白井が居たんだっけ」 白井「むっ! これは腐れ類人猿! って、お姉様! きぃぃぃぃぃぃいいいいい! わたくしに黙って逢引とは!!」 美琴「ば、ばか! 違うわよ!/// ちゃんとよく見なさい! アンタもこのスタジオに来たことあるでしょうが!!」 白井「あら? そう言えばここはこぼれ話スタジオですわね」 一方「てことは何だ? さっきのコイツは場所も確認せずに発情してたってことか?」 美琴「?????」 上条「お、そうだ。丁度いいじゃねえか。さっき、三人だとやり辛い風なことを言ってたから白井に混ざってもらえば」 白井「何の話ですの?」 上条「ほら、お前も何度か来たことあんだろ。原作思い出話を語るこぼれ話。 これから原作8巻のこぼれ話の後編をやるんでお前もどうだ、ってこった」 白井「原作8巻? ああ、残骸事件のときの――――って、アレはわたくしが主人公だったお話ではありませんか!? しかも『後編』!? どうして、わたくしが呼ばれませんでしたの!?」 上条「だから、一番のクライマックスシーンにお前に居てほしいってことだよ」 美琴「そ、そうよ、そうなのよ! 前回の『前編』と今回の『中編』は確かにもう終わってるけど、 一番盛り上がる『後編』に満を持して黒子に来てもらったんじゃない!!」 白井「? 何か腑に落ちないと言いますか、お姉様がわたくしに何か隠し事をしているような雰囲気を感じるのですが……」 美琴「そ、そう? 気の所為じゃないカナー」 一方「まァ、何でもいいが、とりあえず後編はこのメンバーってことなンだな?」 上条「そういうこった。んじゃ、また次回だな」 美琴(と言っても、ちょっとマズイ気もするし、一応、手を打っておいた方がいいのかな?) 白井「どうされましたお姉様?」 美琴「な、何でも無いわよ何でも! それより黒子。後編はアンタが主役なんだからちゃんとしてよね」 白井「もちろんですわお姉様! この不肖白井黒子! お姉様の唯一無二のパートーナとして、お姉様に恥をかかせませんよう、立派に主人公を務め上げてみせますの!!」 一方(なーンか、コイツ一人であの三人に匹敵するくらい騒がしくなりそうな気がするンだが……) 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/こぼれ話
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2844.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/御坂美琴の消失 第5章 「誰だテメエ?」 一方通行は面白く無さそうな顔をした。 無理もない。上条の知っている世界と違い、この世界では一方通行と上条当麻には何一つ接点はないからだ。 あの実験以外で一方通行と上条当麻が出会うことはないのだ。 「オイ、ありゃあ、お前の男か?」 上条に一度目をやってから、すぐに興味をなくして、まだ茫然と立ち尽くしている白井に声をかける。 もっとも、今の白井は完膚なきまでに打ちのめされて答えることなどできないのだが。 「はぁ……やれやれだ。で、何すンの? まさかとは思うが、その女の敵討ちでもしようってンのか?」 「…………それだけじゃねえ」 「あん?」 「白井の仇討ちってだけじゃねえ! てめえ! 八月二十一日に御坂を殺したって本当か!!」 「みさか? ああ、そういやオリジナルも『みさか』って名前だったな。で、それがどうした?」 「『どうした?』…………だと…………?」 上条の脳が一気に沸騰しそうになった。 ギュッと、爪が喰い込むほど右手を握り締めて、 「ふざけんじゃねえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」 雄叫びをあげて、上条が右手を振りかぶってダッシュ!! 「何だァ? その拳に何か肉体強化の能力でもかけてンの? くっだらねェ」 しかし、一方通行は避ける気すらなかった。 無理もない。 白井黒子のようにベクトル気流が視えるならまだしも、こんな頭に血を上らせて突撃してくるような奴が高位能力者のわけがない、としか一方通行は思わなかった。 本来であれば反射一発で終わり。 肉体強化された拳だろうが、その程度で一方通行を捉えることはできない。 あくまで『本来であれば』。 バキィッ!! 「がっ!?」 一方通行からすれば、何でもない右ストレートが自身の顔面を捉えたのだ。 その勢いのまま、バランスを崩して横に倒れ込む。 しかし即座に片膝付いて、起き上がり、 「な、何だ?」 当然、何が起こったか分からない。 驚いて、その相手を見上げるだけだ。 (俺に拳をあてた!? あり得ねエ!! 反射は切ってなかったンだぜ!!) さらに追撃をかける上条。 (チッ! 何か知らねェが、とにかくコイツの能力を見極めねェと……) ぐらっ…… 「なっ!? 今の一発で足にきてやがンのか!?」 悲鳴を上げると同時に、今度は腹部に衝撃!! 「うぐァ!! また!?」 そのまま仰向けに倒れて何度かもんどりうつ一方通行。 「ゲホゲホゲホゲホ」 四つん這いになって腹部を抑えて何度か息を吐く。 「それが『痛み』だ」 「――――!!」 見上げる一方通行のすぐ傍に上条当麻が憤怒の表情で、ツンツン頭が文字通り怒髪天を突いて佇んでいた。 「テメエは『最強』ゆえに『ケンカ』慣れしてねえ。打たれ弱い欠点がある。『能力が効かない相手』だとその弱点がもろに出てしまうんだ」 「くそが!!」 ズバリと指摘されて一方通行が怒りに任せて立ち上がる。立ち上がる時に、足を思い切り踏み込んでベクトル操作で砂利を巻き上げる!! しかし、上条はダッキングして、砂利の猛威を低姿勢でかわし、突進!! 再び右ストレートが一方通行を吹き飛ばす!! (チッ……どういう原理か知らねえが、コイツに『普通』の『ベクトル操作』は通用しねェ――――なら――――) 一方通行は前かがみに、右手を地面に付けて滑らせて、後ろ向きに吹き飛ばされながら、しかし態勢は崩さず、 そのまま、髪の影から瞳を覗かせて、 一瞬、その瞳孔が大きく見開いた!! 瞬間、上条当麻の腹部に衝撃!! 「うぐぇ…………!?」 胃の中のものがすべて逆流しそうなほど強烈なものだった。 「あァ…………痛かった…………」 すぐ傍に一方通行が無造作に立っていた。 「な、何…………?」 「倍返しだ、オラァ!!」 「くっ!」 一方通行が叫んでパンチを繰り出そうとして、しかし上条もまた迎撃のため、防御態勢を取った。 が――――!! 「がはっ!!」 次の瞬間、顔面に二発、あごに一発の激痛を感じたと思った瞬間、後方へと吹き飛ばされていた!! そのまま地面に背中を痛打!! 「テメエは三発だから本来なら六発が倍返しなんだろうが、特別サービスだ。失せろ、テメエには俺が相手する価値すらねエ」 言って、一方通行は踵を返す。 そんな一方通行の背中を、地面を舐めながら上条はぼんやりとダメージが残っているので痙攣しながら見つめていた。 (な、何だ…………いくら何でも一方通行の動き、早過ぎんだろ……? 気付いたらやられているってどんなベクトル操作だよ……俺の『幻想殺し』が通じないほどの速さってわけか?) それでも上条は立ち上がった。 ダメージが残る体を無理矢理立ち上がらせた。 「まだやンのか?」 肩越しにギラリと睨みつけてくる一方通行。 「…………」 「はン、この不感症が……今すぐ楽にしてやンよ!」 叫んで、一方通行が地を蹴った! 猛スピードで上条に突撃してくる!! (…………とりあえず、捕まえる!) 心の中だけで言って、上条は『右手』を開いた。繰り出されてきた一方通行の左ストレートを捕えて、という戦術だ。 (ふん……なるほど……その右手か……まァ、どうでもいいがな……) 一方通行が看破した。上条の唯一の武器という名の弱点を一方通行に悟られてしまったのだ。 これで、上条当麻の勝機は0となった。 がしっ! 一方通行の左が上条の右手に包み込まれる。 (掴んだ! これなら………んなっ!!) しかし、次の瞬間、上条の顔面は一方通行の『左ストレート』をまともに喰らっていた!! そのまま、地面に倒れ伏す!! 「ったく、手間取らせんじゃねェ」 吐き捨てて、一方通行は左腕をぐりぐり回してから、立ち去ろうとする。 上条は無様に地面に大の字になって横たわっていた。 もう、一方通行の言葉は耳に入っていなかった。 それ以上に、信じられないことが起こったからだ。 どんな力であっても『異能の力』であれば全て『無効』にする右手、『幻想殺し』が一方通行の『ベクトル操作』を無効化できなかったのである。 あり得ない。 これまでの経験則からいっても、物理攻撃ではない『異能の力』が上条の右手を凌駕するなど、こと科学分野においてはあり得なかったのだ。 一体、何が起こっているのかはどんなに考えても分からなかった。 (…………そういや、さっき『レベル6』って言ってたな…………けど『レベル6』つったって『異能の力』のはずだ…………なのに何で…………) 上条には分からない。 (レベル6…………絶対能力…………だからって、この右手が通じないなんて………レベル6ってのはそこまで凄いのか……いや、まさか…………) どう考えても分からない。 答えはまったく見えない。 いったい、一方通行は『何』を『ベクトル操作』したのかがまったく分からない。 いったい、『右手』が作用しない『ベクトル操作』とは何なのか、まったく解らない。 (……待てよ……『レベル6』だって…………) どれだけ考えても『幻想殺し』が通じなかった理由が分からない上条の脳が、 どれだけ考えても想像つかない一方通行の『ベクトル操作』が、 まったく別の方向にシフトした。 今の今まで。 御坂美琴を殺した一方通行。 レベル5の白井黒子の力。 突然、起こったバトルで頭に血が上りまくって完全に忘却の彼方に追いやっていった『この世界』のことにシフトしたのだ。 しかも、これまでまったく見えなかった突破口を伴って。 これはもしかしたら、もやもやしていた気分を暴れたことですっきりさせることができたからかもしれない。 ウジウジ悩んでいたことが暴れたことで吹き飛んだからかもしれない。 結果、脳の奥底に眠っていた記憶が呼び起こされた。 上条当麻は見つけた。 上条当麻は思い出した。 上条の知る世界の方が『真実』であることを証明できる方法を。 今、この世界は何者かによって歪められたものだという決定的な証拠を。 しかし、そのためには白井黒子ではなく、この一方通行を信じさせなければならなかったのだ。 キーパーソンは御坂美琴の一番近くにいた白井黒子ではなく、 『八月二十一日』という日に『御坂美琴と関わらざるを得なかった』一方通行こそがキーパーソンだったのだ。 なぜなら一方通行だけが、変わってしまったこの世界の中で唯一人、上条当麻が知る世界と同じ過去を、正確には、同じ情報を持っている男だからだ。 上条は立ちあがって力強く吼えた。 「一方通行!!」 「何だ? まだ何か用か?」 一方通行が面倒臭そうに肩越しに振り返る。 もう、俺と関わるな、まだ俺の周りをうろちょろするつもりなら容赦しねエ―――― そう言っている背筋がぞっとするような視線に射抜かれたが、上条は怯まない。 すべての異能の力を無力化する『幻想殺し』でさえ通じなかった『絶対能力者』の『最後通告』だろうと怯むわけにはいかない。 「量産異能者・妹達におけるレベル5・一方通行の絶対能力への進化法!!」 上条が告げた言葉に一方通行は先ほどまでの無関心な表情が一変してバッと振り向いた。 いや、振り向かざるを得なかった。 「学園都市には七人のレベル5がいるが、樹形図の設計者を用いて予測演算した結果、まだ見ぬレベル6に到達できる者は一名のみで、その個体を『一方通行』と言う!!」 この実験のことを知っているのは、今は当事者である一方通行だけだ。この実験を知った御坂美琴はすでに殺されてしまっている。 そして、この実験に関わった研究者及び研究施設、書類のすべては実験終了後、何者かが闇に葬った。 「――――実戦における能力の使用が成長を促す!!」 理由は言うまでも無い。 口封じ。 実験の成功を外に、もっと言えば魔術サイドに漏れるようなことがあれば、それは科学サイドと魔術サイドの全面戦争に突入することを意味する。 「一二八種類の戦場を用意し、一二八回超電磁砲を殺害すれば、一方通行はレベル6へと進化することが判明した!!」 遠い未来ならそれも良いだろう。しかし、今はまだ科学サイドが絶対的有利ではなく、むしろ互角、共倒れになるかもしれない現状では戦争を仕掛けるべきではないのだ。 「だが、レベル5である超電磁砲を一二八人も用意することはできない!! そこで超電磁砲の量産計画『妹達』に着目!!」 レベル5は魔術サイドの、無類の力を誇る『聖人』に匹敵すると言われている。 それが誇張かどうかは何とも言えないが、仮に匹敵するとしても、学園都市側のレベル5は七人であり、魔術サイドの聖人の数、二十人には遠く及ばない。 科学サイドはその穴埋めとして、暗闇の五月計画や5ナンバーズという機械の力で補おうとしたが、それでも単純に数の上でも科学サイドは二三〇万人であり、億の単位を誇る魔術サイドにはまったく届かない。 「妹達を用いて、再演算したところ、二万種類の戦場を用意して、二万人の妹達を殺害することで同じ結果が得られることが分かった!!」 しかし、レベル6の誕生は科学サイドを圧倒的に有利にする駒となる。ただ、残念ながら現在いるレベル6は一方通行ただ一人。しかも従順に言うことを聞くわけでもなく、また聞かせるための手段も無い今はまだ、魔術サイドに知られるわけにはいかなかった。 だからこそ、実験に関わったすべてを闇に葬ったのである。 上条の口上が終了し、この場に沈黙が訪れる。 重苦しい沈黙が。 「か、上条さん……あなたは何を…………?」 白井が戸惑いながら問いかけた瞬間、 「――――!!」 上条は力いっぱい胸倉を掴まれた。 上条は力いっぱいねじり上げられた。 それでも上条は怯まない。その相手を真っ直ぐ見つめる真摯で厳しい視線は崩さない。 相手はもちろん、 「テメエ……今の話、誰から聞いた? いや、もう俺以外知ってる奴がいるわけがねエ…………仮に知っているとしたらそれは統括理事会の奴らだけだ…………しかし奴らなら、いくら身内にだろうと漏らすわけがねエ…………なら、テメエはいったい…………」 一方通行が睨んでいた。 穿られたくない過去を穿られた怒りの瞳で睨みつけていた。 それを上条は真正面から受け止めて、 「御坂の部屋でレポートを見つけた」 上条は毅然と答えた。 「八月二十一日の夜、俺は御坂の部屋を訪ねた。そこで見つけた」 「なン、だと…………?」 「あいつは最強の電撃使いで能力を応用した使い方に関してはレベル5の中でもピカ一だ。その力が一般用端末からでも学園都市トップシークレット情報を引き出したんだろう」 「何を馬鹿なことを! あなたは八月二十一日の夜にわたくしどもの部屋を訪ねてなどいないではありませんか!?」 今度は白井が声を上げる番だった。あまりに唐突で、しかも信じられないような話を聞かされて、思わず『この世界の事実』を叫んでしまったのだ。 上条は白井にゆっくり視線を移して、 「なら確かめてみないか? 俺の言っていることが正しいかどうか。さっき、お前、言ったよな。俺が今の現実を否定しているようだって。そうさ。俺は今の現実を信じられないでいる。俺が知っている現実は、俺がいて、インデックスがいて、お前も御坂妹も一方通行も、土御門、青髪ピアス、吹寄、姫神たちクラスメイトも、小萌先生も。 そして――――その中には御坂美琴だっている!」 「何ですって!?」 「それが俺の知っている世界だ! この世界は何者かによって歪められた偽りの世界だ!!」 上条の真剣極まる咆哮を聞いて、 「な、何を仰いますか………お姉さまはそのようなレポートなど持っていませんわ…………もし、そんなものがありましたらわたくしがとっくに気付いていますわよ…………一度、お姉さまの荷物をすべて整理したのですから…………タンスの中から机の中まで全て…………」 上条から目を逸らし、伏せ目になって呟く白井。 「ぬいぐるみの中は?」 「え…………?」 「お前らの部屋にあった、御坂のでかいくまのぬいぐるみだ。その中は見たのか?」 「そ、それは…………」 「見たのか見ていないのか」 「み、見ておりませんわ! だって、アレは単なるぬいぐるみですもの…………そんなものの中に…………って、ハッ!」 白井は思い出した。 あの当時、美琴が殺されてしまったあの時分、美琴がやけにあのぬいぐるみに構っていたことを。 その時は、単に何か深い悩みがあって、何かにすがりたいがための行動としか思わなかったのだが―――― 「だったら行ってみようぜ。あのぬいぐるみの中に俺が言ったモノが入っていれば、俺の言ったことが正しい証明になる。俺の知っている世界だと、八月二十一日に俺が持ち出したんだが、この世界なら、お前が知らない以上、御坂以外に誰も知っているわけがない。まだあるはずだ」 上条のどこか自信に溢れた言葉を聞いて、 「わ、分かりましたわ…………参りましょう…………」 それでもまだ白井黒子の声はまだ震えていた。 「オイ…………今の話、本当か…………?」 「そうか。お前も来るか?」 「上条さん!?」 「仕方ないだろ。変わってしまった世界の中で俺と同じことを知っている唯一の奴なんだ。コイツだって真偽を確かめたいに決まってんだろ」 「まァ、な…………」 「むぅ…………仕方ありませんわ…………それでは参りましょう…………」 言って、踵を返す白井。 その後ろを上条当麻と一方通行は無言で付いていく。 「一方通行!? とミサカは驚嘆します!!」 珍しく、本当に珍しく、御坂妹は自室のドアを開けて、そこにいる人物を見とめて、叫び声を上げた。 「オイ…………クローンがいるなんざ聞いてなかったんだが…………?」 「お教えする義務はございませんわ」 「…………すまん、そういやそうだった」 こちらも珍しく顔を引きつらせて声を漏らす一方通行。 どうやらレベル6への畏怖は先ほどの上条の衝撃の発言に喰われてしまったらしい。一方通行への対応が素に戻っていた。 もっとも、白井黒子はそんなことはどうでも良くて。逆に、上条は御坂妹を気遣うのを忘れてしまっていて。 「さて、上条さん。お望みのものはそちらですわ」 部屋の中央まで進んだところで、白井は部屋の片隅に鎮座させてある大きなクマのぬいぐるみを指差した。 頭を垂れて、どこか無造作に足を投げ出して、糸の切れた人形のように座っている姿が愛らしさとともに侘しさを醸し出していた。 「一応、聞いておくが、こいつは一回でもこの部屋から出たことはないよな?」 「さすがにわたくしや妹さんがいないときは分かりませんが、他人の部屋に侵入できるほど、ここのセキュリティは甘くありませんし大丈夫ですの」 「よし、なら…………」 上条がクマのぬいぐるみを持って、それをベッドの上に置く。 どちらのベッドかはとりあえずどうでもいい。 単に見やすい高さに置いた、ただそれだけだ。 「間近で見ると結構ボロボロですね、でも暖かさを感じます、とミサカはお姉さまの遺品に切なる思いを抱きます」 「小さい頃から持っていて、学園都市に来る時に唯一手放せなかったもの、と仰っておられましたわ」 「だったら、クローンにくれてやったらどうだ? 同じ遺伝子ならコイツも気にいるんじゃねエの?」 「あなたにしては良いアイディアですわね」 「では、本日からミサカは、このクマに染みついたお姉さまのぬくもりを感じて寝ることにします、とミサカはどこか高揚して喜びを表します」 などと、後ろでそんな会話を交わしている3人の声を聞きながら、上条はゴツイ南京錠が付いている太い首輪を指差して、 「なあ、一方通行、コイツを壊せないか?」 「あン? いいのか? オリジナルの遺品なンだろ?」 「首輪くらいなら構いません、とミサカはすでに己の所有物のように扱います。ですが、他の部分は決して傷つけないよう配慮してください、とミサカはあなたのスペックの高さを危惧します」 「だ、そうだ」 「…………まぁ、何でもいいが…………」 どこか釈然としない態度を見せて、一方通行は首輪だけを吹き飛ばした。 露わになったぬいぐるみの首には横一文字にファスナーが走っていた。 しかも、そのファスナーは一部が開いており、そこから『用紙』の角が顔を覗かせていた。 瞬間、先ほどまでの呑気な雰囲気もどこへやら。 部屋の中が暗転して一閃の戦慄が走り、場の空気は凍りついた。 そんな中、上条は静かに、やや震える手を伸ばす。 一方通行と白井黒子はその後ろで息を飲んだ。 上条の手が用紙に触れる。摘まみ引っ張り出して、最初のタイトルだけに目をやって、 無言で白井と一方通行に差し出した。 受け取ったのは白井黒子。 その白井を中心に、どこか緊張の面持ちな一方通行と、何事かと覗きこむ御坂妹。 はたしてそこに書いてあった中身は―――― 「どうやら…………上条さんが仰っていた話が真実のようですわね…………」 読み終えて。 一度、この愕然を落ち着かせるために一息ついてから。 まっすぐ上条当麻を見据えて。 まだ信じられないような表情を浮かべてはいたが。 それでも、白井黒子は今、この世界が歪められた世界であることを肯定した。 それは一方通行も同じだった。 ただ一人、まだ何も知らされていない御坂妹。 「いったい何のお話ですか? とミサカはこのレポートの存在に戦慄を感じながらお三方に問いかけます」 普段は感情に乏しい彼女でさえも、明らかに表情を強張らせて、そう問いかけるしかできなかった。 【次回予告】 白井黒子「上条さんの話からしますと何もかもが変わってしまったのは八月二十一日からのようですの」 上条当麻「本来の史実であれば俺が一方通行を倒して御坂は死なずに済んだ。あの場に『俺』がいなかったなら、俺が代わりに行くしかねえ」 インデックス「過去に遡る魔術? あるよ」 御坂妹「今、この世界には一万人近くのミサカが存在してミサカネットワークで繋がっています、とミサカは機密事項を暴露します」 インデックス「でも、とうまの右手をどうやって封じるの?」 一方通行「その右手が作用すンのが『異能の力』に対してであって、『自然法則の力』には作用しねえならやりようはある。一か八かだがな」 白井黒子「わたくしも行きますわ。あの当時のわたくしではお姉さまのお力になれませんでしたが、今のわたくしなら」 一方通行「俺が『レベル6』に目覚める前に倒せ」 御坂妹「必ず、お姉さまをお救いください、とミサカは切実に訴えます。また、お姉さまとアイスを食べて、紅茶を飲んで、子猫を愛でたいと、ミサカは…………」 一方通行「必ず、世界を元に戻せ。でねえと承知しねエぜ……」 インデックス「とうま……必ず『帰って来て』ね……」 上条当麻「待ってろ御坂。必ず、俺がもう一度助け出してやる」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/御坂美琴の消失
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2173.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind 第2話 誤解 ここは第7学区にある、とある公園。 公園、といっても、普段人が足を運ぶことは以外と少なく、ツンツン頭の少年が通ったり、常盤台の制服を着た少女が自販機にキックしに来るくらいだ。 そんな公園は今日も人気は少なく、今公園内にいるのは、地面に転がっている青髪の少年と、ベンチに座り、息を整える不幸少年だけだ。 「い、痛ってえ…青ピの野郎思い切り殴りやがって…」 上条は頬をさすり、側にうつぶせの状態で倒れている青ピを見る。 学校からここまでほぼ全力で走り疲れていたため、なんとか相打ちに持ちこめたものの、かなり怖かった。 また、相打ちなのに上条だけ意識があるのは、やはり打たれ強いからだろうか。 「それにしても…いったい何がどうなってんだ……」 息がようやく調ったところで、上条は呟いた。 いろいろとおかしすぎる。 吹寄の態度も小萌先生の態度も、普段じゃ絶対にありえない。 「マジで何が起こってるんだ…?まさか魔術………やっぱり魔術か。」 上条が第一に考えたのは、夏休みの『御使堕し』や、ヴェントの『天罰術式』のような広範囲魔術が発動しているのではないか、ということだった。 今回は『天罰術式』のように攻撃的なものではないため、『御使堕し』のような偶然発動された魔術の可能性もある。 だとすれば、どうやって解決するべきか。 と、上条が解決策を本格的に考え始めていたところへ 「魔術じゃなくて、これのせいじゃないかにゃー?」 「え?土御門?」 いつのまにか土御門がすぐ側に立っていた。 彼の手には、上条が飲んだ『あの』増強薬が握られている。 「え……いやいやそりゃねーだろ?また『御使堕し』の時みたいに、広範囲魔術が発動したんじゃないのか?」 「残念ながら今、学園都市内で魔術は使われていないぜい。」 「え、マジ?」 「ああマジぜよ。まあ間違いなくこの『増強剤』が原因だろうな。」 吹寄と小萌がおかしくなった原因は、魔術ではなく土御門の薬。 ありえなくもないが、上条には疑問があった。 「いや待てよ。もしその薬が原因だとしたら、朝から吹寄と小萌先生はおかしくなってたはずだろ?なのに変化があったのは、3限目が終わった後からだったぞ?」 「…朝はまだ薬が効ききってなかったからじゃないか?」 「効ききってなかった?」 「ああ。上やん、3限目が終わった後に体調が治っただろ?それは多分、薬が完全に効いたからだと思うんだにゃー。」 「………」 そう言われてみると、つじつまが合わないことはない。 だが本当なのだろうか、と考える上条に対し、土御門が言う。 「だから、この薬が上やんの『フラグ体質』を増強しちまったんだにゃー。だから吹寄も小萌先生も、おかしくなったはずぜよ。」 「『フラグ体質』が強化された?それってどういうことだ?」 「……はぁ…」 上条の言葉に土御門は大きなため息をついた。 『これだから鈍感は困る』とか思っていることを、上条は知らない。 そして土御門は上条にとんでもない事実を言い放つ。 「つまりだな、周りにいる女子はみんな、上やんのことを好きになっちまうってことだにゃー。」 「な、なんやってぇ!!!」 「うおっ!」 土御門の台詞に反応したのは、上条ではなく青髪ピアスだった。 上条と相打ちになり地面に転がっていたはずだったが、いつの間にか2人の前に立っていた。 しかも何やらやたら興奮している。 「つ、つ、つまりそれを飲めば、ボクも上やんみたいにモテモテになれるんやな!!」 「いやそれは違う「ツッチー!!早くそれボクによこすんや!!」にゃー……」 土御門の話を全く聞かずに青ピは小瓶を奪い取り、迷うこと無く怪しい液体を一気に飲み干した。 「「あ……」」 止める間もなかった。 青ピは一体どうなるのか、2人は呆然と見つめていると 「んん……?おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 青ピは急に大声を発した。 ビビる上条と、唖然とする土御門。 そして何か覚醒したっぽい青ピは、両手をわなわなさせ、自らの身体に何か変化を感じているようだ。 「こ、こ、こ、これは……」 「「これは…?」」 上条と土御門はおそるおそる尋ねた。 すると青ピは 「で、できる!今ならなんでもできる気がするで!!待っとるんや女の子たちぃ ぃぃぃぃぃいいいいい!!」 「え、ちょっと待て……って、はやっ!!…もうあんなとことまで…」 上条が静止しようとするも、公園から勢い良く走り出していった青ピは、もうすでに遥か彼方に小さな点として見えるくらいだった。 最早わけがわからない上条は、全ての元凶である土御門に尋ねることしかできない。 「おい土御門……何がどうなってんだ?」 「……多分青ピは上やんと違って『変態』が増強されてしまったんだにゃー。」 「変態が増強って…ていうか、なんで俺と違ってすぐ効果が出たんだ?」 「ああ。それなら上やんが苦しんでるのを見て、なんとなく中身を薄めておいたから効きが早かったんだと思うんだにゃー。……まあアンチスキルもいることだし青ピは放っておくぜよ。」 「放っとくな!!お前の責任なんだから今すぐ追えよ!!」 「いやー、俺は『増強剤』について詳しく調べるため、一度寮に戻らなきゃいけないにゃー。だから追うなら上やんが追ってくれ。」 完全にめんどくさいことを押しつけている。 だが、薬の詳細は上条も知りたいので、ここは了承するしかない。 「わかったよ…俺が探す。でもその前に一つ聞きたいことがあるんだけど。」 「ん?なんだ?」 「お前がさっき言った『女子がみんな俺のことを好きになる』っていうのが本当なら、なんで吹寄と小萌先生にだけがあんな態度になったんだ?」 最もな疑問である。 上条に対しての態度が変わったのはあの2人だけで、姫神もクラスや学校内の女子も、変化はなかった。 土御門は手を口に当て、少しだけ考える素振りを見せた後 「それは……わからないぜよ。とりあえず俺は寮に戻っていろいろ調べるから、それまで青ピでも探して待ってるんだにゃー。」 そう言い残して、土御門は公園から去っていった。 残された上条は“ああ、俺って本当に不幸なんだなー。”とか思い、深いため息をついた。 「…しょうがない、青ピでも探す……ん?」 ここで上条はあることに気づいた。 暴走した青ピは街中にいる女の子の元へ向かったはずだ。 そして今日は学園都市中の学校が3限目で授業が終わるため、街には学校を終え買い物をしたり友達と遊ぶ学生たちで溢れているのは間違いない。 つまりそれは―――――― 「ま、ま、ま、マズい!!!御坂が危ない!!御坂が青ピに襲われる!!」 学校を終え、おそらく街にいるであろう美琴にも危害が及ぶ可能性があるということ。 それを思いついた上条の顔は急激に青ざめた。 (ヤバい、それはヤバいぞ。御坂はあれだけ可愛いんだから、青ピの標的にされる可能性は高いよな。御坂が強いのはわかってるけど、万が一覚醒した青ピに何かされたら……) もうお分かりかと思うがこの上条、美琴のことが大好きであった。 これは『増強剤』の影響ではない。 ここ数ヶ月の間に彼女の可愛さに惚れ込み、本気で付き合いたいと思っている。 もっと詳しくどれくらい好きかというと、好き過ぎるあまり、美琴以外の女子の遊んだり、2人きりになることを嫌うくらいだ。 そして、この『女子と2人きりになることを嫌う』というのが、吹寄や小萌の家に行くことがきできない理由であり、『増強剤』を喜んで飲んだのも、美琴にモテたいという一心からであった。 ちなみに上条が美琴を好きだという事実は誰も知らない。情報通である土御門ですら知らないのだ。 「あ、青ピ!青ピを探さなねーと!えーとアイツどっちに走って行ったっけ?こっちの方向だったような…いや待て、御坂を探した方がいいんじゃないか?そうだ!御坂をメインに探しつつ、青ピも探そう!!」 予定変更。 青ピを探すより、大好きな美琴を探した方がテンションが上がる。 よって美琴を見つけるため、街へ向かって走り出そうとしたのだが 「そうと決まれば早速……って、電話すればいいじゃん。」 これぞ文明の力。 電話をするということは、美琴と確実に会うことができる上、先行して声も聞ける。 上条は意気揚々とポケットから携帯電話を取り出した。 「…ん?……で、電池が切れてる…どんだけ俺不幸なんだよ…」 作戦失敗。文明の力にも弱点はあった。 結局、美琴がどこにいるかわからない状態で、探さなければならなくなってしまった。 と、思いきや 「あれ?アンタ何してんの?」 「え?」 ふいに背後から聞こえてきたのは聞いたことのある声。 上条が振り返ってみると… 「あー……結標か…」 立っていたのは美琴ではなくレベル4のテレポーター、結標淡希だ。 上半身には胸にさらしを巻くだけという、露出率の高い服装の彼女はズボンのポケットに手を入れた状態でこちらを見ている。 上条が思ったことは (…御坂だったらよかったのに……) 聞こえた声で美琴ではないことくらいわかってはいたが、落胆の色は大きい。 すると結標は上条が少し大きめのため息をついたからか詰め寄ってきた。 「ちょっとなんなのよその反応は?なんかムカついたわよ?」 「わ、悪かった悪かった!じゃ、俺御坂探さねぇといけねえから!」 これ以上この場にいると、何かめんどくさいことになりそうだったので、上条は美琴を探すために走り出す。 が、 「だから待てっての。」 「うぉう!?」 腕組みをした結標が道を塞ぐように目の前にテレポートしてきた。 「な、なんだよ……なんか用か?」 「……アイツ…ていうか御坂を探してるの?」 「え、ああ、まあな。だから俺は急いで「御坂の居場所なら知ってるわよ?」る……」 「だから案内してあげようか?」 予想外のところから助けの手が差し伸べられた。 まさに女神が降臨したと上条は思った……が (いや…ちょっと言い過ぎたな…俺の女神は御坂だけだから結標は……救世主だな。) まさに美琴バカである。 独りでにうんうんとうなずく上条に、結標が少し呆れながら声をかける。 「で?どうすんの?」 「あ、ぜひともお願いします!結標様!!」 「はいはいっと。」 こうして上条は結標と並んで歩き始めた。 美琴以外の女子と2人きりになることを嫌う上条だが、美琴に会うためなら我慢できる。 (御坂に会えるのか…ヤベ、テンション上がってきた。) 上条はわくわくしながら、街へと向かう――― ♢ ♢ ♢ 「映画だ映画だー!ってミサカはミサカは嬉しさのあまり飛び跳ねてみたりっ!!」 と、とあるマンションの室内で無邪気にはしゃぐのは、打ち止め(ラストオーダー)だ。 本当に嬉しいらしく、言葉通りソファの上でぴょんぴょんと飛び跳ねる少女に、目つきの悪い白髪の少年が言う。 「おい、部屋ン中ではしゃぐンじゃねェよ!埃が舞うだろうが!!」 彼の名は一方通行。学園都市最強の能力者であり、打ち止めの保護者であった。 この日、2人は映画を見に行く約束をしており、今まさに出かけるところだ。 喜びを抑えられない打ち止めは、 「だってもう楽しみで楽しみでしょうがないんだもん!ってミサカはミサカは嬉しいという感情を押さえきれないから全身を使って表現してみたり!!」 「わかったから少し落ち着け。じゃあ、俺らは行って来るから留守番頼むぞォ。」 と、一方通行が声をかける先にいるのは2人の女性。 “了解”と言うかのように、イスに座ったまま無言で右手を挙げたのは、芳川桔梗。相変わらずの無職である。 そしてもう一人、ソファに寝転がって雑誌を読んでいた、た少女はニヤリと笑って 「はいはーい。ミサカたちに気にせずデート楽しんできてね☆」 その台詞は悪意丸出し、もちろん番外個体(ミサカワースト)から飛び出た台詞だ。 しかし、当然ながら一方通行にデートなどという考えがあるはずもなく、“デートじゃねェよ”と、ストレートにつっこもうとしたところへ 「うん!この人とのデート楽しんでくるね!ってミサカはミs」 「だから違うって言ってンだろ!!」 一方通行は思わず叫んだ。 そしてその後もしばらくデートだ、ちげェよ、と騒ぎながらも打ち止めと一方通行は黄泉川のマンションを後にした。 ♢ ♢ ♢ 上条と結標が並んで歩くこと約15分。 「着いたわ。ここよ。」 「ここか!!」 上条が結標に連れてこられた場所は、街中に位置する大きめの広場だった。 この広場には移動式のアイスクリーム屋があり、今日は午前中に多くの学校が終わるためか、店にも広場にも、高校生や中学生による多くの人だかりができている。 だが… 「……御坂いないじゃん。」 肝心の美琴が見当たらない。 公園内を一通り探してみたのだが、目に映るのはただの学生ばかり。 どこをどう探しても、やはり美琴が見つかることは無かった。 「いないってことは、移動したのか……くっそどこ行ったんだよ…早くしないと御坂の貞操が危ないってのに…」 上条はもちろん美琴がレベル5だということを忘れてはいない。 普通に考えれば青ピなど秒札できる。 だがもし、万が一暴走した青ピによって何かされたら、それを考えるといてもたってもいられなくなる。 (とにかく第7学区中を探すか。御坂が真っすぐ寮に帰ってる可能性は低しい、コンビニとかにいるのか?) 携帯の電池が切れている今、とにかく美琴がいそうな場所を虱潰しに探すしかない。 「ありがとな結標、こっからは俺1人で探す「はいアイス。」から……?」 結標は上条の言葉を遮ると同時に、バニラ味のアイスクリームを手渡してきた。 どうやら上条が美琴を探している間に買ってきたようだ。 とりあえず受け取ったことは受け取ったのだが、 「え、いや、なんで……?」 「なんでってアイスクリーム屋に来たんだから買ったんだけど……何?私が買ったアイスが食べられないって言うの?」 「いやそういうわけじゃ「あー!!!」ない……」 また上条の言葉は遮られた。 誰だよ大声出して、などと上条は思わない。 なぜならば、上条はこの声が誰の声か知っているのだから。 「御坂!!」 今、一番会いたい相手、御坂美琴だ。 上条は喜びを露にしながら振り返ったのだが 「……あれ?」 急に上条の顔からは笑顔が消え、自然と一歩後ずさった。 振り返ったところに立っているのは、茶色い髪の毛、ヘアピンで止められた前髪、常盤台の制服、ちょっぴり漏れている電気、間違いなく美琴だ。 にもかかわらず、上条が後ずさったのは 「あの……なんで機嫌悪そうなんでせうか…?」 「はぁ?機嫌?別に悪くないわよ?」 と、美琴は言うもののあきらかに悪い。だって帯電しているし。 額の辺りからパチパチと電気が漏れだしている。 しかし上条には美琴が怒っている原因が全くわからない。 (な、なんで?やっぱり俺が何かしたのか?でも……名前呼んで振り返っただけだよな…) 上条が少しビビり、一歩後ずさると美琴は怒ったような口調で 「それでアンタ、なんでこんなところにいるわけ?しかも結標なんかと2人で。」 ここで1つ説明しておこう。上条は美琴のことが大好きだ。好きで好きで仕方がない。 いずれは結婚して子どもは3人くらいほしいと思っている。 だが、上条は人を好きになることをになっても、鈍感さは一切治っていないのだ。 普通なら美琴が機嫌が悪い原因は、『結標と一緒にいることに嫉妬しているから』、とわかるはずなのだが、鈍感な上条にわかるわけもなく、美琴に結標と一緒にいる理由を説明しようとした。 「ああ、結標と一緒にいるのは「デートだからよ。」……そうそうデート……はい?」 上条の言葉を遮ったのは結標。 『御坂を一緒に探してもらってたんだ。』と言うつもりが、結標によって言い換えられたのだ。 それを聞いた美琴は驚愕の表情を見せている。 「はぁ!?え、え?何?どういうこと?デートってアンタ達……付き合ってたの……?」 美琴の顔色はどんどん悪くなり、先ほどまでの元気がウソのように大人しくなってしまった。 そんな美琴を見た上条の顔も青くなる。 「いや違う!誤解だ誤解!!おい結標、なんでそんなこと言い出すんだ……あ」 慌てて誤解を解こうとしている途中に上条は思い出した、『あの』薬のことを。 今まで結標に何の変化も見られなかったので気にしていなかったが、よくよく考えてみれば、結標も『増強剤』の影響を受けている可能性が十分にあるのだ。 (まさか結標もあの薬の影響で俺に惚れて……ってそれはともかくまずは誤解を解かねーと。) 影響されているなら、結標の状態はヤバい。 しかしそれ以上に美琴に『結標と付き合っている』と誤解されているほうがヤバいのだ。 上条は大慌てで美琴の誤解を解こうとしたのだが、結標がそれを許さなかった。 「そう付き合ってんのよ!だからアンタはとっとと消えときなさい。」 そう言って結標は、魂が抜けたかのように呆然と立ち尽くしている美琴に近づき、肩に手を置いたかと思うと、 「じゃあね。もう私たちの邪魔しないでくれる?」 「あ―――」 美琴の肩に手を置き、能力を使いどこかに飛ばしてしまった。 上条も右手を伸ばし、止めようとしたものの、全く間に合わなかった。 「御坂…ッ!……これはまずいんじゃ……」 非常事態発生。 美琴にあらぬ誤解を招いてしまった。 今結標は美琴を飛ばす前に、はっきりと『付き合っている』と美琴に告げていた。 ということは、結標と付き合っていると美琴に勘違いされたことは間違いない。 「やっべ……早く御坂を探して誤解を解かねーと……」 今までは青ピから守るために探していたが、今度は別の理由で美琴を探さなくてはならなくなった。 とにかく一刻も早く見つけ出し、誤解を解きたい上条なのだが 「どこに飛ばされたんだろ…」 美琴が飛ばされた場所がわからない。 近くなのか、それとも遠くなのか、それがわかるのは美琴をテレポートさせた本人である結標のみ。 ということは、聞くしか無い。 「あのー…結標さん。」 「何?あ、これからどこへ行くかの相談?私としてはまず買い物に行きたいんだけど。」 「いや、そうじゃなくてだな。御坂をどこに飛ばしたのか聞こうと思って。」 この時上条は気づいていなかった。 『結標に美琴の場所を尋ねる』という行動が、激しく間違った行動だということを。 「あ、あれ?結標…?なんか……怒ってる?」 目の前の結標から黒いオーラが見える。 表情からは笑顔が消え、眉間にしわが寄っている。 「あ、あはは……じゃあ上条さんはもう行くから。ま、またな!!」 上条は逃げ出した。 ヤバい。 絶対ヤバい。 もう間違いなく、結標は自分対して怒りの感情を持っている。 このままだと何をされるかわからないと考えた上条は、多くの学生の間をすり抜け広場を飛び出した。 「やっべー…絶対結標怒ってたよ…でもなんで怒ってたんだ?」 本当に理由がわからない。 自分の行動に問題があったのだ、それとも台詞だろうか。 理由を考えようとするも、走りながらではまともに考えることができないし、今はそれどころではない。 とにかく美琴を探し出し、誤解を解かなければならない。 「よし、結標は追いかけてきてないみたいだし……このまま探すか。」 結標から離れることに成功した上条は、街中を走る足を止めることなく、美琴を探し始めた。 しかし忘れてはならない。 結標は学園都市の中で、最も優れたの『テレポーター』だということを。 「ん…?」 走っている上条は背後に何かの気配を感じ、サッと後ろを振り返ると 「うおっ!結標!?」 明らかに今までとは違う、怒気を丸出しにした表情の結標が、走る上条のすぐ後ろへテレポートを繰り返し追いかけてきていた。 そして結標は叫ぶ。 「アンタね…私から離れられると思ってんの!!?」 「ええ!?て、ていうかなんでキレてるんだよ!!」 だがその答えは結標から返ってはこなかった。 結標は走る上条の後ろへ、ただひたすらテレポートを繰り返す。 周りには多くの人がいるのだが、そんなことおかまい無しだ。 こうして上条と結標との奇妙なペアで、壮絶なる追いかけっこが始まってしまった――― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2001.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 4日目 上条編 日曜日の朝6時である。 一般的な学生なら二度寝する時間帯だが、上条はコタツに入りながら宿題をしている。 本来なら昨日からやっていたはずなのだが、いろいろあってそれどころではなかった。 ていうか、今も頭に中はそれどころではないのだが、さすがに真っ白な宿題を提出するわけにはいかない。 小萌先生に泣かれてしまう。 そんなわけで宿題をやろうとする意志はあるのだが、やはり昨日の事を思い出してなかなか作業がはかどらない。 (美琴だって女の子だし…やっぱりアレはマズかったよな~……) 溜息をつき、コーヒーでも飲もうかとコタツから出たとき、眠り姫が目を覚ました。 「とうま、お腹すいたかも。」 彼女の朝の挨拶は「おはよう」ではない。「お腹すいた」である。 今日は朝飯を作るのが面倒だったので、おかずはごはんですよだけだ。ビンの蓋を開ければそれでいい。 だがご飯のほうは炊けるまであと10分はかかる。 「とうま、ご飯はまだなのかな?」 「あー…悟飯はアレだ。ピッコロさんと修行中でまだ時間がかかる。」 「もう!早くしないとサイヤ人が攻めて来ちゃうんだよ!?」 中身の無い会話をしつつ、インスタントコーヒーを濃い目で淹れる上条。彼曰く、ゴドーブレンドの完成だそうだ。 インデックスはコタツの上にばら撒かれたプリントや問題集に目を向ける。 「と、とうまがお勉強してる! これは悪い事がおきる前触れかも!! きっとこれから核戦争が起きて文明が滅んで、世紀末覇者が支配する荒廃した世界になっちゃうんだよ!!」 「失礼なヤツだな君は……」 「でもしゅくだいは昨日やるってとうま言ってたよね。」 さすがは完全記憶能力者。余計な事まで覚えていやがる。 だが言えない。「実は美琴と遊んでて宿題に手がつきませんでした~」などとは言えない。 そんな事言ったら頭をガブガブを噛み砕かれる。万事屋さんとこの定春くんだって最近はあまり噛まなくなったというのに。 「そ、そういえば昨日は風斬とどこ行ってたんだ!?」 上条は強引に話題を変えた。 「あのね!あのね!昨日はひょうかとね!ふれんどぱーくって所に行ったんだよ! なんかね!すごくね!色んな機械がいっぱいあってね!ぷりくらもね!いっぱい撮ったんだよ!」 よほど楽しかったのだろう。興奮しすぎて喋り方が子供っぽくなっている。 かわいいなこの子。 「へー。お前達もあそこにいたのか。」 「……お前達も? 『も』ってどういうことなのかな……」 ヤバイ!と思ったときには後の祭りであった。 インデックスの歯がギラリと光る。 「もしかしてとうまもあそこにいたのかな……? でもしゅくだいを放り出してまでとうま一人で行くとは考えにくいんだよ…… 誰かと一緒だったのかな……? ひょっとして女の子なのかな……?」 コロンボや古畑のようにネチネチと攻めてくるインデックス。 上条はあからさまに目を泳がせる。 「い! いやいや!! 上条さんにはナンノコトヤラワカリマセンガ!?」 「とうま……正直に言えば許してあげるんだよ?」 「…本当に? マジで? 神に誓って噛み付かない?」 「私は敬虔な十字教徒なんだよ? さすがに神に誓ったら嘘はつけないかも。」 「そ…そっか……あー、まぁなんつーか…昨日は美琴と一緒にあそこに行ってたんだ。」 「へー。どおりで気前よく五千円もくれると思ったんだよ。 短髪と遊ぶためには私は邪魔だったわけなんだね。 しかも何気に『みこと』って呼び捨てにしてるし……ホントヨカッタネーとうまー。」 「ア、アレ? ちょっと待てインデックス! どうして口を大きく開けているのでせうか!?」 「それはね、今からとうまに噛み付くためなんだよ?」 「おかしいおかしい!! 神に誓って許してくれるんじゃなかったのか!!?」 「うん。 でもそれはとうまが嘘をついたことに対して許しただけであって、 黙って短髪と遊びに行ったことは許してないんだよ?」 「なんだよそれ!! 屁理屈じゃねぇか!!」 「と~う~ま~~!!」 「ギャー!! 不幸だーーー!!!」 朝っぱらから騒がしい二人である。ご飯もう炊けてるよ? 「とうまのバカ!」と言い残し、インデックスは出て行った。 ちなみに、朝ごはんはしっかり食べていった。おかわりも3回した。ごはんですよの力は偉大である。 一瞬、追いかけたほうが良いのかとは思ったが、どうせ行く宛など小萌先生の所しかないので、放っておくことにした。 それより問題は宿題である。 あまりにもはかどらないため、上条は助っ人を呼ぶことにした。 「こんなときドラえもんでもいたらなぁ~」と思うのは日本人なら仕方ないだろう。 真っ先に思い浮かんだのは御坂だ。 彼女はこういうときなぜかよく勉強を見てくれる。 そしてなぜかよく目が合う。ついでになぜかよく顔が真っ赤になる。 ちなみにインデックスのことを話すとなぜか途端に不機嫌になる。 まぁそんなわけでいつものように御坂を呼びたい所だが、昨日の今日でそれは無理だろう。 次に思い浮かんだのは土御門と青髪である。 だが即座に頭から消した。アイツ達から学ぶことなど何も無い。 と、そこで土御門でふと思い出した。 ヤツも例の現場を目撃したはずだ。 それにしてはお隣が静かすぎやしないだろうか……? 不気味である。しかし確認しに行けば、自らからかわれに行くようなものだ。 ここはそっとしておくことにした。 これが嵐の前の静けさだと分かるのは後のことだ。 しかしそうなると助っ人は誰を呼ぼうか。やはり姫神あたりだろうか、とケータイをいじる。 なんとなくフォルダ内のア行から見ていく上条。 すると真っ先に出てきた名前は「一方通行」だった。 (いやいや、アイツはないだろう…たしかに頭はいいだろうけど、こんなくだらないことで呼び出したら、 つぶれたトマトのでき上がり!ほひ~ほひ~ってなっちまう。 上条さんは愉快なオブジェにはされたくありませんのことよ!) そう思い下へスクロールしようとした瞬間、昨日の一方通行の言葉を思い出した。 (そういえば何かあったらいつでも言えって言ってたな…イチかバチかけてみるか……?) 生きるか死ぬかの問題を、イチかバチかのギャンブルで決めるなよ。賭博黙示録じゃないんだから。 結局、一方通行にかけてみた。ざわ…ざわ… だが3回コールした後に出てきたのは、 『ハイハ~イ! こちらスネーク、応答願いま~す! キャハ!!』 明らかに一方通行ではなかった。 「あ、あれ? えっと…誰? これ一方通行のケータイで合ってるよな!?」 『ミサカはミサカだよ? 第一位なら今現在、見た目10歳くらいの幼女とソープでローションプレイ中で~す!』 要約すると、打ち止めと一緒にお風呂に入って体を洗ってあげている、ということらしい。 チッ! 期待させやがって。 「あー…それじゃあ、風呂から出たら伝言頼めるか?」 『いいよ。……ていうかお宅はどちら様? 「ヒーロー」って名前なの?』 どうやら一方通行のケータイでは、上条は「ヒーロー」という名前で登録されているらしい。 なんて恥ずかしいヤツなんだ。 「いや…違うけど… そういうアナタはアレですか?美琴がスーパーキノコ食ったバージョンの…えーと… そういえばお互い自己紹介がまだだったな。俺は上条当麻。アンタは?」 『あ…えと…ミサカは番外個体……』 この電話の声の主、番外個体は上条当麻が苦手である。 ミサカネットワーク内の悪意の塊である番外個体にとって、負の感情を和らげてしまう上条はまさに天敵なのだ。 そんなことをしたら彼女の存在価値が失われてしまう。球磨川だって改心したのだから。 『あの…ご用件はなんでしょうか……』 さっきまでの変なテンションはどこへやら。番外個体は急におとなしくなる。 「ちょっと勉強教えてもらおうと思ってな。昨日会ったとき、『困ったときは力になる』的なこといってたからさ。」 『昨日って……ゲーセンみたいなところ?』 「ああ、そうだけど…なんだお前もいたのか。 俺は美琴と一緒に遊んでたんだけどな。」 『美琴ってお姉様!!?』 番外個体はまだ御坂本人に会ったことはない。 だが、やはり産みの親(?)であるお姉様には少なからず興味があるようだ。 いや、それだけではない。この男についても、ミサカネットワークを通じて、ある程度の情報が入ってきている。 (コイツとお姉様が遊びに行った!? そんなの絶対、面白い【ろくでもない】ことになったに決まってるじゃない!!) にたぁ~っと歪んだ笑みを浮かべる番外個体。藤田和日郎作品の悪役みたいな笑い方だ。 厄介な人物、四人目の誕生である。 『ねぇ! 勉強ならミサカが見てあげよっか!?』 「え……そりゃ嬉しいけど、いいのか?」 『平気平気! ミサカだって、学習装置で脳内にあらゆる情報ムリヤリぶっ込んでんだから!! 高校の勉強くらい、食ったものをケツから出すくらい普通にできるって!!』 「本当か? 因数分解とかできるか?」 『全然余裕っち! ミサカその気になれば、2桁の掛け算から人体練成の構築式まで暗算できるから!!』 「すごいのかすごくないのかよく分かんねぇよ! けど人体練成はやめとけ! 身体、持ってかれるぞ!!」 『じゃー今から行くね。一回行ったことあるから道案内もいらないし、それじゃ!』 そう言って番外固体は通話を切った。 十数分後、番外個体が寮の前で見たものは、 コンビニのビニール袋を片手に、頭にシャケの切り身を乗せた上条の姿であった。 「えっと…これはミサカがツッコむところ?」 「いや…ははは……」 実はあの後上条は、 (さすがに宿題手伝ってもらうんだから、茶菓子のひとつくらいは出さなきゃだよな……) と、思ったのだが、この家には食料を蓄えるという習慣が無い(正確に言えば人型星のカービィ【しろいあくま】が根こそぎ食べる)ため、 コンビニへ行ったのだ。 まぁそのコンビニの店員さんに、新しくフラグを建てたことは割愛しよう。本人も気付いてないし。 その帰り道、降ってきたのだ。シャケが。 シャケが好きな第四位でもこのシチュエーションは喜ばないだろう。 ちなみに、こけしや赤べこが降ってきたこともある。 不幸な彼にとってこのくらい日常である。 「まぁ入ってくれよ。散らかってっけど。」 「ねぇ、そのシャケ食べるの?」 食ってたまるか。 部屋に上がり、上条の買ってきたポッキーをポリポリつまみながら宿題を手伝う番外個体。 「……なんか意外だな。」 「何が?」 「なんつーか、電話した感じだともっとふざけてくるのかと思ったけど、マジメに教えてくれるからさ。」 「なにそれ!? 心外なんだけど!! ミサカこれでも約束は守るほうだよ!? 約束ハ大事ヨネ。」 流石でございますドロッセルお嬢様。 「気を悪くしたならすまん。すごく助かるって言いたかっただけなんだ。 ありがとうな。」 そう言ってニコッと笑う上条。その笑顔に番外個体は少しドキッとする。 だが直後に首をブンブン振った。 「ミ、ミサカはその手には乗らないから!!」 上条は例のごとく、なんのこっちゃ分からない。 (あぶないあぶない……危うくコイツの魔の手に引っかかるところだった。 そもそも恋愛感情なんて、ただのドーパミンの過剰分泌だってのに……いや、恋愛感情じゃないけどさ。) このまま上条に主導権を握られてはいろんな意味でマズイと判断し、 番外個体はここに来た本当の目的をとっとと切り出した。 「そういえば、昨日はお姉様とデートしたんでしょ?」 「デートじゃねぇよ。二人で一緒に遊んだだけだって。」 「……いや、男女二人で遊びに行けば、それはもう立派なデートだよ。」 「え!? そういうもんなの!!?」 目からウロコとはこのことだ。 へえ~とか、ガッテン!とか鳴るボタンがあったら押しまくっていただろう。 本当にコイツはデートって何だと思ってたんだ? (落ち着け!落ち着くんだ上条当麻!! ということはだ、以前インデックスや風斬と地下街に行ったときは……三人だから違うか。 イタリア旅行はどうだ?……あれも途中からインデックスがはぐれちまったからノーカンだよな。 罰ゲームんときは……まぁ罰ゲームだしな。 てことは、つまり昨日のアレが俺にとっての初デートぉぉおおーーーー!!?) 「は…はは……そんな記念すべき日に俺は……」 なにやら思い出し落ち込みしている上条。 番外個体の目がキラリと光る。 「ナニナニ!? 何か落ち込むようなことがあったの!?」 「あー…実はさ……」 上条は昨日の出来事を話した。 「え~? それだけ~?」 「それだけって!! やっちまったんだぞ!?」 「どうせやっちゃうなら一夜限りの過ちとか、 もっとドロドロでヌレヌレでエロエロな展開じゃないとミサカつまんな~い。 今時、小学生でももっと進んでるよ? …まぁ学習装置からの情報だけど。」 「余計な情報まで教えんなよ学習装置!!」 「少なくとも、責任とって付き合うくらいしろよ根性なし。」 「……そういうことは好きな人同士でするもんなの!」 「だって、お姉様は上条当麻のことが好きなんでしょ?」 「いや、それはねぇよ。 まぁ嫌われてはいないみたいだったけど。 …つーか昨日の事で嫌われちまったかもしれないけど……」 「うわ…マジかコイツ……じゃあ逆に、上条当麻はお姉様のことどう思ってるの?」 ―――俺は?――― 好きか嫌いかで聞かれたら好きなのだろう。 だが、それが恋愛感情かと聞かれたら答えられない。 なぜなら彼はインデックスのことも好きだし、吹寄や姫神のことも好きだ。 イギリス清教の人たちだって好きだし、土御門に青髪、一方通行や浜面だって好きだ。ステイルはまぁ、微妙だ。 要するに鈍感な彼は、自分の気持ちにも鈍感なのだ。 大きなくくりでの「好き」という感情は分かるが、それが家族へのものなのか、友人へのものなのか、恋人へのものなのか、 その先が細かく仕分けできない。2位じゃダメなんです。 はたして御坂への好きは、どの「好き」なのだろう。 「……よく……分かんねぇ……」 番外個体はふぅ、と溜息をついた。 (ま、コイツから引き出せるのはここまでかな。) 番外個体的にはちょっと不完全燃焼だが、まぁ収穫はあった。 今、聞いた話をミサカネットワーク内に流せば、妹達は面白い反応をするだろう。 「…じゃあミサカもう帰るね。今日来た目的は達成されたし。」 「……えっ!? 目的って宿題手伝ってくれることだろ!? まだ半分も終わってないんだけど!!」 「ミサカ、宿題は自分の力でやらないと意味が無いと思うの。」 「ごもっともな意見!! だけど約束は!?守るほうじゃなかったっけ!?」 帰ろうとする番外個体を引き止めようとして、上条はコタツの角に足をぶつけた。 そして倒れこむ。番外個体を押し倒す形で倒れこむ。 またかよコイツ。 そして右手は、番外個体の左胸を完全ホールドしている。私の氷はちょっぴりコールドである。 「ミ、ミサカこういうこと初めてなんだけど……」 「ち、違う!!俺はそんなつもりじゃ―――」 「とうま、ただいまー! お腹すいたn……」 最悪のタイミングでドアが開く。 小萌先生の家でごちそうになり、上機嫌で帰ってきたインデックスは急激に不機嫌になっていく。 いや、その前にメシ4杯食って、その後人ん家でごちそうになり、まだお腹がへってるってどういうこと? なんて言っている場合ではない。この後どうなったかは言うまでもないだろう。 番外個体はドサクサに紛れて帰った様だ。 結局、残りの宿題は自力でやることになった。 が、6分の5くらい終わったところで上条は力尽きた。 ここまでやれば、小萌先生も泣くことはないだろう。まぁ、説教くらいはあるだろうが。 だが翌日、小萌先生の説教の他に、とんでもないイベントが上条を待ち構えていたのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1722.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Time enough for Love 第4章 英国にて 11. 「The Recruitment」 「むぅ……」 インデックスはこめかみを押さえて黙り込んだ。 このことは、清教内の誰からも聞いていない。 それとも誰か何か隠しているのかな? 少なくともこちら側の事情ではない気がするのだけど……。 『私はみんなを守ると神に誓ったんだ』 ――あの時のみことの表情が意味することは……。 ――とうまがもし、みことのことも何もかも捨てて、私を追いかけてきたのなら……。 ――でも周りの人全てを傷つけて、なにもかも捨ててまで、自分の想いを貫くなんて、とうまらしくないんだよ。 ――とうまなら多分、最後の最後まであきらめずに、全てを手にしようともがくはずなんだよ。 『そう……あの時……捨ててきたのは……私の方なんだよ……』 ――でも恋は盲目とも言うし……。 ――とうまが今そうなっても、それはそれで仕方が無いのかも。 ――私だってとうまに未練が無いとは言わないんだよ。 ――だけど今更残してきたものに、心を揺さぶられるほど、私は乙女ではないのかも。 『たとえそれが『ずるい女』の罪滅ぼしでも構わない……』 ――私は『戦う』修道女なんだよ。 ――戦うと決めた今の私に、甘ったるい感情なぞ不必要。 ――私は戦場の真っ只中にいる。 ――ならば…… ――非情な愛情でもって…… ――上条当麻の恋慕(エロス)を、神浄討魔の愛情(アガペー)に変えて…… ――迷える子羊のために使わせることも私の使命。 「いかがしますか?最大司祭……」 ステイルが重ねて尋ねてくる。 彼は彼女の守護者ではあるが、仕事中は部下だ。 こういう場所での物言いは、一応は『慇懃』。 「とうまは……、私を追いかけてきたってことなのかな?」 しかし…… この状況は非常にマズイと思う。 権力闘争のさなかに色恋沙汰のスキャンダルは命取りにつながるもの。 こちらにその心算が無くとも、反対派に都合よく使われてはイメージダウンは必至。 まして宗教組織であるならなおさらだ。 とうまはやっぱりとうまなんだよ……。 「――どうしようか、ステイル……」 「いっそ焼き払いますか……?」 「こんな時の冗談は厳しいかも」 「失礼しました。 ――そうそう、言い忘れましたが、この名刺を彼から預かっております」 そう言って、彼は私に上条の名が記された名刺を寄越した。 ステイルは、最近とみに性格が変わってきたようで。 元々素直じゃない上に、誰の影響を受けたのか、時々私をからかうような『無礼』な態度をとる。 天草式の教皇代理が、いろいろと入れ知恵をするようになってからだろう。 ――かおりと2人、一度キッチリとシメておかないとダメかも…… 預かり物があるならさっさと渡すんだよ……と思いながら、彼から名刺を受け取った。 ステイルから渡された名刺の、見慣れない文字に私は目をやった。 『ミサカ-コンサルタント ロンドン駐在員 上条当麻』 「――ミサカ-コンサルタント?ロンドン駐在員??」 それは上条がロンドンに着いてまもなくの頃だった。 こちらへ来て、衣食住や身の回りのことなど、生活関係の諸々の雑用が落ち着いた頃、上条は父親の刀夜から呼び出しを受けた。 彼が住むカムデンタウンは、元々在倫日本人が多く住む地域であり、一種の日本人街となっている。 おそらく天草式の隠れ家も、この近辺にあるのだろう。 そこの一角にあるパブに出向いた上条は、父親の横にいる見慣れぬ男性に気が付いた。 同時に上条に気が付いた父親、上条刀夜が笑顔で片手を上げた。 「やあ、久しぶりだな、当麻」 「父さんこそ。今日は出張?」 彼の父親は、仕事柄、海外出張が多い。 「ああ……。ついでにお前に会わせたい人もいるんでな」 そう言うと、傍らの男性に目を遣った。 その男性は、何かを値踏みするように、眼光鋭く上条を見つめ、右手を出した。 「はじめまして、かな。御坂旅掛だ」 「上条当麻です。はじめまして、御坂……さん?御坂……!?あの……もしや……」 上条が握手をしたまま固まっている。 「ああ、君が学園都市に捨ててきた女の父親さ」 旅掛がにやりとした。 端正な顔に似合わぬ鋭い目は今も笑っていない。 どこの裏家業の人かと思わせるような服装とあいまって、背筋に冷たいものを走らせるようなオーラを出している。 自分の心の奥底まで抉り出し、引き摺り出されそうなその目に、上条は鳥肌が立った。 その横で刀夜もニヤニヤと笑っている。 なぜこの2人が一緒にということさえもう考えられなくなっていた。 「――ッ!!!」 上条の頭の中がパニックになっていた。 握手した手をあわてて離そうとするところを、旅掛がその手に力を込め離すまいとする。 まるで猛獣と、その爪に押さえつけられた哀れな生贄のようだ。 彼は左手で上条の肩を軽くたたくと、いつしかその瞳にも笑みを浮かべている。 「娘を傷物にした償いに、1杯付き合ってもらおうかな」 不穏な物言いにもかかわらず、その口調には労りが込められている。 そこに自分の逃げ道を見出したように、上条の口が動き出した。 「え、いや、あの、その、まあ傷物というか……」 「否定はしないんだな」 「ひっ……」 さらに畳み掛けられてあたふたする上条の姿を見、さらに不敵な笑みを浮かべた旅掛だった。 そんな旅掛を見ながら、そんなに虐めないでやってくれと言いたげに刀夜が笑い、息子に声をかけた。 「当麻、お前も飲めるんだろう?」 そう言い、刀夜がギネスを3つ注文する。 旅掛は、まだまだ足りんよといわんばかりに、刀夜に笑い返す。 やがて苦笑をうかべた表情で、上条に向かった。 「君の事は妻と娘からよく聞いているよ。 娘はおろか、妻までぞっこんにさせられてはね……、父としても夫としても非常に複雑な気持ちなんだがな」 「は、はぁ……」 旅掛からは、何を言われても、もはやまともに答えられない心理にさせられた上条だった。 「そんなに引かなくても、獲って食ったりはしないから心配するな」 「は、はぁ……」 やっと表情を緩めた旅掛の顔を見て、上条は気持ちを落ち着かせることが出来た。 まあ、その辺で、と言いたげに刀夜が割り込んできた。 刀夜がパイントグラスを2人に渡す。 「とりあえず、乾杯といきますか」 「「「乾杯」」」 黒い液体の、コクと爽やかな苦味が喉を流れ落ちる。 それとともに、上条は先程までの驚きも一緒に、胃の中へ流し込んだ。 さほど冷えすぎず、かといってぬるくも無い。 その冷たさが、自分の逆上せた頭を、程よく冷やしてくれるようでありがたかった。 英国のパブでは、常温で供する店が多いのだが、ここは日本人客が多いためか、そこそこ冷やされたものが提供されている。 緊張で渇いた喉が湿ることで、自分が空腹であることを思い出すほどに、すっかり気持ちは落ち着いていた。 酒より食欲優先の上条はFish ChipsやShepherd s Pieなど出された料理に舌鼓をうっている。 腹が減ってはなんとやらで、今からあの2人を相手取るには、とにかく燃料がいる。 自分の足りない脳みそでも、エネルギーを供給すればなんとか凌げるだろうと思いながら。 この店は日本人スタッフもいるのか、料理の出来も悪くないようだ。 喧騒の中、中年男2人は、上条の食べっぷりを眺めながら、グラスだけを傾け、談笑していた。 「さて、空腹は治まったか?当麻」 「はい、ごちそうさまでした」 「じゃ、本題に入る前に、もう1杯今度は私がおごらせてもらおう」 旅掛が刀夜にたずねた。 「上条さん、Kentish Ale はどうですかな?」 「Kentish……ならば、『 Spitfire 』?」 「さすがですな。『Battle of Britain』にはもってこいでしょう」 「確かに」 そう中年男たちが何事か頷きあっている横で、上条だけがわからないという顔をしていた。 旅掛が注文したエールでもう一度改めて乾杯をした3人だった。 「さて、そろそろ無知で科学な子供にちょっとした忠告をしたいのだが、いいかな、当麻くん」 旅掛がそれまでの穏やかな笑顔を引っ込めた。 最初に会ったときのような真剣な顔を向けると、上条はそこから目を離すことが出来なくなった。 「今回の君たちのやり方だが、このままでは非常にまずい事態を招くことになりかねない。 権謀術数渦巻く権力闘争には、裏の世界だけで争うと言うのは、非常にリスキーなんだ」 最初上条は、旅掛が何を言わんとしているのかが分からなかった。 「君が『あの彼女(最大司祭)』にとっての切り札だということは分かる。 だがこういった権力争いには表の世界で戦うのが一番なのさ。 おそらく暴走したウチの娘が考えたことなんだろうが、権力と言うものをまだ十分には理解していないようでな」 「………」 上条は、なぜ『この計画』が旅掛にばれているのか、という顔をしていたようだった。 いやそれだけではない。 なぜ横にいる刀夜までが腕を組み、うんうん頷いているのか? 俺はどこかでヘマをしてしまったのか? 「――さもなくば、その話を持ちかけた者が、何か事情がある、か……」 刀夜が横で、ぽつりと言った。 「――!?」 ――言いだしたのは土御門と神裂……。 ――しかもこれはインデックスには秘密だと……。 ――なぜ……だ? その顔に陰りを示した上条を見ながら、旅掛が続ける。 「心当たりはいろいろあるようだね。 ま、それは置いておいてだな……。 どこで『この計画』を知ったかは、気になるだろう。 それについては、君たちからではないから、心配することはない。 ま、蛇の道はヘビということで情報源は勘弁してもらいたいが……」 相変わらず旅掛の表情から窺えるものは何も無い。 完璧なポーカーフェイスの見本というべきか。 やがて刀夜が会話を引き継いだ。 「――我々大人の方が、年を経ている分、お見通しなんだ。 普段からそういう世界で生きているんだ。 当麻と美琴さんたちが、何をしたいのか、何をしようとしているのか、わからないでもない。 だが私達にも君たちの世界を守る義務があるのだよ」 上条は刀夜に、愛するものを守ろうとする男の顔を見た。 「父さん……」 あの夏の日に、わだつみで見た父の顔。 旅掛も、同じように父親の顔になって、上条の顔を見ていた。 「私は娘のために、その夢と世界を守ってやりたいと思っている。 だが、いつか親は、子供の手を離さねばならない時が来てしまうんだ……」 上条は、今、自分はどんな顔をしているんだろうかと思った。 「君がいろいろと、娘を助けてくれたことは知っている。 そして今も、美琴の支えになっていてくれることも……。 父親としては、正直複雑な気持ちもあるが、それでも感謝しても仕切れない……」 そう言うと、旅掛は上条に頭を下げた。 「いや、頭をあげてください、旅掛さん……」 「なに、君がこれまで……『娘達』のために、いろいろ手を尽くしてくれたことぐらいは私にも分かっているよ」 「――『妹達(シスターズ)』のことを……ご存知なのですか……」 上条の口から、重い言葉が出た。 この父親なら、そのことを知っていても不思議ではない、という思いが、この状況でも上条を冷静にさせていた。 御坂美琴が抱える闇、『妹達(シスターズ)』。 かつて『量産能力者計画』によって開発され、『絶対能力進化計画』のために1万体以上が殺された美琴のクローン達。 あの夏の夜、上条がその右手でもって救った彼女達。 あの時、俺が救われた少年に守られる彼女達。 今も美琴の心の中に、救われぬ思いを強く残す彼女達。 ――今もおそらく、そしてこれからも、一生、美琴はその闇と戦い、もがき、苦しんで…… ――ああ、確かに彼女は強い。 ――だけど同じくらい儚くて脆い彼女を知っている。 ――美琴自身は割り切ってはいるつもりだろうけど…… ――それでもまだ割り切れていないのも確か……。 ――ならせめて、その闇を少しでも軽くしてやることは出来ないか……。 彼女の心の中は、彼にはどうしようもない。 それでも、上条には何とかしてやりたいという思いがあった。 「私は世界に足りないものを示すコンサルタント業をやっている。 だから私は君に、足りないものを示し、提供することが出来る。 だが私に足りないものは、あいにく私1人では手に入れることが出来ないようなんだ……」 「旅掛さん……」 「そこで、ちょっとしたビジネスの話なんだが……」 そう言うと、旅掛は刀夜の方に目を向けた。 刀夜は、旅掛に向かい両手を広げ、お任せします、といわんばかりに笑みを返した。 それを確認した旅掛が、上条に向き直り、真剣な表情で口を開く。 「君のお父上の了解もあることだし、単刀直入に言わせてもらおう。 君を、当麻くんを、私のビジネスパートナーとしてスカウトしたいのだがどうかね?」 「はぁっ?」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Time enough for Love
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1087.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある未来の・・・ 5.最終日 「~~~♪」 鼻歌を歌いながら商店街を歩く。 一人でいたのならそれは不審がられるかもしれないが今は隣に人がいる。 美詠はハート型のペンダントを揺らしながら上機嫌だ。 隣の人物、当瑠は怪訝そうに美詠を見ている。 「なぁ」 「なに?」 チャリ、とペンダントを揺らして振り向く。 店を出る前に何度も見た当瑠の姿をもう一度確認する。 特徴的な茶色のツンツン頭、整ってはいるもののすこし気だるそうな表情 そして、銀色のペンダントだ。 店の中では彼の鈍感さに改めて愕然とさせられたが怒るのを我慢して ペンダントを買った甲斐があった。 だが、当瑠が気になっているのはペンダントらしい。 「なぜ私めの名前でなく貴方様の名前が彫られているんでせう?」 「私が買おうとしたのにアンタがこれ買っちゃうからでしょ?」 これ、とハートのペンダントを指差して美詠はなんとなしに返す。 本当はどちらも当瑠に買おうと思っていて悩んでいたものだ。 それを自分のために買うと勘違いした当瑠がペンダントを買ってしまった。 結果的に当瑠からのプレゼントということで美詠なりにかなり嬉しかったし そのお返し、という名目で自分の名前を彫った銀色のペンダント当瑠に渡せたので結果オーライだ。 「いや、だから、なんでわざわざお前の名前をと聞いているわけでして」 「彫ってる途中でアンタが買うから変更するわけにもいかなかったのよ」 ちなみにそれは嘘だ、本当は彫る直前だったが何とかそれを隠して 店員に作業を続けさせ、作り上げた。 「・・・・・・そんなにイヤなの?」 チラチラといちいち気にしながら当瑠に問いかける。 確かに恋人でもない女の名前が彫ってあるペンダントをつけているのは もしかしたら好きな女子がいるかもしれない男にとっては煩わしいかもしれない。 でもそれだったら美詠ははっきり言ってほしかった。 「い、いや!違うぞ!上条さんは美詠さんのことが嫌いというわけでなくてでしてね あー!そんな目で見るな!見るんじゃない!見ないでくださいの三段活用! はいはい分かりました!私めはただちょっと気恥ずかしいだけでして本当はむちゃくちゃ嬉しいんですことよ!」 「本当?」 必殺の(とは言うものの美詠自身にその自覚は無い)上目遣いで当瑠を見つめる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」 当瑠は静かに頷ずいた。 ☆ 「・・・・・・できた!」 人気のない公園内に少女の達成感に満ちた声が木霊する。 「ん~中々の出来じゃない?」 出来上がった作品、砂場に作られた城に見惚れながら呟く。 城の周りには四つの塔が立っており、城を守るための外壁はもちろん 外の堀まで精巧に造られていた。 大きさも二人で造ったにしてはかなり大きめで子供向けの遊び道具の 結構高価なミニチュアの家を連想させる。 「ママのおかげだよ!」 同じように見とれながら見ている美春も嬉しそうに両手を上に挙げて手放しに喜んでいる。 それは美琴の一番見たかった美春の表情であり、彼女に自分が母であることを自覚させた表情だ。 造り上げるのに苦労した分返ってきた報酬が大きく美琴は疲れも吹き飛んでしまった。 「よしよし、それじゃこれ写真でも撮っておきますか?」 せっかく造った物を何もせずに崩してしまうのはもったいない、そう判断して美琴は 自分の携帯を取り出しカメラ機能を起動させる。 「みはるもいれてー!」 美春が無邪気にはしゃぎながらカメラの範囲内に入ってくる。 だが、肝心の城の前に仁王立ちするように立ってしまっているので メインが移り変わってしまったものが撮れる。 美琴は苦笑しつつ自分の位置を動かして再度シャッターを切る。 若干斜めになったものの城と美春の全景が撮れた写真が出来上がった。 「ママ!ママもいっしょにはいろ!」 「分かった分かった、ちょっと待ってなさいよ」 言いながら美春と真逆の方に顔を向ける。 そこにはベンチに座って『私関係ありませんオーラ』を放つ上条がいた。 ただ美琴から見たらそう見えるだけでその実、上条自身は娘と一緒になって 無邪気に遊んでいた美琴が可愛く見えたのが恥ずかしくて目線を逸らしている、ということには美琴は気付かない。 「当麻ー」 声をかけるとゆっくりと顔が動き美琴と上条の目が合う。 上条はやり取りの方が聞こえていないのでどうしたと疑問の表情だ。 「ちょっとこっちにきて写真とってくんない?」 携帯を指差して言うと上条も合点がいったのか緩慢な動きで 美琴と美春のところまで歩いてくる。 「写真とんの?」 美琴の目の前まで来て携帯を受け取りながら疑問を投げかけてくる。 「私と美春の合作よ?残さずに壊しちゃうなんて勿体無いわよ」 じゃお願いね、分かりましたよと言葉を交わして美琴は美春の隣に行く。 美琴は美春と背を合わせるため中腰になる。 「じゃ、いくぞー」 上条が声をかけてくる。 後数秒すればシャッターが切られ二人の写真が出来上がるはずだった。 ――――御坂美琴は失念にしていた、上条当麻が不幸だということに ――――上条当麻は油断していた、今までの自分が幸福すぎたことに 「へへ、いっちばんのりー!」 ドン、と表現するのが正しいだろうか、上条の体が突然浮き上がり 体制を崩しながら美琴のほうに向かってくる・・・・・・否 苦労して造った城にだ。 ドシャァと盛大な、そして豪快な快音を立てて造り上げた城が上条の体重で崩れていく。 「・・・・・・あれ?みことねーちゃん?」 そんなとぼけた声が美琴の耳に入ってきた。 一瞬呆然とした美琴だったがその声にはっと我に帰る。 視線を倒れた上条から声の聞こえた方に移すと美春と同じか、少し上くらいの少年が 不思議そうな表情で美琴のほうを見ていた。 「あ・・・・・・あぁ・・・・・・」 絶句する。 美琴はその少年に見覚えがあったからだ。 それと同時に一気に不安が上乗せされていく。 子供たちが少年に連れられるように寄ってくる。 「ほんとだ!みことおねえちゃんだ!」 「なにしてるのー?」 続々と子供たちが美琴の目の前に立ちはだかるように視線を向ける。 子供たちは美琴が去年の夏休みに出会い、そして美琴が一番に注意していた 『あすなろ園』の子供たちだった。 「ど、どうしてここに?」 普段は園内の運動場で遊んでいる子供たちだ 特別な用事でもない限り運動場の遊具で遊び足りているはずだし わざわざ来るとは思いもしなかった。 子供たちはその質問に顔を一瞬だけ見合わせ美琴のほうに再度顔を向けると 「きょうはおでかけのひなのー!」 ――――あー、なーるほど、遠足みたいなものなのねー 「不幸だ・・・・・・」 砂場に倒れ伏しているツンツン頭の少年の口癖を思わず呟く。 まさしく最悪のタイミングだったといっていい 幼稚園や保育園、その他子供を預かる施設の数々が 普段行かない場所に行くことを企画するのは当たり前だ。 遠出の行事が小学校や中学、高校の特権ではない。 長期休暇なのに行事を計画したのは『あすなろ園』だからだろう 長い休みに出かけることを知らない子供たちのために今日、この日を選んで 子供たちを連れてきたのだ。 肝心の先生がいないのが不思議だが、お手洗いにでも行っているのかもしれない。 「ねぇねぇ」 「え?」 一人の女の子がくいくいと自分の袖を引っ張っている。 短いブラウスなのでその子との距離は近いが驚きはしない だが美琴は不吉な予感がしていた。 「このおにいちゃんはだれ?」 どうすればいいだろう。 答えは用意していたはずなのにそれが答えられない。 思考が飛んでしまっているのかもしれない。 「え、えぇっと、その、コイツは私の・・・・・・」 「わかった!こいびとでしょ!」 「!!!!!!???」 その子にとっては些細な一言だったかもしれないが 美琴には何よりもすさまじい威力を持った一言だ。 恋人、今の自分たちはそう見えただろうか、遠目から見て 客観的な視点で二人のやり取りを見て思っただろうか 小さな子供の言葉だと分かっていてもそう見えたのなら、嬉しい。 「は・・・・・・あはは、ちが、うわよ?コイツはただの、ただの友達で」 それでも恥ずかしくて、恋人とはいえなかった。 未来ではそれ以上かもしれない、だが今はまだ告白だってしていない 上条のほうも意識はしてくれていると思うが何もしていないし、されてもいない。 子供たちは不審そうに、信じていないような顔つきだったが すぐに笑顔になって美琴の隣にいる美春を引っ張る。 「じゃぁ、このこはおねえちゃんのいもうとでしょ?いっしょにあそんでもいい?」 それも違う、その子は自分の娘だ。 そう思って言おうとしても流石にそれはいえない、絶対にだ。 「え、えぇ、この子も喜ぶと思うから・・・・・・美春?いいかしら?」 美春は上条に城を崩されてから一言も言葉を発していなかったが 泣いてはいなかったらしく、美琴が聞くと迷いも無く頷いて 「うん!たくさんのほうがみはるもたのしい!」 言いながらあすなろ園の子供たちと遊具の方へ走っていった。 ホッとそこで息をつく。 かなり緊張したが相手の方が勘違いしてくれて助かったと胸をなでおろして 美琴は次の問題に目を向けた。 「・・・・・・当麻、そろそろ起きて?」 先ほどからピクリともしない上条に声をかける。 それでも上条は体を起こさない 暫くしても起き上がらなかったら腕を引っ張って体を起こしてやろうか それとも電撃を使ってショックで強制的に起きあがらせるか どちらかをしてやろうといつまでも起きない少年を見て思った。 ☆ ベンチに座りながら手元に先ほど買ったジュースを流し込む。 いつもと違って黒豆サイダーやらいちごおでんにカレースープでもない 普通のコーラだが何か物足りなく感じてしまい顔を少ししかめる。 缶ジュースを持ったままわいわいと騒がしい声の方に視線を向けると ツンツン頭の少年がアホ毛の少女をはじめとした子供軍団に囲まれていた。 高校生の少年が珍しいのか子供たちは「でっけー」とかまるで少年が巨人かのように驚いている。 巨人(仮)である上条は少し黒焦げた服を着てどうしたものかと焦った表情をしながら 囲んでいる子供たちから逃れるためか追いかけっこを始めた。 逃げながら助けを求めようとしているのかチラチラとベンチに座っている御坂美琴を見る。 美琴は助けようともせずにただただ上条を目線で追うだけだ。 (結局あすなろ園の子達の面倒も任せられちゃったわね) 遅れてきた保母さんに安心して任せられるといわれ子供たちの面倒を見るように言われた。 保母さんは買出しがあるからといって後でまた迎えに来るといってもう二時間は帰ってこない。 よほど買うものがあるのだろう、まさか子どもたちのことを忘れるはずが無い。 「ぎゃあああああああああああああ!」 いきなりの悲鳴に思わず腰を浮かすと上条が子供たちに再度囲まれて 逃げ場を失い全方位から集団タックルを喰らっていた。 美春たち五、六歳の平均体重が19kg~21kgだとしても数十人ものしかかれば 200kg以上ある計算になる、60kg以上の上条でもひとたまりもないし 大人でも軽く押しつぶされる重さだ、下手すると(しなくても)大怪我するだろう。 「どうだ!おれたちのほうがつよいぞ!」 子供の中でもリーダー格、ガキ大将らしい男の子がガッツポーズをとっている。 一体何の勝負をしていたか分からないが、どうせまた女の子に手を出したとかそんなところだと美琴は判断する。 (上条に意識は無いので彼がロリコンということではないはずだ) 「ちょっとちょっと、大丈夫?」 流石にいたたまれなくなって上条に救いの手を差し伸べる。 「ふふ・・・・・・子供たちは話を聞いてくれません」 今にも泣きそうな表情で枯れる直前の花みたいにしおらしく上条は小さな声で呟く。 だが、子供たちは容赦なく上条を下敷きにし続けている。 「怪人ツンツンネズミめまだしゃべるげんきがあったか!」 どうやらヒーローごっこをしていたようだ。 子供のネーミングセンスにすこし苦笑をしてしまったが 肝心の子供たちは名前などどうでもいいようでかなり本気で拳を上条にぶつける。 「あだだだだ!てめぇら少しは手加減しろ!」 「それ!じゃくてんをつけー!」 「うわ、やめろって!いだ!髪が!やめろ!それ針じゃねぇって あ、いやー!抜ける抜ける!若干十六歳にして禿げになる!」 死ぬーと真面目に顔を引き攣らせて表情をゆがめる上条の顔は とても表現できるような表情ではなくビニール袋みたいに引っ張られて ひどい有様だ。 「ぷっ!あ、ははは!何その顔!く、ふふ」 堪らなくなってひーひーと女の子がするとは思えない笑い方で 美琴は腹を抱えて笑う、上条が物凄い笑える顔で抗議をするが聞いていない。 「おい!笑ってないで助けろよ!う、ぎぎ!」 そんな抗議をする上条の引っ張られる力が急速に抜ける。 上条が不思議そうにのっかている子供を見ると娘の美春がキョトンとした顔をして 上条の頭に生えていた糸のようなものを数本握っていた。 「あ、かみぬけたよ」 可愛らしく、だが天使とはいえない笑顔になって握った掌を開く。 風が吹き上条の自慢のツンツン頭の一部はふわっと浮いてどこかに運ばれていってしまった。 「いやああああああああああ!」 「ぷ、くく、ひ!ははは!」 悲痛な上条の叫び声と美琴の笑い声が公園中に響き渡った。 ☆ 「・・・・・・・・・・・・・・・いってぇ」 夜六時、日が暮れ始め辺りも暗くなってきている学園都市第十三学区を 上条当麻は自身の象徴とも言えるツンツンヘアーをわが子のようにさすりながら 御坂美琴と肩を並べている 背中おぶった美春は心地よさそうに寝息を立てていた。 「大丈夫・・・・・・?く・・・・・・くく」 隣を歩く御坂美琴が笑いを堪えながら聞いてくる。 「お前。何で助けてくれないんだよ」 あの後結局何本か子供たちに持っていかれ本気で若禿げを心配したが 幸い上条の頭部状況はいたって正常、オールグリーンだ。 ただ確実に禿げ始める年齢が下がった事は否定できないだろう。 「だ、だって、おもしろすぎて・・・・・・ぷぷ!」 もう笑うのは大概にして欲しいと上条は思う。 美琴の笑った顔は見ていても別になんとも無いが今の顔は馬鹿にした笑顔だ。 どうしたって喜べない。 「・・・・・・もういいよ、先に帰っちまうぞ俺」 ちょっと拗ねてみる。 「あ、ごめんごめん!も、もうわらわ、ない、か、ら」 効果は無いらしい。 笑わないといいながらもう限界が来ていて爆発しそうな勢いだ。 「・・・・・・はぁ、不幸だ」 一番に嫌だったのは自分の変な顔を美琴に見られたことだ。 多分だが人生でかなり乗員見はいるくらい情けない顔をしていたに違いない。 男として、好きな女性に自分の変な、情けない表情は見られたくない心情なので 上条ははっきり言って落胆している。 「もう!ごめんってば!先行かないでよ!」 好きな女性、美琴が少し心配げな声で出して追いかけてくる。 「お・・・・・・い!」 やわらかい感触がした。 美春を通して伝わってきたのは美琴の手の感触だ。 片手で抱えるように美春を持っているので片方は手持ち無沙汰だった。 その手が握られている。 「笑ってごめん―――――ね?」 その表情は卑怯だ。 嫌われたと思ったのか、一人で帰るのがさびしいのか どちらかは分からないが不安げな表情のそれは男なら あがく事も出来ず彼女に落ちてしまうくらいに魅力的な表情だ。 心音が一気に高鳴っていくのが分かる。 それと同時に嫌な事をもう一つ思い出してしまった。 「・・・・・・なぁ」 「・・・・・・何?」 言ってしまっていいものか逡巡する。 言えば上条の気にしたことなどどうあろうと解決する。 言わなければこのままの関係を続けられる。 上条の中で言いたくない気持ちが強くなる。 「・・・・・・いや、なんでも、ない」 どもってしまったことで美琴を不審がらせてしまったらしい やめようと決めた上条を揺さぶるように詰め寄ってきた。 「・・・・・・どうしたのよ?言いたいことがあるならちゃんと言って?」 当然二人の距離は近くなり、上条の頬は紅潮する。 きゅっと掴まれている手の力が強くなる。 だが痛みは無く、むしろ優しく包んでくれているような感覚すらある。 「・・・・・・あのさ」 上条は美琴に屈した。 元から勝てる見込みの無い戦いだったのだから抵抗は無意味に等しい それならばやる必要はなかったが美琴に上条が何を思っているか 何が嫌なことだったのか伝えたかった、そしてそれを聞くのが怖かったのだ 悩んだのは仕方の無いことだった。 「今日の、ことだけど」 「今日?」 言いたい。 だが言った後のことが怖かった。 「美琴・・・・・・正直に答えてくれ」 妙に改まった顔をした上条に美琴は少したじろぎながらも 頷いて先を促す。 「分かった、それで?何なのよ?」 上条はすぅっと一度だけ深呼吸する。 彼の質問に美琴が肯定をしようが否定しようがどちらでも 上条の後の行動はすでに揺るぎないものになっていた。 「俺とお前はただの友達なのか?」 些細な一言だっただろう。 小さな子供が悪気も無く言った単純な疑問。 ――――このおにいちゃんはだあれ? 答えに関してもそうだった。 ――――コイツはただの友達で 『ただ』の友達。 今までならそれでも納得できた。 御坂美琴という一人の少女に対しての感情がその程度の時だったなら その言葉は心が揺れる事はなかった。 だが、今は違う。 少女に対して友人としてではない恋愛感情以上のものを持ってしまった。 ――――自分の目の前にいて欲しい 離れるのが嫌になった。 視界にいるだけで心地よさを感じられた。 ずっと一緒にいるなんて無理に決まっている、そんなことは分かっている。 ――――それでも それでも今いる時間、自分と絶対に離れなければいけなくなるまでは ――――友達なんかじゃなく 今の関係が不満だった。 初めはそれだけでよかった、どんどん足りなくなっていった。 ――――それ以上の関係でいたい 突然背中の重みが消えた。 体はどこへとも分からず動く。 否、いくべきところは決まっていた。 自身が愛する少女がいる場所だ。 ☆ 静粛、その言葉が一番適しているのではないだろうか。 あたりはすっかり暗くなり学園都市は夜の街へと姿を変えている。 その都市のとある学生寮の一室に二人の男女がいた。 「・・・・・・そろそろ、か」 外の景色と中の時計を交互に見ながら当瑠は呟く。 計算が正しければ今日の日付が変わる頃まで時空の歪みは発生しているはずだ。 それを超えればまた暫く未来には帰る事はできず、未来は変わってしまう。 当然、当瑠自身も存在しないことになり消滅することになる。 (俺が消えたら、コイツはどうなるだろう?) ふと隣を見る。 当瑠の隣には美詠が足を崩して大人しく座っている。 隣にいても問題は無いが狭い部屋に若い男女が二人きり、しかも隣り合って座るというのは 非常に精神衛生上宜しくない。 当瑠はなるべく意識しないように他のことを考える。 (取り乱すか?いや、コイツに限ってそらないか) 普段の態度から見てそう思う。 多分驚きはするが、ただそれだけだ、あまり悲しんでくれないかもしれない。 ――――胸がざわついた。 「美詠」 名前を呼ぶと美詠の体がピクッと震える。 驚いたわけではない、声をかけられての単純な反応だ そんな仕草が、可愛らしく見えて当瑠はドキリとしてしまった。 「なに?」 寮に帰ってからは一言も話さなかった彼女は少しだけ顔をしかめて当瑠を見る。 「いや、そろそろ帰らなきゃいけないなと思ってさ」 親父にも連絡とらないとな、と言葉を続けると美詠は無愛想にそうねとしか答えず 正面を向いてしまう。 「・・・・・・」 会話が続かない。 酸素が足りないわけでは無いのに息苦しく暑くも無いのに汗が吹き出てくる。 「連絡、してみるか」 テーブルに置いた携帯を手に取り登録した父親の番号を呼び出す。 未来に帰れば、この時代の番号は必要なくなる、最初で最後の通話だ。 「とっ・・・・・・」 携帯の通話ボタンを押そうとした時に手から携帯を取り落とした。 手が滑ったわけではない、美詠に手首を掴まれたからだ。 「おい!」 「・・・・・・待って」 何をするんだと抗議をしようとする声は出せなかった。 美詠の顔は見ることが出来ず、掴まれた手首に視線がとどまる。 「――――まだ、帰りたくないの」 「――――お前、まだ」 声には不安と怯えが混じっている。 当瑠にはその理由が分かる、ただ口に出すことは出来ない。 それが、彼女の存在の否定になるからだ。 「わがままだって事は分かってる、でも・・・・・・」 「―――やめろ」 「まだ『普通』の女の子としてここにいたい」 「やめてくれ、それ以上聞きたくない」 「だって私は・・・・・・」 「やめろ!」 耳をふさぎたかった。 だが、体は動かずまるで鉛でものしかかっているかのようだった。 それでも、いくら心で願っても美詠の言葉は止まらず 少年の最も耳にしたくない『呼び方』を告げる。 「『化物』だから」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある未来の・・・
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/696.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/fortissimo とある恋人の登校風景 上条にはある不幸な過去がある。 といってもそれは記憶を失った時の話や学園都市内での話ではなく、学園都市に来る前の話だ。 学園都市に来る前の幼少時代、上条の不幸は学園都市の生徒たちのようにギャグのように受け入れられるほど周りは優しくなかったという。上条の不幸は周りからすれば迷惑きわまりない体質、言うなれば嫌うものの対象であった。 不幸と言うのはまだ子供から見れば何が起こるかわからないもの。さらにそれが怪我に繋がったりすれば不幸は怖いものであると小さな子供は判断してしまう。たとえ大人が違うと言っても、目の前で起きた不幸を否定することには繋がらない。それが長い時間続くとなれば、子供たちは不幸を恐れ嫌っていく。 そしてその対象であった上条自身が嫌われる。近くにいたら自分も被害にあう、何かに巻き込まれる、自分にも不幸が移る。子供たちはそういって同じ子供である上条を忌み嫌い恐れた。 それは他の親たちや先生も同様である。目の前の起こる不幸は笑いでは済まされないことも多く、自分たちにもいつ不幸で被害にあうかわからない。それを嫌ってはいけないと思いながらも不幸を恐れてしまう大人たちは、いつしか上条を嫌っていった。 その結果、彼につけられた名が『疫病神』。一緒にいるだけで自分たちも不幸になってしまうことを恐れた子供や大人たちがつけた名前である。 その名をつけられた時、過去の上条は何を思ったのかは記憶を失ってしまった今ではわからない。だがとても悲しくかったのではないかと思える。怒りや憎しみではなく、嫌われる悲しさだけが当時の上条を支配していたのだろう。 だがそれだけではない。その時期に一度、見ず知らずの男の包丁に刺されたこともあったらしい。幸い、包丁に刺された不幸どまりであったがそれが影響してさらに上条の名が広がり、地元では有名人になっていたらしい。 そしてそれらのことを受け、上条は一人学園都市にやってきた。不幸な疫病神であった上条を守るために。 閑話休題。 美琴は上条の小さな頃の過去はよく知らなかった。 恋人になったとき、時折だが父親から話されたということを知ってはいたが細かな話は上条の口からは出ていない。しかし上条の記憶がない以上は仕方のないことだと美琴はわかっていたので、特に文句はないし無理に聞く気もなかった。 だが上条が『外』へ行っている間、友人である初春から見せられた雑誌の記事で上条の過去が取り上げられていたことを知ってしまった。、まだ美琴が知らない過去であったため、でたらめな記事かどうかわからないが少なくとも上条の不幸体質をよく知る美琴には真実のように思えた。 そして美琴はその過去の話を訊ねてみようと思って、通学路の途中にあるいつもの自販機の前で止まって上条の手をゆっくりと離した。 「……御坂?」 「入学式が始まる前に、聞きたかったことがあるの」 美琴は上条の目を見ながら、はっきりと告げると上条も目を見て頷いてくれた この話を今するのにはある理由があった。 初春からの話では入学式にはメディア・記者の目も入るらしい。しかもその場でインタビューや会見などを学校側の独断で設けられる可能性もあるということなので、もしかしたら上条の過去を知る人間がいる可能性がある。いや雑誌の記事にされてしまったのだ。ほとんどの記者が知ってしまっているはずだ。だから、その時に何も知らない上条が質問された時のために、美琴は辛いが先に訊いておきたかったのだ。 こんなことを入学式の直前に聞くことになるのは正直、複雑な思いで気が引けた。だけど何かあってからでは遅いと、気持ちを改めた。 「実はアンタがいない間、ある雑誌の記事にアンタの過去が載せられてたの。私は初春さんから見せてもらったんだけど……もしかしたらアンタは知らないのかもしれない、でももし知っているなら教えて欲しい」 「…………」 「学園都市に来る前に、アンタは不幸体質のせいで周りに蔑まれていたって。アンタがいた地元ではそれなりに有名人で疫病神って言われてたって書いてあったの。ねえ、これって本当のことなの?」 「ああ、本当のこと…なんだろうな」 上条は神妙な面持ちで頷いた。その顔からは一体どんなことを思っているのか、美琴ですらよくわからなかった。だけど目はかすかに揺らいでいたのを見た。 「父さんに聞いたことがあるんだ。帰省した時に少し興味があったから詳しく教えてもらったけど、そんなことが過去にあったらしい」 「………………」 さきほどから断言できず曖昧なのは記憶破壊があるからなのだろう。上条の記憶のことを理解している美琴だからこそ、曖昧なことを言っている上条の言葉を理解できた。そして神妙だった表情が少しずつ悲しそうな表情に代わっていくのを見て美琴は罪悪感を感じ始めた。 「でもそれは過去の話だし、俺の不幸で苦しんでいる人を救うことができるならば俺はいいってわかったから。だから今は不幸になったことを後悔してない。って過去を知る前から不幸になったことは後悔してないか」 不便だけどなと上条は小さく笑う。その話を聞いていた美琴は、上条の強さが羨ましく思えた。 でも考えてみれば上条が強いのはずっと前から、助けてもらった時から知っていた。どんな絶望にも屈しず最後まで諦めずにあがき続け、自分を助けてくれた上条当麻。思えば美琴が上条にほれたのは、そんな強さを目の前で見せ付けられたからなのかもしれない。 「それでこっちも聞くけど、上条さんの過去を知って御坂は上条さんを嫌いになりましたか?」 聞いてくることは真剣な内容。なのに上条は笑って聞いてきた。 (わかってて訊いてきてるのね。この馬鹿) 答えを知っているその笑顔が少し悔しい。でもと思いながら美琴は上条の胸に飛び込んだ。 「誰かに見つかっても知らねえぞ?」 「それはお互い様でしょう、馬鹿。アンタだって私がこうしてくることを知ってたから、すぐに抱きしめてきたんでしょ?」 「やっぱりわかっておりましたか…」 「当然でしょ。私の大好きな"当麻"だったらそうするって信じてたから」 美琴は上条の腕の中で笑うと、上条の頬にキスをした。 家の外なので少しばかり恥ずかしかったが、やってしまえばどうということがなかった。なので今度は逆の方にもキスをして両方の頬に均等なキスをしてあげた。 「それ、家の外じゃ恥ずかしくてやらないって言ってなかったか?」 「今はここに誰もいないでしょ? それに"当麻"だって満更でもないんじゃない?」 「……………ったく。どうしてお前はこんなに可愛いことばかりするんだ、美琴」 「当麻が好きだからよ。好きだから当麻に甘えたいの。わかった?」 ああというと上条は美琴の唇をキスをする。 一瞬だけの簡単なキスだが、一瞬だけでも幸せを感じられ気持ちが伝わるキスが上条も美琴も大好きであった。微妙に甘い味や柔らかい唇の感覚、取り込まれそうな艶と煌きは一度だけでは満足させず、何度も何度も求めたくなる。 今度は美琴が上条にキスをした。だけど今回は少し時間の長いキスで唇をより一層密着させた。 「ちゅっ……んんっ……はぁ」 長いと言っても時間にすると十秒前後の時間だ。それだというのに二人の体感時間はそれを何十倍もしたぐらい長く疲れるものであった。 お互いに少しだけ息を荒くしながら、唇をゆっくりと離すと二人を繋いでいた透明の橋が伸びて消えていった。その橋が唾液で出来たものであるとわかると美琴は急に恥ずかしくなり顔が熱くなるのを感じた。 「え、エッチ……」 「お、お前が……言うなよ」 唾液で出来た橋は少しだけ外での抵抗があったぬ美琴でも刺激が強すぎた。そして作ってしまった張本人は何をいえばいいのかわからず、真っ赤になりながら俯いた。 「………………」 美琴はおずおずと上条の顔を見上げると、上条は朝って方向を向きながら真っ赤になっていた。それを見た美琴は少しだけ気持ちが落ち着き、上条の胸の顔を隠してほんの少しだけ顔を緩ませた。 「………とーま」 「な、なんでしょうか、ひめ」 「もう少しだけ、このままでいい?」 「………はい」 そして美琴は上条の抱きしめ返してしばらくの間、二人で抱き合い続けた。 ちなみにその時、通行人が何名か通りがかろうとしたが雰囲気的に近寄れなかったので遠回りしていくしかなかった…と後日、土御門舞夏からそんな話を聞く美琴であった。 抱擁が終わって外での関係に戻ると、二人はさきほどよりも少しだけ間をつめて密着寸前の距離で歩いていた。 「……あれ? こんなところに車の列?」 とある高校に向かう途中の大通りの道路で上条は車の列を見た。 いつもの通学路であるから気づけたわずかな変化に気づいたのは上条だけだ。隣にいた美琴はよくわからず、キョトンとした顔でどうしたのときいてくる。不覚にもその顔に萌え…いや蕩れてしまった上条はドキッとしてしまったのだが、咄嗟に唇を噛んでなんとか表に出さずにすんだ。 「いつもはここに列なんて並んでないだが、今日に限ってはこんなに並んでるから気になってな」 「ああ、そういうこと。確かにこんな時間に車の列なんて珍しいわね。この近くで何かあるのかしら?」 二人で興味深そうに車の列を見ながら、学校へと歩いていく。のだが今度は歩道の反対側に人だかりが増えていく。 「あれ? 今度は人の列か?」 「本当ね。しかも車と同じ方向じゃないかしら?」 「言われてみればそうだな。なあ御坂、なんか心当たりないか?」 「残念だけどないわね。このあたりはアンタと私の高校ぐらいしか知らないし、イベントのこととかも特には聞いてないわ」 そっかと歩きながら相槌を打つと、列の中で上条は見たことのある制服を見た。しかもつい最近までよく見た記憶のある制服姿。ふと上条は横にいた美琴を見てみて、ああと見たことのある制服を常盤台だと思い出す。 「御坂、常盤台の制服の生徒もいるみたいだけど、本当に知らないのか?」 「えっ!? 常盤台の生徒もいるの!? だったら会いたくないわね」 常盤台の名前を出され美琴は肩を落とした。何がどうしたのかわからない上条は、頭をかしげて常盤台の生徒をもう一度見たがやはりわからなかった。 「なんで会いたくないんだ? 常盤台はお前の母校だろう」 「アンタ、私は常盤台のエースで憧れの的だったということを忘れたの? それに卒業式の件もあったから余計に会いたくないのよ」 常盤台のエースと卒業式のことを言われ、上条は納得した。そして、卒業式は自分も含まれることを思い出し、今度は上条が肩を落とす。 「肩なんて落としてどったの?」 「上条さんはこれから来る不幸を思い出してテンションが一気にダウンしただけです」 卒業式にあんなことをしてしまえば、上条の学校の全ての生徒は上条に殺意を覚え殺しにかかってくる未来は、いくら鈍感な上条でも容易に想像できて地獄である。というよりも昨日はまた担任になってしまった月詠小萌のおかげで回避できたが春休み前に学校を無断で休み、友人にも誰とも会わずいたことが奇跡であったと思い返すが、それはきっとこれから来る地獄の前の静けさであったと背筋が凍りつくような恐怖に襲われた。 「ちょ、ちょっと!!?? 真っ青になってどうしたのよ!?」 「美琴たん。上条さんは入学式から無事に生きて帰ってくる自信がありません」 いつも以上に生き生きして血走った目で走ってくるとある高校の生徒一同から逃げられる気は今回ばかりはなかった。果たして自分を生き残れるのかと自問自答しても返ってくる答えはノーの幻想をぶち殺してやりたいと思った。 そんな鬱状態の上条が何を考えているのかもわからない美琴は頭をかしげる。しかし何に苦しんでいるのかいまいちわからないが、上条個人の問題そうだったのでそれ以上は何も聞かなかった。 「それにしても一体何なんだ? そろそろ何か見えてきてもいいと思うんだが」 「そうね……あれ? ねえ、あそこの文字見える?」 二人の斜め前、人の列の先にある小さな文字を指差され、上条は指された方向に視線を向けた。ここからではあまりよく見えず、人の頭が邪魔であったので文字は全て見えないが、一文字一文字を穴が開く勢いで見て読んでいく。 「えっと……にゅうがくしき、いりぐち……?」 「入学式入り口……? どこの?」 「あー待て待て。えっと、学校名は………」 書いてある文字から高校の前の文字を一つづつ読んでいく。色文字であったのと日差しに影響されなかったのが救いであったため、上条の目では鮮明にとは行かないまでもよく見れば見えるほど漢字を一文字一文字読んでいった。 「…………………はい?」 そして読み終えた上条は絶句のあまり、しばらく動けず凍りついた。それから美琴に呼びかけられたりしてしばらく、上条は目の前で起きている現実を受け入れられず、驚愕の表情を浮かべた。 「そ、それで……何が書いてあったの?」 「うふふ……御坂さん。わたくしたちはどうやらとんでもないものを見ていたらしいですね。上条さん、あまりのことに現実逃避してこのまま家に帰りたい気分になりました。ですけど現実なんですよね? そうですよね? そうだよな御坂?」 「アンタが何を言いたいのかわからないけど、今ここにあるのは現実の世界よ。そんなに信じられないなら、自分の頬を引っ張るなりしてみれば?」 もっともな意見が提案されたので提案通りに上条は自分の頬をひっぱてみた。 「痛いですね。しかも目の前の光景が消えませんね。これは現実ですね」 「ねえいい加減に教えてくれてもいいんじゃないの? それともアンタは都合が悪いものでの書かれてたの?」 何も教えてくれないことに少しばかりイライラして上条を睨んだ。睨まれたあたりでようやく現実を受け入れた上条は表現できない不気味な表情を浮かべ、涙を流しながら美琴を見ると人の列に指を指した。 「あの列の方々、みんな上条さんたちを見に来ているようです」 「わたし…たち……え、ええ???」 いまいちよく理解できないが、そんな馬鹿なと上条の言葉を理解している自分がいる。それでも美琴はしらばっくれるが上条はそれを知らずに何が書いてあったのかを簡略にまとめていった。 「あの列は、上条さんと御坂の入学式を見に来ている列です」 「……………………」 そしてしばらくの間、先ほどの上条のように美琴も凍りついたのだった。 現実を受け入れたくなかった二人であったが、歩いているうちに入学式の宣伝のポスターや人だかりを見せられ嫌でも現実であると実感させられてしまった。そして完全にこれは現実だと受け入れた頃、二人は長かった通学路の最終地点であるとある高校に着いた。 「美琴たん。僕、どうすればいいんだ…」 「知らないわよ。さすがの美琴さんでも今回ばかりは予想外。さらに入学式に何が起こるかは私にもわからないわ」 まだ入学式が開始するまで二時間以上あるのに、見てきた悲惨な光景の数々。まるで超一流芸能人になってしまったようだと思いながら、上条はため息をつくことすら忘れてしまったほどのなにやら悪い予感を感じていた。 これはきっと不幸センサーですねと理解しながら、やっとたどり着いたとある高校の門をくぐろうとした時であった。 「いたぞ!!! 上条当麻と御坂美琴だ!!!」 自分たちがとってきた通学路とは逆の方向から聞いたことのない男の声が聞こえた。 そしてその声を合図に男の後ろからは一気に人の波が上条と美琴へ向かってきた。カメラを持つ男性がいれば、マイクを持つ女性。スーツ姿でメモ用紙を持った男性もいれば、ケーブルを持って走る男性など波の中には様々な役割を持つ人たちがいた。 記者団といち早く察したらしく、美琴はすぐさま上条の手を掴んで門をくぐった。だが美琴が出来るのはあくまでそれまで。ここから先の地理は生徒であり上級生の上条に訊かなければならなかった。 「ねえどこかに隠れられる場所ないの?」 「まずは玄関に入れ。そこの玄関に俺の下駄箱があるから、そこから学校の中に入れば」 最初は驚いていたがこのようなトラブルには毎度毎度慣れっこで世話になっていたため、切り替えるスピードも速い。すぐさま何をすればいいのかを判断すると今度は上条が美琴の手を引いて玄関先へと走っていく。その間も、後ろの記者団は逃がすまいと二人を追いかけてくるが一晩中走り回ったこともある仲であるから二人からすればこのような短距離はまったく問題ない。 上条と美琴は玄関の戸を開けると、上条の下駄箱に向かって走った。こんな状況でも律儀に外靴を入れて上履きに履き替えるあたり、おかしな部分で几帳面であるが今はこの場を乗り越えることだけを考えるべきだ。美琴は上条とそれに便乗する自分に心の奥で何してるのと一言だけ突っ込んでそれ以上は考えることをやめた。 「とりあえず、上に上がるぞ。このまま一階にいたら乗り込んできた時に厄介だ」 一階には職員室や事務の受付がある。しかしたくさんのメディア・記者団の前ではそれらはきっと何の障害にもならないだろう。というよりも学園都市が『外』の住人であるメディア関連の人間を引き入れた時点で学校側もそれを受け入れているのと同じだ。 警備員の先生がここに勤めていると聞いたことがあるが生憎、その人物である黄泉川は今日に限って別の場所で仕事をしている。そのため、今の記者団を無効化するような教師はここには誰もいなかった。のだが追われて余裕がない上条は黄泉川の存在を思い出せるわけなかった。 「ねえ、どこに行くつもり?」 「三階とかにある特別教室でやり過ごす。それで入学式の直前になったら、そこから脱出する。そうすればあいつらに絡まれずに参加できるはずだ」 上条と美琴は階段を一気にのぼると、二階の廊下を走っていく。誰もいない廊下はなぜか不気味であったが、今はそんなことを考えるよりも隠れられる場所を探す方を優先しなければならなかった。 上条は走りながら隠れられそうな教室を思い出しながら、廊下の突き当たりにある大きな教室を見つけた。 「しめた! 音楽室だ。確か入学式のリハで開いてるはず!」 入学式の入場では吹奏楽部の演奏と共に新入生が入場してくる。そのため吹奏楽部は春休みの期間中でも入学式用の曲を練習するため音楽室を利用して練習を重ねる。それから時期が近くなると会場となる体育館でリハを行ない本番に備えている。 吹奏楽部のことはさっぱりわからない上条であるが、そんなことぐらいは大体は予想がついていた。そしてリハは今日であったはず。 あてずっぽだが、多分あっているだろうと予想すると上条は突き当たりのある音楽室のドアノブに手をかけた。それからすぐにドアノブを引いて中に入ろうとした。 だが扉は一切開かずに鍵がかかっていた。 「なん…だと…!?」 扉が開いていたことを想定したため、開いていなかったことは予想以上にショックであった。 それもそのはずだ。昨日のうちに吹奏楽部の面々は楽器を会場に移動させ、今現在リハの練習中であることを上条は知らなかったのだ。なので音楽室の扉が開いているわけもなくどんなに頑張ろうが鍵がないと開かないのが現実だった。 「くそ。だったら三階にあるパソコン室でも」 と上条と美琴が階段を上るために背後を向いた瞬間だった。 「いたぞー!!!! 上条当麻だ!!!!!」 上条の名前を叫ぶ声が三階から聞こえた。上条がその叫びを耳にしたのと同時にバレンタインデーに起きたある不幸な追いかけっこをした記憶が頭をよぎった。 まさかと信じたくない気持ちで上条は声の方向へと視線を移した。そこにいたのは上条と今年同じクラスになった隣の男子生徒であった。 「やべえ!!! 急いで逃げねえと」 「え??? え……??? なに、なんなのさ!!??」 状況を判断できない美琴は上条に手を引かれるのみ。さきほどのメディア関連の記者団たちだけではなく、何故同じ学校の生徒たちからも逃げなければならないのか、美琴にはよくわからなかった。 一方の上条は不幸だ不幸だと何度も何度も思いながら、来た廊下を戻って走る。のだが一階には記者団がいて三階には学校の生徒たちがいるはず。つまり上にも下に逃げるようにも階段は一切使えない今、いまいる二階で追っ手を振り切るしかないのだ。 しかし上条は高校の生徒だから知っていた。あと残っている教室は使われていない空き教室と普通に生徒が使う教室のみであり、そこには鍵もなければ隠れられそうなスペースがないことも。 空き教室は数箇所にあるが、すでに飛ばしてしまっている。だが戻ったところで空き教室には何もない。あるのは使われていない机と椅子が置かれているぐらい。さらに空き教室の半分は何かの行事で使うときのために何も置かれていない広々とした空間だけになっている。そこに隠れようなんて思考回路は幼稚園児でも持っていないであろう(能力者は別として) 同様に普通の教室も隠れられる場所などない。綺麗に並んだ机と椅子、黒板の前にある教卓には隠れられるわけなどない。他にあるのは教室の正面にある大きめの黒板と後ろにある掲示物を張るための壁。それ以外には何も……。 (あれ……?) 教室にある物品に一つずつ思い出していたとき、一つだけ隠れられそうな場所がありそうなことに気づいた。 そこの大きさは上条と美琴の二人でなんとかなりそうだが、問題はその中身だ。だがそこまで考えて下から来る音と上から聞こえる叫び声が上条の考えていた問題を一気に吹き飛ばした。 (こうなったら、破れかぶれだ! 当たった砕けろ!!) 最終的に上条はやけくそになりながら近くの教室の戸を開けて、痕跡を残さないように静かに閉める。そして美琴の手を引いて教室の後ろにあるそれの元まで歩いていった。 「いたか?!」 「いいや、いないぞ!! クソ、どこへ行った上条当麻!」 「カミやんは絶対に学校内にいるはずや。だからみんなで手分けしけ探す」 「それに記者団の人たちもいる。見つかればその人たちを利用して見つけ出せるはずよ」 「よし!!! それじゃあ手分けして探し出すぞ!!! 散開ッ!!!」 (まるで軍隊みたいだな。これは見つかったら怖いぞ) 上条は隠れた場所から聞こえる青ピアスと他の面々が指示を出して自分たちを探している会話を聞いていた。何度も学校の生徒たちに追われたりしていた(追われる理由は不明)が、こうやって指示を出している状況に遭遇したのは今回が初めてだ。 初対面なのか何度も顔をあわせた仲なのかよくわからなかったが連携が取れている以上、探している生徒は自分を見つけたら真っ先に襲い掛かってくるか救援を呼ぶだろう。そうなると無能力者の上条ではその危機を脱出できないのは確実だ。 同じく追われている超能力者の美琴ならば、この学校の生徒が束になっても負けないだろう。しかしこれから二時間後あたりに控えている入学式前に騒ぎになる可能性があったので、さすがにそれだけは避けたかったので能力を使用させないようにずっと右手で美琴の手を握っている。 だが美琴からすれば、追われてばかりいるのはイライラの原因になりつつあるので手っ取り早く能力で追い払いたいのが本心であった。 「ねえ、私の能力で」 「ダメだ。お前の能力は強すぎるし騒ぎになる。それに『外』から来た人間に能力を使ったら問題になるぞ」 「そ、そう……だけど…」 「いいからこのままでいろ。ちょっと窮屈だけど」 二人が隠れていた場所は掃除用具箱の中だ。大体の教室の後ろに配備されており中には清掃用具がたくさんしまわれている教室の物品の一つ。 上条が見つけ出した以外と見つかりにくい隠れ場所だ。小学校時代であれば子供がよく隠れるために使う密かな隠れ家であるが、高校生にもなればここに隠れられると考える生徒は意外と減るものだ。簡単なのだが意外と見つからない小さい頃からの隠れ家に上条と美琴は隠れて、記者団と高校の生徒たちをやりすごそうとしていたのだ。 しかしここには欠点がいくつかある。まず埃がまんえんしているこの空間は、くしゃみが出てしまいそうで少し怖い。さらにほうきやちりとりなど様々な掃除用具で占められているせいで動ける場所は限られている。さらにさらに周りは音がしやすい薄いプラスチックの壁であったので無闇に動けば音でばれてしまう。そのため動くにも音を立てないように慎重に動かなければならなかった。 「…ねえ……これさ、きつくない?」 「あ、ああ………きついな」 密着状態である二人の顔の距離は10㎝もない。話せば互いの息が顔をくすぐり目の前を向けば相手の瞳の中に自分が写る。 身体は抱き合ってはいないが、だが上条の両手は美琴の顔の横にある壁にそれぞれ置かれ、押し倒そうとしているように見えてしまう。 さらに美琴の両足の間に上条の片足が入り、美琴の太ももに上条の下腹部が当たっていた。 (あたってるッ!? あたってるって!!??) 美琴がきついと言ったのは足の問題があるからである。 生暖かい感触が太ももに触れているのは状況は興奮で動揺が入り混じったパニック状態であった。しかも今日は入学式ということなので、気分転換に短パンを履かずに着てしまっていたので、上条は布越しとはいえ美琴からすれば肌に直接だったので余計にダメージが大きい。 さらにそんなことも知らない上条は、むず痒さで時折身体を動かす。それがさらなる刺激を呼びこのままでは意識が飛んでいってしまう危機感を感じていた。 「こ、こらぁ。動かないでよー」 「そう言われてもな……動かないとムズムズしないか?」 「それはそうだけど、こんなに近くだから私まで痒くなるじゃない」 「??? お前、いつも家じゃべったりのくせに何言ってるんだ?」 「ッ!!!?? 時と場合があるって言ってるでしょ、馬鹿!!!」 (というよりも、なんで私まで巻き込まれてるのよ) 手が使えれば上条の頭を叩いている場面だが、左手は上条に握られ開いている右手も動かそうにも視界が悪く動かそうにも音を立ててしまいそうで動かせなかった。なので上条を睨みつけるしかできなかった。 「あのー美琴さん。そんなに睨まれても」 「うるさい! アンタが馬鹿で鈍感なのが悪いのよ!!」 「??? いまいちよくわからないのですが、上条さんは何かしてしまったのでせうか?」 「ッ!!! なんでこんな状況で前みたいにボケられるのよ!!! 実はアンタ、私とこうやって隠れるのを楽しんでるんじゃないわよね?!」 「そんなわけあるかよ! 第一、見つかってボコされるのは俺だけなんだか、楽しめるわけないだろう!」 小さな声で言いあう二人は、まるで過去の関係に戻ったかのような痴話げんかを始める。しかもさきほどの緊張感はもう二人にはなかった。 「本当かしらね? どうせアンタのことだから私も一緒に道連れにするって腹じゃないのかしら?」 「俺がお前を道連れにしてどんな得があるんだよ。それに道連れにしようとしても学校のやつらは俺だけを狙ってきてるんだし、もし何かあってもお前には能力があるんだろう」 「そういう意味じゃないわよ。アンタは私と一緒に逃げて一緒に苦労をさせようって腹かって訊いてるのよ」 「だから俺に何の得があるんだよ。一緒に苦労を共にして俺はお前に何をさせようってんだよ?」 「それは……あ、アンタがわかってるでしょうが」 「もう言ってることがめちゃくちゃだな。何度も言うがお前と一緒に逃げて俺が得することはない。今までだって追われている時にお前と一緒に逃げてないだろう。なのに付き合い始めたから一緒に逃げますなんてこと、俺がするかよ」 確かにと美琴は上条の言うことに納得は出来た。だがここで終わるのは何故だか負けるような気がしたので、そんなことは口には出さなかった。 「じゃ、じゃあ何よ。アンタは私と一緒じゃ嫌だってわけ?」 「はぁ!!!??? お前、話が飛躍しすぎてないか?」 「いいから答えなさい!!! 一緒に逃げるのは嫌なの?」 知らない間に、上条の言うことに頷きたくないおかしな対抗心を持ってしまった美琴は、話の方向を一気に急転換させた。ちなみに負けたくない対抗心は、美琴が持つ負けず嫌いな性格と過去の上条との勝負で生み出された感情であり、想いが叶い結ばれた今でも残り続ける感情であった。だが皮肉なことに美琴は未だにそんなことに気づいておらず、今の上条はそんな対抗心の被害を受けてしまっている状況であった。 「俺は別に嫌じゃねえよ。今回は偶然だよ、偶然」 「そ、そう……偶然ね、偶然」 しかし偶然ではなく必然であったことを二人はすっかりと忘れている。 今の二人は、とある高校の生徒に見つからないように隠れているだけだと考えているが、外には記者団たちがいることを忘れている。隠れる前は上条も美琴もそのことを覚えていたのだが、美琴が上条を睨みつけたあたりからそのことをすっかりと忘れていた。 だから美琴は今回の逃亡劇は自分は被害者だと途中から思い込んでしまっていた。その結果がさきほどの嫌かどうかの質問であった。 (偶然…か。それもそうよね………って何を期待してるの、私は) 上条の返答に美琴は落胆した。でもなんで落胆したのかよくわからなかった。 一方、答えた上条はと言うと美琴が悲しそうな表情を浮かべていたのを見ていた。何かを裏切られた悲しそうな表情、一体何を言われるのを期待していたか、上条にはよくわからなかった。 でも思ったことは一つだけ。そんな顔は見たくない、と。 「…………美琴」 上条は空いていた左手で美琴の頬を優しく撫でる。そして、優しく笑うと唇を優しく押し付けて三秒数えて離した。 「あ……な、何…よ」 「悪い。でもお前が辛い顔を見ると、どうしても耐え切れなくなって…つい」 「辛い……………顔?」 「こんな状況でも俺はお前のそんな顔を見せられたら放っておけないんだ。何かに耐える顔や悲しそうな顔は見ていると……心臓を鷲づかみにされているみたいな感覚に襲われて……俺」 「………………」 「………悪い。こんな状況だって言うの、変なこといって。俺、なんかおかしくなったみたいだ」 (なんでこんなことを言ったんだ?……わからない………けど気持ちを抑え切れなかった) 心の中で何かを抑え切れないことがあったのは、上条が一番理解している。感情的になることは多々あるが吐き出さないといけない不快感と胸の痛みは感情的になったときには感じたことのないおかしな感覚であった。 理性が崩壊した、本能的に言ったのとは違う別のこと。これをなんと言えばいいのか、なんと例えるべきなのか、上条にはわからなかった。でも吐き出してみると不思議と嫌な後味は残らなかった。 「………当麻」 「悪い……わる、んんっ!!??」 上条の言葉の途中で美琴は上条の言葉を飲み込んだ。キスという愛情表現で。 「それは……私も同じ。アンタがそんな顔してちゃ私も辛いわよ、馬鹿」 「美琴……」 「だから私も笑うから、当麻も笑って。そしたら私はもっと笑えるから」 そういうと美琴は上条の優しく微笑んで、もう一回キスをした。 (敵わない、な。まったく、どんどん強くなっていっちまう) そしてそれに励まされる自分は弱くなっていくように思えた。でも二人は互いを強いと思い、自分を弱いと思ってしまう。だから二人は離れられなくなっていく。自分の光、強さの象徴から……。 それでも上条と美琴はいいと思えた。なぜなら……。 「「好き」」 二人は一緒に笑って言える事であったから。 そして今度は二人は目を瞑って唇を近づけていき……。 「それで……いつまでこれは続くのかしら?」 「「!!!???」」 唇がふさがった瞬間、上条はバランスを崩し後ろに崩れ、美琴も上条に釣られて倒れてしまった。その結果、扉は開いてしまい上条は唇を押し付けられたまま美琴に押し倒されてしまった体勢になってしまった。 「…………………」 「……………………ちゅ。え、えーっと…」 唇を離しあたりを見渡すと、二人を取り囲むようにとある高校の生徒たちが立っており、廊下からは記者とテレビカメラがこちらを見ていた。 「…………………………あ………あ、の」 「それでは上条当麻、尋問の時間と行こうか。安心しろ、これも入学式のイベントの一環だ」 その中の代表者として吹寄制理は上条に死刑(にゅうがくしき)の始まりを告げた。もちろん、こんな状況では上条も美琴も何も言えず、吹寄の言葉に頷くしかなかった。 そして御坂美琴こと超電磁砲の入学式は始まった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/fortissimo
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/747.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少女のマフラー計画 「なあ、ひとつ聞いておきたいんだけど。このお詫びっていつまで有効になるんだ?」 「はぁ?だからそれは私がアンタに、その…。(うー、よくよく考えたらとんでもない事言ってるわよね私…。)」 「だからそれは建前だろ?お前自分で可能性0だって言ってるだろうが。それともあれか、俺は一生お前のご機嫌取りをしろと言うんでせうか?」 「いっ、一生って!そんなわけ…!(でも一生こいつに尽くされるのも、うふ、うふふふふふふふふ。)」 「おーい御坂サーン?もどってこーい?おーい。」 こいつは一生俺をいじめる気なのか?そう思い早くも自分の軽率な約束を後悔し始める。 「…はっ!え、ええとなんだっけ?」 「だから俺はお前をいつまで、まあ、口説けばいいんだよって事だよ。期限決めてくれないとさすがの上条さんも心が折れますよ。 …こっぱずかしいんだから何度も言わせるなよ。」 ブツブツいいながら上条はそっぽを向く。 「…まあ仕方ないか。うーん、 …じゃあ今月いっぱいにしましょうか?キリもいいし。その代わり今月は可能な限り私に尽くすのよ!」 (ふふ、こうすれば自然にクリスマスの約束も抑えられるわよね!冴えてる!今日の私は冴えてるわ!) 「今月って、まだ3週間以上あるじゃねーか!…不幸だ。」 「ふふーん、乙女の唇は安くないのよ!むしろその程度で済んで得したと思いなさい。」 「はいはい、わかりましたよ…。ミコトサマにシタガイマスヨ。」 (くそー、完全にコイツに振り回されてるな。悔しいからちょっとからかってやるか。) 「ってことはだ、来月もお前に尽くせばまたキスさせてくれんのか?」 「ブーーーーーーーーーー!!!な、なななななななななななになになに」 上条の予想外の発言で一瞬で顔を真赤にし狼狽える。 完全に呂律も回ってないがまあ無理もないだろう。 「プッ、クックックッ。冗談だって冗談。冗談だからからかってごめんなさいすいませんでしたああああああああああ!!!!」 「うるさーーーーーーーーーい!!!死ねこのド馬鹿ーーーーー!!!!」 電撃を放つ少女と逃げ回る少年から少し離れた位置で彼らを見つめる人影があった。 一人は電撃を放つ少女と同じ容姿の少女、もう一人はその少女をそのまま幼くした容姿の少女。 その後ろには杖をついた白い少年が立っていた。 「一時はどうなるかと思いましたが結局ラブコメになるんですね、とミサカはやれやれと肩をすくめます。」 「昨日は文字通り背中を押してあげたのに逃げ出しちゃったからね、ってミサカはミサカは妹を見る気持ちで溜息をついてみる。」 「お姉さまはああ見えてかなり奥手ですからね、とミサカは我が姉ながら情けなく思います。」 「でも本当に良かったの?ってミサカはミサカは今更ながらに聞いてみたり。」 「シスターズはあの方と同じぐらいお姉さまも大好きなのです。ですから、お姉さまには笑っていて欲しいのですと、ミサカは、ミサカは…。」ポロポロ シスターズは上条当麻と御坂美琴、そのどちらも大好きな存在だ。 できる事なら二人共から愛情を注いで欲しい。 だがもし自分達の誰かが上条当麻に一人の女性として愛されたら、御坂美琴は自分達に愛情を注いでくれるだろうか? おそらくは変わらず愛情を注いでくれるだろう。 なぜなら彼女は優しすぎるから。 きっと自分の心を押し殺し、自分達の知らないところで涙を流すだろう。 だがそれは決して認められない、絶対に許容できない。 自分達が原因で大好きな人を泣かせてしまう事には耐えられない。 ではどうすれば大好きな人達が笑っていられるか? 簡単なことだ、自分たちが身を引けばいい。 きっとこの事を知れば彼女は怒るだろう。 それでも、私たちが大好きなお姉さまには笑っていて欲しかった。 「…話はすんだかァ?そろそろ俺は帰りてェンだが。」 「泣いてる下位個体に対して酷すぎない!?ってミサカはミサカはあなたのデリカシーのなさに呆れてみたり!」 「あっそ、そいつはスイマセンデシタ。…ところでよォ。」 「なんでしょう?とミサカは鼻をかみながら尋ねます。」チーン 「晩飯用の肉をちっとばかし買いすぎちまったンだわ。捨てるのももったいねェし、誰か処理に付き合う奇特なヤツはいねぇもンかなと。」 「…………ハァ。」 「…………クスッ。」 「ンだよ?」 「ほんとあなたのツンデレは極まってるよねってミサカはミサカは、痛い痛いグリグリはやめてー!」 「クソガキ!テメーは少しだまってろ!…で、どーすンだよ?」 「やけ食いしたい気分ですので是非お手伝いしましょう、とミサカは早く行きましょうと促します。」 「わーい今日は焼肉パーティーだー!あ、どうせなら今学園都市にいるシスターズも誘っていい?ってミサカはミサカは上目遣いで聞いてみたり。」 「同じ顔の人間が一箇所に集まって焼肉パーティーとはシュールですね、とミサカはあなたの意外な度量に感心します。」 「既に呼ぶのは決定してンのかよ。…勝手にしろクソガキ共。」 実は他のヒロイン達を妨害するために数百人のシスターズが学園都市に集結していた。 30分後、そのまさかの人数の為の肉を調達するために、白い少年は走りまわることになるのであった。 「お姉さまの御武運をお祈りします、とミサカは肉を食みながら…モグモグ。」 「クソッタレがァァァァァァァァァァ!!!!!!」 「ハァ…ハァ、結局こうなるわけなのか。いつも通りとは言え不幸だ…。」 「うっさいわね…ハァハァ。あんたがあんな、変なこと言うから、いけないんじゃないの…。」 結局あの後しばらく走り込みをし、上条がタイムセールを逃したことに気づいたところで鬼ごっこは終了した。 「タイムセールを逃すごとに俺の寿命が縮みと言っても過言じゃないんだぞ!この貧乏学生の辛さがお前にわかるか!?」 「そんな大げさな…。いくらアンタがレベル0でも生活に困らない程度には奨学金もらってるはずでしょ?」 「いやまあ、上条さんにも色々ありましてね?」 「色々って…怪しいわね。」 「な、何のことでせう?」 「ふーん…。(怪しすぎるわね…。でもこれは逆にチャンスね…。)ところでアンタ料理できるわよね?」 「そりゃ貧乏学生に自炊は必須だからな。こう見えても結構自信はあるけど、それがどうかした?」 そっかそっかと言いながら、御坂は獲物を追い詰めるように笑い出す。 ただし目は笑っていない。 「それじゃ私に尽くす最初の仕事として、アンタの手料理を食べさせなさい。」 「え゛」 「なに、嫌だっていうの?」 「いやー、だってお前、寮で食事出るだろ?」 「最近寮の食事飽きちゃったのよねー。」 「それに門限もあるだろうし…。」 「それは黒子に頼めばなんとかなるわよ。」 「いやでも「い・い・か・ら・ごちそうしなさい。」…はい。」 「まあ材料費ぐらいはあんたの含めて私が出してあげるから心配しなくていいわよ。」 (ふふ、これでついにコイツの部屋に!あ、これはあくまでも隠し事をしてるコイツをとっちめるためなんだから! でもでも!二人っきりなんだから間違いおきちゃったりして!でも私たちまだ学生だし…。でもでも!コイツから迫ってきたらどうしよう!) 「うふ、うふふふふふふふ…。」 などと妄想にふけっている御坂の隣で上条は頭を抱えていた。 (うう、やっぱりインデックスの事がバレるのはやばいよなぁ。なんて説明すりゃいいんだよ…。) 遠くない未来、頭を噛み砕かれ、レールガンで吹き飛ばされる自分を想像して恐怖に震える上条であった。 「で、なんでコイツがここに居るわけ?」バチバチ 「なんで短髪がここにいるのか説明して欲しいかも!」シャキーン 「いや、これには大宇宙よりも深淵な訳がありましてですね。出来ればワタクシメの言い分を聞いていただきたいんですがとりあえずごめんなさいすいませんでしたああああああああああああ!!!!」 そう言って極限まで無駄を省いた動作で土下座をした。 しかしそんな事で2人の追求が止まるわけも無い。 「んっんー、別に私は責めてるわけじゃないのよ?どうしてこの子が、アンタのとこに、いるのか?それを聞きたいだけよ?」 笑顔で極めて(表面上は)優しい口調で上条に問いかける。 もちろん目は笑っていない。 「そんなの簡単なんだよ!とうまと私を一緒に住んでいるんだから!短髪こそなんで部屋に来てるの!?」 「ば、ばか!インデックス!」 「え、い、い、いい一緒に住んでるって、え、え、うそ…。」 薄々予想はしていたがいざ現実を突きつけられて御坂は目の前が暗くなっていくのを感じた。 (一緒に住んでいるって、それって、この子とコイツは、うそ…。) そのことを認めるのが怖い。 でもはっきりさせなくてはいけない。 「一緒に住んでるって…、それって、二人は、こ、恋人同士、なの?(怖い、聞きたくない、でも聞かないと…。)」 「はぁ?そんなわけないだろ。なんでインデックスが俺とぎゃあああああ!なんで俺は噛み付かれてるんですかあああああ!!!」 「とーうーまーのーばかああああああああ!!!」 「ぎゃあああああああああああああ!!不幸だあああああああ!!!」 「……………ぷっ、くっくっく、あはははははは!」 (なーんだ、違うのか。心配して損しちゃった…。でもよくよく考えればそんなわけないわよね。このじゃれ合いも兄と妹ぐらいにしか見えないし。) 「ぎゃあああああ!み、御坂!見てないで助けぎゃああああああ!」 「とうまはまたそうやってーーー!!!」 「あははははははははは!!」 「はー、おかしかった。アンタも大変ね。(本当に大変なのはあの子のほうだけど。)」 「うう、御坂サン酷い。笑ってないで助けてくれればいいのに…。」 「あはは、ごめんごめん。アンタ達が本当の兄妹に見えて微笑ましくって、ついね。」 「なんだよそれ。…まあ確かに妹みたいなもんだよな。」 「むーまたとうまはそうやって…。いつもの事だけど、やっぱりとうまはとうまなんだよ。」 そういって半ば諦めたように溜息をつく。 「それで、インデックスのの事なんだけど…。」 「アンタの事だからどうせその子を助ける為に家に置いてるとかそんなとこでしょ?」 「あ、ああ。まあそんなとこだけど。」 「やっぱりねー、どうせそんな事だろうと思ったわよ。」 呆れたような口調だが、どうやら機嫌はいいようだ。 そんな様子の御坂を見て上条はほっと胸をなで下ろす。 どうやら生命の危機は回避できたようだ。 (うーん、でもやっぱり一緒に住んでいるアドバンテージは大きいわね…。あの子もかなり可愛いし…。これを縮めるためには…。うーん。) 「おーい、どうした?急に黙り込んで。」 「え、ああごめんね。なに?」 「お前ここのところなんか変じゃないか?妙に優しかったり、急に上の空になったり。」 「べ、別になんでもないわよ!ただの気まぐれよ、気まぐれ!」 「はぁ、別にいいけど。それじゃそろそろ俺は夕飯作ってくるぞ。これ以上飯が遅くなったらまたインデックスに噛み付かれちまうしな。」 「とうまー、もうそろそろ限界かも…。」 「あーそういえばそんな約束だったわね、忘れてた。お腹すいたから早くしてねー。」 「とうまー、早くしないと間違ってとうまを噛んじゃうかもー。」 「お、おまえら…。その扱いはあんまりだろ…。」 「ねぇアン…インデックス、ちょっと話があるんだけど。」 「私は短髪になんか話はないんだよ。」 「アンタはなくても私にはあるのよ。…アイツの事でアンタと少し話がしたいの。」 「とうまの事ならしょうがないんだよ。そういえば短髪がなんでここに居るかも聞いてないしね。」 「いいわ、それを含めて話をするから。…ここじゃちょっと話せないし、外に行きましょ。」 そう言って二人は立ち上がり外に行こうとする。 「あれ、どこに行くんだ?もう少しで料理出来上がるぞ?」 「んーちょっと女同士の内緒話?すぐ戻ってくるから待ってて。」 「はいよー、風邪引かないようにしろよ。」 「とうま、先に一人で食べたら許さないんだよ?」 「はいはい分かったから行ってこい。」 「話は簡単よ。アイツの事をどう思っているのかって事。…私は、アイツの事が、好き。アンタはどうなの?」 「私だってとうまの事が好きだもん!」 「やっぱりそうだとは思ったけど。気づかないのはあの鈍感馬鹿ぐらいのモンよね…。」 「「ハァー…」」 二人してその鈍感馬鹿を想い盛大にため息をつく。 「話したかったのはその確認をして、アンタに宣戦布告するためよ。…私は絶対に勝つわ!」 「私だって絶対にとうまを他の女になんて渡さないんだよ!」 「話はそれだけよ。それじゃそろそろご飯出来そうだし戻りましょ。」 「ちょっと待つんだよ。まだなんで短髪が来たのか理由を聞いてないんだよ。」 「うっ。」 御坂としてはなるべくこの話はスルーしたいところであった。 あんな事があったなんて話せるわけがない。 だから先に宣戦布告をして気を逸らせようとしたのだが…。 「む、その反応はすっごく怪しいんだよ!何があったのか言うんだよ!」 「えー、えーっと、ね。ちょーっと不幸な事故があってね?そのお詫びで、今月いっぱいアイツが私に尽くすことになったと言うか…。」 「い、一ヶ月!?ちょっとの事でそんなになんて、信用できないんだよ!正直に言うんだよ!」 「あ、あんなこと話せる訳ないじゃないの!だめ、絶対にそれは言わないわ!」 顔を真赤にして狼狽える御坂をみてインデックスは顔を青くする。 「(と、とうまは短髪になにをしちゃったわけ!?)う、うう。とーうーまあああああああ!!!!」 そう叫びながらインデックスは猛スピードで部屋へと戻って行った。 その後今日最大の悲鳴がその部屋から聞こえることになった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少女のマフラー計画
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2198.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の告白成就 <第二章> 学校に着いた上条は、まるで蝉の抜け殻のように本体がどこか遠くへ行って 授業の内容はちっとも耳には入らなかった。まさに「紙条」である。 そんな状態に陥ってしまったのは先ほどの美琴の言葉と、その後彼女から送られてきた一通のメールにあった。 『 送り主 御坂美琴 』 『 ほんとにゴメン。結構朝の時間ヤバかったのよ。 怪我してるかもしれないアンタを置いてったのはさすがに悪いと思ってる。 でもアンタも気を付けた方がいいわよ?…本当に。 助けてくれる人がいつも傍にいるなんて、そんなにないことなんだからね?ヒーローじゃあるまいし… ほんと、アンタの右手は神の御加護も打ち消すんでしょ?そしたらワタシといるとどんどん不幸になっちゃうわよ? もううんざりよ…なんせ、アタシには神様が付いてるんだからね♪打ち消されたらたまったもんじゃないわ! ……まあ、私がここんところ連続で運勢第一位なの、テレビ見てたら知ってるでしょ?アタシ、神様に愛されてるのかもね。 んでもって、水瓶座のアンタは連続で最後尾よねm9(^Д^)プギャー ご愁傷さま~~、キャハ☆ …こういった厭味ったらしい女より、もっと素敵な人がぜぇーったい見つかるわよ……きっと。 まあ時間がないっ!ときてるから率直に言うわよ。告白の返事は【NO】ってことで。 それでね、なんか告白受けちゃうとさー、どうも今までの関係が崩れちゃいそうなのよね。 だからしばらく距離置きましょ?取り敢えず一ヶ月くらいでOK? それじゃ、次会うときは私の卒業式くらいよね、さみしいなー。+゚(゚´Д`゚)゚+。 絶対私の晴れ姿見に来てよね!忘れんじゃないわよ~! じゃあねー P.S. 返事よりも…分かったらまず行動で示しなさいよ~ 』 … やけに長い文章だな、真面目に授業を受けてるのか? ――そんな感想は流石に出なかった。 告白に失敗したことが分かった上条にはもう明日が見えない。もう留年だろうが関係ない。 ついに、夢が正夢になってしまったのだから… ・ ・ ・ そんな上条を気にして、友人二人は密かに話し合っていた。 (かみやんどうしたんや?また不幸なことでもあったんかい?) (いんや、アレはそんな些細な不幸で悩むタマじゃないぜよ。) (…さては何か!ワイの小萌先生に『上条ちゃん課題提出できなかったので留年ほぼ確定なのですよ~』 と言われたことまだ気にしてるのかいな!) (そうでもないようだにゃ~ってそれは初耳ぜよ!) (ワイに小萌先生の事で知らない事なんかないんやで~!しかもまた小萌先生と同じクラスなるかも、なんて… 羨ましいにも程があbbbbbb) (どうした変態スネーク、応答せよ、応答せよォォ!…ハッ!) 留年という言葉にも、今現在過敏になりつつある上条にとって、手を伸ばせば届く距離まで 迫って顔色を伺おうとする友人達の優しさすら虚しく、禁句を容易に放ったロリコン野郎には 鉄槌を下し、それを聞いてしまった男もまた華々しく散らした…。 「…ったく、何やってんだよお前ら。」 「ぐふっ、…カミヤン、今日はどうしちまったんだ?やっぱり情報は正しかったのかにゃー?」 「どこから漏れたのかは知らないが、まだ留年と決まった訳じゃねえからな。『ほぼ』だからな。」 「…いや~、久しぶりに本気の一発入ってもうた。だがまだワイは負けとらんで~! 先生と共になら例え火の中・水の中!、ワイは留年もなんのそのや~!」 「お前はいい加減そういう思考はやめろ!」 「そこの三馬鹿、黙って席に着きなさい!HRもう始まるわよ!」 ――俺はひとまず御坂とのことを、頭の片隅に置いておくことにした。 ◇ HRは短時間で終わり、そろそろ下校しようと思った時 先程小萌先生と、ある約束をしたのを思い出した。 『今日は補習も課題も出しませんでしたので、真っ直ぐ帰宅したらワタシのところに来てください。 今後の上条ちゃんのことについて重要なことを述べさせいただきますよー』 「…何かとてつもなく嫌な予感がするのですが、」 魔術師との戦いが一段落してからこれまで毎日補習・課題の繰り返しで、ろくに飯も食えないときがあったのだ。 こんな身近な幸福さえも疑ってかかってしまう。特に上条の場合はなおさらである。 彼には「幻想殺し」という摩訶不思議な能力を持つ右腕があるが、その能力は何も異能にしか 効かないわけではない。先ほど美琴が言ったように、他に効果を及ぼすモノがある。 『神の御加護』と『運命の赤い糸』を打ち消してしまうのだそうだ。 伝聞形式になってしまうのはその確証がないからである。しかし信憑性は非常に高くなった。 『運命の赤い糸』はともかくとして、常に不幸な上条にとって滅多に訪れることのない幸運は、 美琴との間におけるとんでもない不幸の前触れである。何かあると思うがこれ以上はないと思っている。 おそらく、幸運が前に来てしまったのだろうと、上条はまた無理矢理解釈した。 ――という訳で、ぶつぶつ独り言を吐いていく内に、俺は自宅の玄関の前まで来てしまった。 ガチャッ、 「…ただいまー」 … … … バタン。 当たり前の事だが、一人暮らしの学生マンションに帰ってきても出迎えてくれる人はいない。 それなのに彼が律儀にも帰りの挨拶を無人の部屋にしているのには理由がある。 彼には数ヶ月前まで同居していた銀髪のシスターがいたのだ。 その彼女もまた小萌先生の計らいで先生の住むアパートに居候させてもらっている。 何しろ調理・掃除・洗濯がまともにできず、一人ではここ科学の町では生きられない程、生活力の乏しい少女だったのだ。 先生も色々彼の負担を考えた上でそういう計画を立案してくれたのだろう。 だが彼女には他の人が持ち得ない優しさがあったりもして、少なからず以前の生活にも愛着があった。 もしその彼女が帰っていたときに、その優しさに触れるだけの態度をこちらが示さないと、彼女は年相応の 態度として上条の頭にかぶりつく。これが彼の不幸であり、今なお帰りの挨拶を忘れない理由であった。 ・ ・ ・ 一通り荷物の整理を終えて、夕飯も軽く済ませた上条は 小萌先生のアパートに行く間の道で、メールの内容をもう一度咀嚼してみた。 (…確かにここんところ、アイツの運勢が飛躍的に上がったのは頷けるかもしれないが、 それでも神様に愛されてるって、流石にオカルトもいいところだろ……) ――だが、確かにその通りなのである。 時は数週間前に遡るが、上条は知る由もなかったのだ。 ――美琴が本当に神様に愛されてしまった真の理由を… ◇ ◇ ◇ 小萌先生の住むアパートに到着すると、インデックスがまず一番に出迎えてくれた。 ただでさえ上条は人一倍不幸な目に逢うことが多いので、心配していたと見える。 「遅いんだよとうま!どこで道草食ってたの!」 「お言葉を返すようですが、上条さんはどこかのシスターさんのように食べられるからといって 道に生えてる草なんかは食べませんのことよ?」 「そういう意味じゃないかも!まったく心配してたんだよ!」 「…ああ!そっちだったか。すまんすまん」 「二人ともー、そろそろこっちに来てくださ~い」 玄関で賑やかな声を聞き、呼びかけた小萌先生は焼肉の準備をしながら待っていたようだ。 「あれ、もしかして俺待ちでしたか?」 「そうなのですよー、インデックスちゃんはお腹からスタンドが出てくるような音を出して ずっと待ってくれてたのです」 「スタンド?」 「そっ、その話はいいかも!早くお肉食べよう、とうま!」 言われるがまま卓を囲むように座らされた上条に、「俺夕食済んでる」の一言を言う隙は与えられず 仕方なくその場の空気に同調した。 (まあ、どうせこの分量ならインデックスが残ったもん全部食べてくれるだろ) 以前は暴食気味だったインデックスも、このところは少し自重するようになってくれた。 先生の家に居候するようになったからではない。彼女の持っていた魔道書の毒が取り除かれたためである。 つまり、今のインデックスは103000冊の魔道書の毒に冒されずにいるのである。 無くした訳ではない。彼女に掛けられていた術式『自動書記』が今のインデックスに制御できるようになったらしいのだ。 そして自動書記の制御に伴い、彼女を内側から蝕んでいたと思われる魔道書の毒は体内で消滅できる仕組みになった。 魔術も本来備わっていた分が使える。鉄壁の防御結界『歩く教会』も元通りになった。 これらは全て上条が望んだことであり、記憶を失った少年が交わした約束を、守ったことにもつながっていた。 上条は普段味わうことのできない高級肉を二、三切れ食べたところで箸を置き、小萌先生の方に向き直って座った。 「先生、この催しは俺に普段以上の努力で頑張ってくれという励まし会のつもりなのでしょうか?」 「その通りなのですー。上条ちゃんは留年にならないために今必死になって勉強頑張っているようなので 先生も奮発しちゃったのです」 「……冗談はやめてください。先生まだ一滴もビール飲んでないじゃないっすか」 上条の言う通り、励ましや祝いの席で小萌先生がビールを飲まないのは珍しい。 だから受け狙いでそれらしく聞いてみた。 「しっ、失礼ですよ上条ちゃん!これは制限してるだけなのですよー!」とでも言ってくれたら良かったのだが、 突っ込むべき小萌先生は箸を持ったまま黙ってしまった。 少し間を置いて、切り出した。 「鈍感な上条ちゃんにしては上出来なのですー、これは明日しっかり課題を提出してくれる前触れでしょうかねー?」 「先生しっかりしてください。明日は祝日ですし、課題は出さない約束でしょ」 「…」 「先生、本当のことを言ってください。俺は覚悟できてますから」 真剣な眼差しで逃がさないように睨んでいる俺に、先生は固く結ばれていた口を開いてくれた。 「これは今日の内に決まったことなのですが…」 ◇ 俺が小萌先生のアパートを出る際は、お腹を膨らませたインデックスは横になって気持ちよさそうに寝ていて、 小萌先生も俺に話をした後は躍起になってビールを四・五本瓶ごと飲み干し、酔いつぶれていた。 彼女等を起こさないようにそのまま布団をかけて来たので、風邪を引く心配はしなくて大丈夫だろう。 大丈夫じゃないのは自分だろう。激しい吐き気と頭痛、それに何だか疲労が蓄積している。 酒を少し飲んだからかもしれないが、――問題は先生の口から出てきた言葉にあった。 『留年の可能性があったのですがその話は無くなりました 何でも私たちには説明できない事件や昨年の戦争に上条ちゃんが関わっていたので、 学園都市に子供を預ける保護者達が不信に思い、上条ちゃんの経緯について調べたそうです その結果「この街に住む生徒達にも何らかの弊害が出る恐れあり」という結論が出されたのです これは抗議行動にも発展する恐れがあり、統括理事会も擁護しきれない部分があるらしいのですよ そのため上条ちゃんをひとまず匿う形で、学園都市外の高校に転入させることで手を打ったらしいのです』 「ふざけやがって……」 全くもって不幸な出来事である。 上条は記憶を失うよりもずっと昔、学園都市の外に住んでいたことがある。 そこでは上条を不幸を招く『疫病神』として扱っていた。 仕舞いには包丁で刺されたり、テレビに出されそうになったりもしたそうだ。 だから“オカルトを信じない科学の町”である学園都市に来たのに、結局上の奴等の都合でたらい回しにされるのだ。 …しかし、上条は今回の事について強く否定しきれない立場にもあった。 保護者代表の御坂美鈴が今回出た結論に断固として反対していることはせめてもの救いであったのだが、 彼女の率先した行動を良く思わない者共が少なくないのだ。それが今回出された結論に滲み出ていた。 つまり、彼女がまた雇われスキルアウトの連中に狙われる可能性もあるのだ。 勿論上条にもこれを拒む権利はあった。 しかし、こうまで話がまとまっていて尚且つ不良高校生のレッテルを貼られている上条にしては 留年の件もなくなり、能力開発の単位の遅れを取り戻そうとする努力もしなくてよくなるのは まさに天の救いのようなものだった。 昨日の焼肉パーティーが最後の晩餐になってしまうのは切ないが、未練もなかった。 小萌先生も非常に申し訳なさげではあったが、今回の転入については悪く思っていないらしい。 ――それに、元から拒む道理のない、頼まれたら結局断れない上条にしてみれば即決だったのだろう。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― [翌日の火曜日・祝日] 上条はガンガンと響く頭を揺らしながら、学園都市を離れる上での重要事項を取りまとめるのに頭を使う。 「再来週にはこの部屋も手放すことになるんだよな…」 今日は身近なものの整理をする。そして…昨日までに出せなかった課題も終わらせる。 「立つ鳥後を濁さず、ってやつだな」 明日からはこの件がクラスの連中や友人達に漏れないよう細心の注意を払って生活する。 「特に青ピや土御門にバレないようにしなきゃな。…まあ何とかなるだろ」 来週にはインデックスをイギリスに帰す手筈を取る。一緒に付いて行くと言う可能性もあったのでこの話はまだ伝えていないが… 「難しいな…。歳が歳だけにまだ安心しきれないし…って、俺はいつからこんな世話焼きになっちまったんだ!?」 それから、それから… 「よし、こんなもんかな。…やれやれ、やっぱし深夜まで飲んだ上に普段使わない脳をフルに使うと かえってひどいな~」 ふぅっ、と重い息を吐き出し、依然続く頭痛に悶えたりして右手で頭を押さえた。 ――――― 何処かで、パキィインという音が聞こえた。 ――――― 「それにしても……後一つ……何か忘れているような………アッ!!」 よほど重大なことなのだろう。先程まで続いていた頭痛も綺麗に消えていくように表情は緩やかになった かと思うと、顔色はどんどん青ざめていった。 「御坂にまだこのこと伝えてねえじゃねえか!!」 ◆ 実は最後の決戦前夜に上条と美琴は二人の思い出の場所に立ち寄っていた。 そこで俺は美琴から告白『もどき』を受けていたのである。 齢十四歳。誰も助けを呼べない状況に忽然と現れたヒーローに一種の幻想を抱いているのだろうとそのときは思っていた。 しかし、彼女の想いは俺自身の単なる思い込みを遥かに凌駕していた。 彼女は最初に上条と会ったときは、それこそ「能力を打ち消すいけ好かない奴」如きに思っていたらしいが その場所で本当の彼を知ったことで、急速に惹かれていったらしい。 ―― 深夜の路上で不良に絡まれているところに俺が割って入ってきたこと ―― グラビトン事件において爆弾の盾になったこと 今も昔も、俺という人間が変わらずここに存ること… ―― 妹達(シスターズ)を悪夢の実験から解放したこと ―― 常磐台にいる彼女の後輩を助けたこと ―― 彼女の母親をスキルアウトから守ったこと それら全てが、良くも悪くもかけがえのない思い出で、 ―― 一晩中追いかけっこをしたこと ―― 恋人ごっこをしたこと ―― とある魔術師と大切な約束をしたこと ―― 大覇星祭の罰ゲームで携帯のペア契約をしたこと ―― そして、一緒に運命を懸けた戦いに挑むこと アイツの、一番の宝物であること… 答えなんて最初から決まっていたようなものだった。 世間体だの何だの考えていても仕方のないことだ。別に青髪ピアスのような 唯のロリコン野郎になることを気にしていたわけでもない。そんなものは時間が解決してくれるだろう。 だがその場で返事をすることはどうしてもできなかった。 インデックスや他の大勢の人々を悲しませたくなかったから? 己の不幸に巻き込んでしまうことが怖かったから? 記憶を失った己のたった一つの信念がゆらぐ恐れがあったから? …それらも当然あったのだが、本当は人に愛されることが堪らなく怖かったからである。 そして愛された分だけ、それ以上にその人を愛することができるのかが分からなかったのだ。 「それを考えるだけの時間を貰ったはずなのにすっかり忘れて告白で返しちまうなんて… どこまで馬鹿なんだ!俺は!」 自分の愚かさを嘆く暇はない。一刻も早くこの気持ちを伝えて謝らなければならない。 今日以外にアイツに会える日はあるのか分からない…もしこれで会えなかったら多分一生後悔するだろう。 そう思い、携帯の電源を入れようとしたが…電池が切れていた。 家の固定電話も、修理業者が来ない分には使えない状態に昨日からなっている。 なんと間が悪いことだろう。 「くそっ、直接行くしかねぇか!」 そう言うと上条はすぐさま着替えて軽く身支度をし、30秒後には自室を飛び出して 彼女のいる常盤台中学学生寮に走っていった。 間に合ってくれと祈りながら… ――俺に残された時間は余りにも少なすぎた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少年の告白成就